大道芸人の生活

altana @altana

大道芸人はすむ家もなく貰ったギャラで手近なネットカフェに泊まる。隣のブースを覗きこんで女に滅茶苦茶に怒鳴られる。追い出され野宿をしながらホームレス相手にジャグリングを披露して酒を分けてもらう。寒くなってきたから明日は南の方へ行こう。 #twnovel

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大道芸人は移動中基本徒歩である。商売道具を担ぎぶらぶら朝昼を歩いて、人の多そうな所を見つけるとその場で始めてしまう。当然無許可なため怖いおじさんがやって来る前に止めないといけないし、その間に客を満足させシルクハットを金で一杯にしなければならないので一苦労である。 #twnovel

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大道芸人に親しい友人はいない。会う人は皆通りすがりである。その通りすがりを楽しませるには何をしてやればいいのかということばかりを考えている。相手を深く知る必要はない。今欠けているものを探してやれば良い。ただ自分の欠けた部分が見つからないのは医者の不療法である。 #twnovel

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大道芸人は赤い風船をぷぅっと膨らませるとそれをあちこち結びつけて輪を作ってやる。あんまり早業なのでぽかんと見ている少女の頭に、風船をずぼりと被せて｢寒いからマフラー編んであげたよ｣などと言ってげらげら笑っている。少女の顔は火が出たように熱くなってくる。 #twnovel

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大道芸人は河原でのパーティーに誘われて芸を披露する。こんな日は観客がめいめい勝手に盛り上がってしまうので時々自分が馬鹿みたいに思える。結局自分は他人が欠落しているのを見物して、おだてあげたあげく上手いこと金を巻き上げているだけなんだなと思いながら焼肉を頬張る。 #twnovel

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大道芸人は一輪車に乗っている。観客達が熱心に見学する中ジャグリングされたピンが何本も空中に飛んでいる。一輪車が跳び跳ねるごとに子供も合わせて跳び跳ね始める。次第に興奮していき辺りは床が踏み鳴らされる音が響く。両親達にも止められない。ピンはいまだ宙に浮いたままだ。 #twnovel

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大道芸人はそのまま河原から飛び出した。子供達も跳び跳ねながらついていく。大人達はぽかんとしながら見送っている。電車の切符を一万円分購入して子供達に配る。僕はハーメルンの笛吹きじゃないから洞窟には連れていけないけれど、それでもあるべき報酬は受け取らなければならない #twnovel