趣味創作まとめ1

ツイッター作品その1「幻想図書館」
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星海黒乃 @necomeitei

【51】黒い霧が晴れる頃には、いつの間にか兵士も消え、戦場から暖炉の部屋に戻されていた。「合格よ…いえ、それ以上の…」マリアはぼそぼそと何かを呟き、流雅の手を取る。「見せたいものと、お願いしたいことがあるの」流雅は先程の現象が気になって仕方ないが、今は素直に従うことにした。

2014-09-09 12:36:24
星海黒乃 @necomeitei

【52】小さな手に引かれて第二書庫を歩く。壁際のとある本棚の前に止まると、並んでいる本をずらして腕を突っ込んだ。カチン、と音がすると腕を抜き、そのまま本棚を押し込みスライドさせた。これだけ本や本棚があれば、これくらいのカラクリがあっても不思議ではないと、妙に納得していた。

2014-09-16 12:28:32
星海黒乃 @necomeitei

【53】狭い通路を抜けて一室に辿り着く。別のところにちゃんとした扉があったので、今通ってきた通路は隠し通路だったようだ。改めて室内を見渡すと、本棚は当然のこと、一際目を惹いたのは巨大な鉄扉と、鉄扉に貼り付けられている五冊の本だった。

2014-09-17 12:38:31
星海黒乃 @necomeitei

【54】「やれやれ…久しぶりの来訪者かのぉ」頭上から声が聞こえてくる。見ると本棚の上で寝そべっているおじいさんがいた。「彼は鳳流雅。兵士の本から封印を解いたわ」マリアがそう言うと、おじいさんはゆっくりながらも身体を起こして流雅を見た。「鳳か、ふむ…」

2014-09-19 12:35:29
星海黒乃 @necomeitei

【55】「どれ、少し試してやろう。この先のためにも、今その子が創っている本を二人で完成させよ」「今回は早いのね。もっと文句言うかと思ったわ」どうやらこの二人は知り合いらしい。マリア以外にも図書館には人が居るようだった。

2014-09-20 12:37:37
星海黒乃 @necomeitei

【56】「でもやるのは明日から。さすがに疲れちゃうわ」「いつでも構わんよ。死んでなければいつでも出来る」はっはっは、と笑うが先程からマリアは一切笑っていない。「行きましょ」マリアに手を引かれて、来たときとは違うちゃんとした入り口から部屋を後にした。

2014-09-22 12:34:43
星海黒乃 @necomeitei

【57】結構な距離を無言で歩くこと数分。見覚えのある調理場にやってきた。「はい、どうぞ」コトン、と出されたのは先程飲んだスープ。時計や外の景色をあまり見てないので時間がわからないが、小腹が空いてきたところなので丁度良かった。マリアも自分の分を用意して向かい合う。

2014-09-23 02:11:30
星海黒乃 @necomeitei

【58】「見せたいものっていうのはさっきのこと」鉄扉の五冊の本。おじいさんもいたけどそれも含めてだろうか。万年筆ではないペンを取り出しメモ帳に文字を書いて訊ねる。[他にも人がいたんだね]「いいえ、アレは違う…」表情は見えないがどこか寂しそうな声音。

2014-09-23 02:18:37
星海黒乃 @necomeitei

【59】「何て言ったらいいのかわからないけど…本のオバケって解釈でいいわ」普通なら驚くところだろうが、流雅はすでに自分で本の中身を具現化させてしまったので妙に納得してしまっていた。[もしかしてあの五冊のどれかから?]「…変なところで勘がいいのね」

2014-09-23 02:22:05
星海黒乃 @necomeitei

【60】ちゅるる、とマリアがスープを一口。大人びた口調に反して見た目にあった可愛らしい飲み方に、少しだけ頬が緩んでしまったのが自分でわかった。「オバケって言ったけど、正真正銘本に憑りついている幽霊よ。ここで亡くなったのか、外で死んで本と共に流れ着いてきたのかわからないけど」

2014-09-23 02:25:45
星海黒乃 @necomeitei

【61】「お願いしたいことは…できれば諦めて欲しいの」予想外のことに驚いた。「あのおじいさんの試練は二つ。一つはおじいさんの本を完結させること。もう一つは私と何か一冊完結させること」おじいさんも言っていたことの一つである。兵士の時と同じようにやればいいのではないのだろうか。

2014-09-24 12:25:47
星海黒乃 @necomeitei

【62】「私は文字を書けないから…そうね、トリップっていうのかしら。その本の人物に入り込むの」聞いているだけだと楽しそうだ。しかしその考えはすぐに否定された。マリアは自分の身体、服を見せるように握り締める。「物語はいつもハッピーエンドとは限らない」

2014-09-25 12:28:20
星海黒乃 @necomeitei

【63】「本の中と現実の体は繋がっている。傷付けられれば傷付き、死ねば当然…ね」赤黒い斑は全て…と理解した。その華奢な体にはどれほどの傷が残っているのだろうか。[マリアは死んだことがあるの?]我ながら酷い質問だとは思った。それでも好奇心を抑えることは出来なかった。

2014-09-26 12:27:15
星海黒乃 @necomeitei

【63】「本の中と現実の体は繋がっている。傷付けられれば傷付き、死ねば当然…ね」赤黒い斑は全て…と理解した。その華奢な体にはどれほどの傷が残っているのだろうか。[マリアは死んだことがあるの?]我ながら酷い質問だとは思った。それでも好奇心を抑えることは出来なかった。

2014-09-26 12:27:15
星海黒乃 @necomeitei

【64】スプーンを口に着けたまま停止するマリア。さすがに踏み込みすぎただろうか。「…私は死なない」絞り出すような声。「死ぬようなことになった場合数日眠りにつくだけ。理由はまだ言えない」今度はこちらが停止していた。「死ぬ体験も、試練を受けた人が死ぬのも何度も見てきたわ」

2014-09-27 12:39:15
星海黒乃 @necomeitei

【64】スプーンを口に着けたまま停止するマリア。さすがに踏み込みすぎただろうか。「…私は死なない」絞り出すような声。「死ぬようなことになった場合数日眠りにつくだけ。理由はまだ言えない」今度はこちらが停止していた。「死ぬ体験も、試練を受けた人が死ぬのも何度も見てきたわ」

2014-09-27 12:39:15
星海黒乃 @necomeitei

【65】マリアは言い切ると立ち上がる。「…そろそろ寝る。あなたは暖炉の部屋で休んで。どの本もまだ読んじゃダメよ」そのままスタスタと調理場を後にする。残された流雅は考えた。本を読むなとは言われたが散策はするなとは言われてはいない。

2014-09-30 12:27:55
星海黒乃 @necomeitei

【65】マリアは言い切ると立ち上がる。「…そろそろ寝る。あなたは暖炉の部屋で休んで。どの本もまだ読んじゃダメよ」そのままスタスタと調理場を後にする。残された流雅は考えた。本を読むなとは言われたが散策はするなとは言われてはいない。

2014-09-30 12:27:55
星海黒乃 @necomeitei

【66】子供じみた理屈だが少しでもこの図書館のことを知っておきたかった。流雅は置きっぱなしだったマリアの皿と自分のを流しにやると、マリアが通ってない扉からでていった

2014-09-30 12:35:36
星海黒乃 @necomeitei

【66】子供じみた理屈だが少しでもこの図書館のことを知っておきたかった。流雅は置きっぱなしだったマリアの皿と自分のを流しにやると、マリアが通ってない扉からでていった

2014-09-30 12:35:36