レズの落とし子

あぶぶさんによる、クトゥルフの呼び声と言う感じの、ニャルラトホテプ的な異形と提督の短編。 短いながら、ビジュアル化したら相当のインパクトがありそうです。
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あぶぶ @abubu_nounanka

雷が沈んでから目に見えて消沈していた提督がふらりと居なくなるも嵐の晩にけたたましく鎮守府の戸を叩く音がするので当直の艦むすが駆けつけると「雷が帰ってきた!雷が帰ってきた!!」とずぶぬれの提督が凄まじい臭気を発し脈動する辛うじて人の形をしたヘドロのような奇怪な塊を抱えていたという…

2014-09-21 22:15:49
あぶぶ @abubu_nounanka

提督をなだめようとする艦むすだが、雷を入渠させると半狂乱になる提督に押し切られ、塊の発する臭気に嫌悪感を覚えつつドックへ向かう。しかし入渠ドックへ入るなり、提督に抱えられた人型の塊を視認したドック妖精さん達は、絶叫に近い悲鳴を上げて散り散りになってドックから逃げ出したのだ…

2014-09-21 22:26:05
あぶぶ @abubu_nounanka

提督が雷と称する異形の塊を入渠ドックに沈めるなり水がドス黒く染まっていく。提督は口角を釣り上げギラついた眼でその様子を眺めながら「雷が帰ってきた…雷が帰ってきたぞ…」と無機質に繰り返している。塊に触れていた部分の提督の皮膚は強い酸にでも晒されたかのように醜く焼けただれていた。

2014-09-21 22:37:52
あぶぶ @abubu_nounanka

言い知れぬ不安を感じた艦むす。ふと振り返るとドックの隅に逃げ遅れたらしき二人の妖精さんが居た。二人は素手で殺しあっていた。

2014-09-21 22:45:00
あぶぶ @abubu_nounanka

なにかとんでもない事態が起こっていると確信した艦むす。しかしどうすれば、誰か呼んでこなければ、長門さんはまだ起きているだろうか。駆け足でドックを出た艦むすだが、すぐに背後から提督の絶叫が響き足を止めた。「やめろ!やめろ!お前たちなにをするんだ!やめてくれ!!」

2014-09-21 22:47:43
あぶぶ @abubu_nounanka

艦むすの目に飛び込んできたのは無数の、恐らくこの鎮守府に居る全ての妖精さんが、建設用の工具から食堂のフォークまで、妖精さんに扱えるであろう武器という武器を携えドックへなだれ込み、入渠している異形の塊を殺そうとしている光景だった。提督は黒い水の中に入り妖精さんを振り払おうとするが、

2014-09-21 22:50:34
あぶぶ @abubu_nounanka

妖精さんは容赦無く塊に凶器を突き立て、塊は苦しそうに身悶えする。黒い水に触れた妖精さんの肉体は油が沸き立つような音を立てながら徐々に形を失っていく。しかし手が溶け落ちて武器を持てなくなった妖精さんも、残った歯で塊に喰らいつき、黒い水の中で消えてなくなるまで攻撃を止めなかった。

2014-09-21 22:56:29
あぶぶ @abubu_nounanka

必死に異形の塊を守る提督。あちこちに刃物を生やし悲鳴のような甲高い怪音を上げる塊。仲間が次々と溶けて行くのも構わず、それを上回る勢いで塊に殺到する妖精さん達。誰か呼びにいかなければと自分に言い聞かせながらも、凡そこの世のものとは思えぬ光景を前に、艦むすの脚はすくんで動かなかった。

2014-09-21 23:02:12
あぶぶ @abubu_nounanka

一体どれほどの時間が経っただろうか。提督は力なく水をかき混ぜながら「やめろ…やめろ…」と繰り返しているが、妖精さんはドックの周りで整然とその様子を見下ろしていた。やがて塊が黒い水の中で完全に息絶えたことを確認すると、妖精さん達は負傷した仲間を回収し、いずこへともなく去って行った。

2014-09-21 23:09:36
あぶぶ @abubu_nounanka

ようやく我に返った艦むすはまず提督の元へ駆け寄った。黒い水に触れた瞬間皮膚に鈍いしびれを感じたが、構わず提督をドックから引き上げる。提督は半ば失神した様子で「雷が…」と呟く。溶けていった妖精さん程でないにしろ、水に浸かっていた部分の服はボロボロになりそこから覗く皮膚も爛れていた。

2014-09-21 23:17:54
あぶぶ @abubu_nounanka

すぐに提督を病院に運ばなくては…しかし…。艦むすはズタズタのままドックに浮かびピクリとも動かない塊に目をやる。手は自ずと排水バルブに伸びた。提督を病院に運ぶ間アレを放置して良いのか?と言うかアレは一体何なのか?難しいことは分からないが、軍で調べたりしなければならないのではないか?

2014-09-21 23:22:27
あぶぶ @abubu_nounanka

それは目の錯覚であったかもしれない。しかし艦むすの目には黒い水の中で異形の塊が一瞬脈動したように見えたのだった。その認識は、力を込めて掴んでいたバルブを動かしてしまうには十分だった。水流が唸りを上げ、ドック内の"汚水"が流されていく。塊は細切れになりながら黒い水と共に、

2014-09-21 23:26:56
あぶぶ @abubu_nounanka

巨大な鉄の排水溝に消えていった。いつまでも空のドックを見つめている訳にもいかず、艦むすは提督を担ぎ上げた。残された汚れも新しい水が満ちれば見えなくなってしまうだろう。でもあの鼻を突く異臭だけはまだ残っている。それはきっと提督と自分に染み付いたものなのだ 「レズの落とし子」おわり

2014-09-21 23:33:47
あぶぶ @abubu_nounanka

レズの落とし子とは一体…。北上さんとの子供を作ろうとした大井っちが、轟沈した雷の艦魂的なものをコッソリ回収して、妖精さんが忌避する外法を使って何かしたんだけど上手く行かず廃棄したら、提督と雷との精神的な繋がりが成りそこないの塊を引き寄せてしまったのかもしれませんね。

2014-09-21 23:45:03
あぶぶ @abubu_nounanka

塊「プカプカ」 ヲ級「なんだヲあれ、何か流れてきたヲ…」 ヲ級「…(ヒョイパク」 ヲ級「ヲヲ!?美味っ!なんだヲこれ!めっちゃ美味いヲ!レっちゃんも食ってみるヲ!」

2014-09-21 23:48:12