同居する森と月と反撃の伊月

伊「いつまでも森山さんだけが森山さんのことを考えてるって思わないでください」
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同居する森と月bot @doukyomi5

しばらく日向のことや森山さんのこと、キセキの世代や大学のことで盛り上がった。申し訳なくて何回か固辞したのだが、「コーヒーゼリーと飲み物代くらいどってことねえよ」という笠松さんに結局は甘え、この店の支払いを任せてしまった。 「今日はありがとうございました」 「……おお。そーか」

2014-08-28 21:40:34
同居する森と月bot @doukyomi5

暗くなった路上で笠松さんに頭を下げる。笠松さんは一瞬、拍子抜けしたような顔をした。 「?」 「いや、森山の話だけか、と思ってな」 「え?」 「オレがお前を、同じポジションの選手として意識してるからだろうな。―今日はそういう話でもしに来たのかと思って、身構えてたんだが」

2014-08-28 21:50:31
同居する森と月bot @doukyomi5

「わ!……ええと、いえ、すみません。笠松さんはオレにとっては憧れの選手でっ…!もちろん、尊敬してます!」 「いーよいーよ。つまんねーこと言ったな」 笠松さんはニカっと笑った。これから寮まで帰るらしい。 「じゃーな。あいつによろしく言っといてくれ」 「はい。またメールで」

2014-08-28 22:05:30

伊「森山さんを訪ねて三千里。小堀さんの元へ行く編」

同居する森と月bot @doukyomi5

伊「今からイベントパートが始まるので、連投がうるさいようだったらミュートしててください。うるさいって言われてうるうるするサイ!はいキタコレ!」 森「近年まれに見るレベルでひどいダジャレだな…(真顔)」

2014-08-31 18:50:32
同居する森と月bot @doukyomi5

伊月俊です。オレ、何やってるんだろう。 「小堀さん、は神奈川なんですね……」 「東京だと実家から通うにはちょっと遠いからね」 笠松さんに訊いただけでは飽きたらず、オレは小堀さんを訪ねて神奈川まで来てしまった。森山さんに何の相談もせずに。ホントなにやってるんだろう。

2014-08-31 19:01:17
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まあ、最近の森山さんは相談できる雰囲気じゃないんだけど。 「森山の話が聴きたいんだって?」 「すみません。図々しいってわかってるんですが」 なにをどう切り出そう。 笠松さんとはメールでやり取りもしているが、小堀さんとは森山さんを介して何度か会ったことがあるだけだ。

2014-08-31 19:10:32
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神奈川、森山さんが育った街に今オレはいる。 「単なる疑問なんですが、海常では小堀さんが副主将でしたよね」 「森山の方が副主将っぽいって?」 「いえ、…でも今うちの大学で森山さんは立派な主将です。できないわけじゃないし、そういう資質がないわけでもない。理由があったのか…」

2014-08-31 19:20:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「本人に訊けばいいじゃないか」 「うっ、いや、その通りなんですが」 「ハハ、冗談だよ。伊月は真面目だな。―――まあ、オレの主観でしかないけど、森山はそういうのについたら頑張りすぎちゃう自分をわかってたんだと思うよ。部員の多い海常をまとめて、主将の笠松をサポートして」

2014-08-31 19:30:47
同居する森と月bot @doukyomi5

「それで部の運営を陰で支えて、って。身体は一つしかないから、副主将を全力でやってたら、プレーヤーとしての自分がおろそかになる。もちろん、世の主将副主将はそれを踏まえてやってるわけで、そういうのをやらないってのはやっぱり、つまり適性がないってことなんだろうなって思うんだけど」

2014-08-31 19:40:29
同居する森と月bot @doukyomi5

「…わかる気がします」 今のチームで主将をやっているけど、森山さん、おちゃらけてるように見えてチームの雰囲気にはものすごく敏感だ。オレに同居を持ちかけたのもオレが調子を崩してたからだろう。そういう風に、部のために私生活をも犠牲にしてしまう。そういう所が森山さんにはある。今も。

2014-08-31 19:50:28
同居する森と月bot @doukyomi5

小堀さんの雰囲気に甘えて、オレはもう一つ訊ねてみた。 「小堀さんは、二人と同じ大学を選ばなかったことに意味はありますか?」 「オレは実家から通える距離で探してたからね。東京に行く選択肢がなかったのと、海常のバスケは黄瀬もいないとダメだって、みんなわかってたからじゃないかな」

2014-08-31 20:01:21
同居する森と月bot @doukyomi5

「三人同じ大学に進んだとして、エースのいるチームが、黄瀬がいた海常が一番、オレらにとっては海常なんだよ」 黄瀬はプレイスタイルの特殊さからどうしても故障が多くなる。 卒業する時にモデルの仕事に力を入れることにしたらしい。『悔いはないです。オレのバスケ生活、海常で最高でした』

2014-08-31 20:10:29
同居する森と月bot @doukyomi5

そう、笑顔で言っていた黄瀬をどこかで見た。 後輩がそういう風に言うのは、先輩としては胸をかきむしりたくなるような気持ちになるんじゃないだろうか。 「でも、バスケは海常でやったバスケだけじゃない。オレも、笠松も、森山も、自分がやりたいことを追い求めていったら偶然道が違ったんだ」

2014-08-31 20:20:29
同居する森と月bot @doukyomi5

小堀さんは眼差しを外にむける。 オレにも覚えがある。木吉が怪我でバスケを離れて、誠凛のバスケは今までとまったく違うものになった。木吉以外は同じメンバーだからこそ、皮膚で感じるあの違和感。黄瀬がいなくては『海常』のバスケではない、ということは、きっとそういう気持ちなんだろう。

2014-08-31 20:30:37
同居する森と月bot @doukyomi5

小堀さんの好意で、今日の待ち合わせは海常近くの喫茶店だ。レギュラー皆で何度か来たことがあるらしい。そういう思い出の一部分に部外者のオレを招き入れてくれる。小堀さんは優しい人だと思う。 「にしても、伊月は森山のことにずいぶん関心があるんだな。元チームメイトとしては嬉しいよ」

2014-08-31 20:40:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「はい。オレ森山さんが好きなんです」 「……はっ?」  言い切ったオレに、小堀さんが驚いたように身を引く。 「あ、――ああいいえ!いや、別にそういう意味じゃなくって」 「いや、わかるよ。変な意味じゃなくてってことだろ」 思いがけず口から出た言葉だった。自分でも驚く。

2014-08-31 20:50:29
同居する森と月bot @doukyomi5

と同時に、理解した。 ああ、そうか。どう考えてもでしゃばりすぎなのにわざわざこんな所まで話を聴きに来たのは――――。 森山さんが好きだからだ。 ひたむきな努力家で、いつも他人のことばかり気にかけてて、ちょっとお調子者で、女の子が大好きで、明るくて優しい、あの人が。 

2014-08-31 21:01:43
同居する森と月bot @doukyomi5

理解したいと思う。できれば傍にいて支えたいと思う。すごく、強い気持ちで。 森山さんが話さないことなら、こちらからあえて尋ねることもないのかなって思ってた。 けど、やっぱり森山さんにも訊ねてみよう。

2014-08-31 21:10:34
同居する森と月bot @doukyomi5

森山さんの部屋のいっとう良い位置の写真立てに飾られてる、海常のレギュラーメンバーの写真。 森山さんが三年間を過ごしたところ。 なにを考えてボールを追ってたんだろう。

2014-08-31 21:20:31