走れ俺社畜艦

『走れ俺社畜艦』(はしれおれしゃちくかん)は、@hecateballによる短編小説である。初出は2014年(平成26年)9月のTweet。処刑されるのを承知の上で、命をかけて美女と焼肉を食べに行った俺社畜艦が、人の心を信じられない営業担当者に己の無能さを悟らせる物語。
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みなみ @hecateball

「なに、何をおっしゃる。」 「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」

2014-09-12 20:23:30
みなみ @hecateball

俺社畜艦は口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなくなった。  竹馬の友、上司は、深夜、職場に召された。無能営業担当者の面前で、佳よき友と佳き友は、二時間ぶりで相逢うた。俺社畜艦は、友に一切の事情を語った。

2014-09-12 20:26:02
みなみ @hecateball

上司社畜艦は無言で首肯き、俺社畜艦をひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。上司は、縄打たれた。俺社畜艦は、すぐに定時退社した。初秋、満天の星である。

2014-09-12 20:26:12
みなみ @hecateball

俺社畜艦はその後、エレベーターに乗り、自分の職場へ到着したのは、定時を過ぎたあと、陽は既に沈んで、社畜艦たちは定時で退社していた。美女も、きょうは定時で退社していた。よろめいて歩いて来る俺社畜艦の、疲労困憊の姿を見つけて驚かなかった。そうして、うるさく俺社畜艦に質問を浴びせた。

2014-09-12 20:30:55
みなみ @hecateball

「なんでも無い。」俺社畜艦は無理に笑おうと努めた。「現地オフィスに用事を残して来た。またすぐ海外出張に行かなければならぬ。あす、焼肉を食べに行く。早いほうがよかろう。」

2014-09-12 20:32:26
みなみ @hecateball

美女は頬をあからめた。 「うれしいか。特上牛タンも予約した。さあ、これから行って、社畜艦たちに知らせて来い。焼肉は、あすだと。」 俺社畜艦は、また、よろよろと歩き出し、席に戻って出張の手続きをし、残務に手を出し、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。

2014-09-12 20:35:18
みなみ @hecateball

眼が覚めたのは夜だった。俺社畜艦は起きてすぐ、同僚の席を訪れた。そうして、少し事情があるから、この仕様は変更してくれ、と頼んだ。同僚は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、次回のリリースまで待ってくれ、と答えた。

2014-09-12 20:37:47
みなみ @hecateball

俺社畜艦は、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。同僚も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか同僚をなだめ、すかして、説き伏せた。仕様変更は、テスト開始直前に行われた。

2014-09-12 20:39:46
みなみ @hecateball

俺社畜艦の、変更になった仕様の整理が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。仕事していた社畜艦たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、暗い職場で、むんむん蒸し暑いのも怺え、コードを書き、テストした。

2014-09-12 20:43:39
みなみ @hecateball

俺社畜艦もも、満面に喜色を湛え、しばらくは、営業担当者とのあの約束をさえ忘れていた。仕様は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。

2014-09-12 20:44:51
みなみ @hecateball

俺社畜艦は、いますぐ退社したい、と思った。この佳い社畜艦と毎日定時退社したいと願ったが、いまは、納期が迫って、予算は無い。ままならぬ事である。俺社畜艦は、わが身に鞭打ち、ついにサビ残を決意した。海外への出張には、まだ十分の時が在る。

2014-09-12 20:48:51
みなみ @hecateball

ちょっと一仕事して、それからすぐに退社しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも早くこの職場をさっさとでたかった。俺社畜艦ほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。今宵呆然、歓喜に酔っているらしい美女に近寄り、

2014-09-12 20:51:51
みなみ @hecateball

「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって帰りたい。眼が覚めたら、すぐに海外出張に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには美味い肉があるのだから、決して寂しい事は無い。

2014-09-12 20:53:11
みなみ @hecateball

俺社畜艦の、一ばんきらいなものは、仕様を疑う事と、それから、仕様を変えるだ。おまえも、それは、知っているね。営業担当者との間に、どんな譲歩でも見せてはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。俺社畜艦は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」

2014-09-12 20:55:25
みなみ @hecateball

美女は、夢見心地で首肯いた。俺社畜艦は、それから美女の肩をたたいて、 「担当者が無能なのはお互さまさ。焼肉屋にも、希望といっては、特上牛タンだけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、俺社畜艦と焼肉したことを誇ってくれ。」

2014-09-12 21:00:32

以下、鋭意執筆中