#教会主従

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小早川 @dodoitsu_

今夜は @yaduki_44 さんの創作キャラクターの二次創作を流してみたいと思います。初の試み。TLお騒がせします。

2014-10-06 23:28:18
小早川 @dodoitsu_

#教会主従『私とワルツを』 ちょっとした暇潰しのつもりだった。じめじめと暗い本棚の奥、埃をかぶった一冊の本。 「ここでしたか、マスター」 静かな声に振り返って、エールハルトはうん、と頷いた。 「こんな本があったから。なんのためだ?」 手にしたそれを掲げて見せ、軽く首をかしげる。

2014-10-06 23:31:04
小早川 @dodoitsu_

表紙には『舞踏会諸事指南』の文字が踊っていた。 「教会にこんなものが必要か?」 「むしろ、教会には全てのものが必要なのですよ」 従者である彼女の口元がほころぶ。そのまま書棚に背を向けるクレメンティアをゆっくりと追い、彼は礼拝堂の横をすり抜けた。職場に戻る。 #教会主従

2014-10-06 23:33:27
小早川 @dodoitsu_

彼らの職場。ステンドグラスの美しい大聖堂。 「ワルツならここも悪くないな」 「踊れるんですか?」 「いや」 教えろ、と手を差し伸べた。彼女はごく自然にその手を取る。ステンドグラスの正面、法衣のままポジションを取る二人。 「左、右、足を揃えて、前、まわって、そうです」 #教会主従

2014-10-06 23:36:13
小早川 @dodoitsu_

エールハルトはすぐにコツをつかんだようだった。 「筋がいいですね、マスター」 「剣術の体技とあまり変わらないな」 無粋な例えを挙げて金色の髪を揺らし、身体を離して眼鏡の奥の目を細めた。 #教会主従

2014-10-06 23:38:44
小早川 @dodoitsu_

それから二人は戯れに踊るようになったが、それは所詮お遊びだった。礼拝もミサもない、懺悔に訪れる教徒もいない。そんな夜だけの。 そう、遊びのはずだったのだ。だが。 「舞踏会?」 「ああ。最近金持ち相手の盗賊が紛れ込んでるらしくてな。これがどうにも尻尾がつかめねえ」 #教会主従

2014-10-06 23:40:34
小早川 @dodoitsu_

依頼を持ち込んだのは馴染みの保安官だった。 「追っても忽然と消えちまう。しかも決まって月夜の晩だ。ここまで来るとあんたたちに頼んだ方が早いと思ってな」 肩をすくめて苦々しく笑う。 「神父さんたちにそんな俗っぽいところに潜り込めと言うのは心苦しいんだが」 #教会主従

2014-10-06 23:43:42
小早川 @dodoitsu_

他にいなくてな、と呟いた。ちらりと視線を送られた当の本人はその言葉に大した反応もない。すらりとした長身の体躯、金色の髪、紛れ込んで違和感のない、という意味。 「もちろん報酬は出す。人助けだと思ってくれ。どうだ?」 「…わかりました。お受けしましょう」 #教会主従

2014-10-06 23:46:13
小早川 @dodoitsu_

そうして二人は、その次の月の晩の舞踏会に乗り込んだ。 いつもの法衣ではない、黒のタキシードと深緑のドレスに身を包んで。 「暇潰しのつもりだったんだけどな」 「主は時々悪戯をなさいます」 クレメンティアは笑って、ドレスの裾を少し持ち上げた。 #教会主従

2014-10-06 23:47:09
小早川 @dodoitsu_

で、その二人ってのがこちらです。許可いただいたのでご本人のイラストを載せときます。 pic.twitter.com/YDtpmx4esg

2014-10-06 23:48:28
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