ヨコスカ・アサイラムVSラブホテル鎮守府 ~チキチキ ポロリもあるよ! ドキドキ合同演習 in なんばパークス~ Part3
医務室で高速修復剤を貰い、折れた肋骨を戻す。明石も来ているので開胸手術ができないこともないのだが、奴には今別のことをやってもらっている。皮膚の下を掻き毟りたくなるのを堪えながら、地下闘技場のさらに下へ向かう。次の試合まではインターバルがあるので、今のうちに。 #加賀さん観察日記
2014-10-09 07:27:48最下層、物々しく紋様の刻まれた岩の扉が独りでに開くのを待ってから、再び階段を降りていく。通路は狭く、手を広げれば壁に触れられるほどだ。実際に行うと、紋様がびっしりと刻まれているので指先がなぞった部分が蛍光の青を発する。文字だろうか。古書で見たものに似ている。 #加賀さん観察日記
2014-10-09 07:32:18十分程進んでいくと開けた箇所に出る。多段に置かれた蝋燭が橙に部屋を染め、奥に湛えられた泉の前には明石が腕組みをして立っている。様子は、と声をかけると薄紅梅の頭が振り向いた。 「間に合うかは本人次第、ですね」 背に負うクレーンは泉の縁に置かれ、自動で動いている。 #加賀さん観察日記
2014-10-09 07:37:29二つのクレーンには大きな筒が両脇に取り付けられ、薬品を絶え間無く混ぜ込み続けている。薄青の泉に翡翠の緑が溶け出す先には、大きな龍の像とその足元に頭を乗せ、突っ伏す加賀がいた。髪は一房の白を覗いて栗色を取り戻し、水色が映り込む肌も血が通っている。 #加賀さん観察日記
2014-10-09 07:42:24「本当なら数週間かけて毒を抜いてやらんといかんを、修復剤の原液で無理矢理細胞も神経も、身体には大分負担がかかってますし、寿命もぐんと縮まることでしょうね。いつ酷い副作用に襲われるとも限らない」 全くもって馬鹿な選択肢です、と明石は続ける。 #加賀さん観察日記
2014-10-09 07:54:27「あなた達提督がそう望むから、彼女達艦娘は命を燃やしてまで戦うのかもしれない。ですが、常にその輝かしい忠誠心が最良の選択をするとは限りません。止められるのは、物を使う人間だけです」 俯く明石に、返事が返せない。 「試合は私も付き合います」 頷くしか、できない。 #加賀さん観察日記
2014-10-09 07:59:28──気配を消す事は容易である。 後は呼吸をどうにかすれば完全なる擬態など朝飯前。だがそれを自慢気にするなど有り得ない。手の内──ましてや切り札なら尚更だ──を明かす程浮かれてもいないし驕りもない。一切の私情なく、与えられた任務を遂行する。 #変態不知火さん
2014-10-09 08:12:45任務を与えた者ですら、彼女の切り札を知りはしない。だが知る必要もないだろう。彼は彼女を信頼しているし、彼女も司令官として認めているからだ。 気配を殺し、存在感を殺し、彼女は目の前の状況を“観察”する。報告の余地あり。彼女はそのまま移動を始める。 #変態不知火さん
2014-10-09 08:18:40恐らくはここが本来の“なんばパークス”と呼ばれた聖地だろう。数十年前、名だたる哲学者が己の信念をぶつけ合った、文字通りの聖域。何故彼女らがそれを知っているかは不明だが調べる必要もない。下準備を早めるか、もしくは繰り上げが必要であろう。──彼ならそう判断する。 #変態不知火さん
2014-10-09 08:22:25脱出路なら先程見つけた。成人男性なら余裕で通り抜けられるような横穴だ。自然の産物とは考えづらい。ならば哲学者の誰かが……? 聖域を覗き見られるような横穴から彼女は擬態したまま下がる。 完全に離脱するまで呼吸を止めていた彼女は新鮮な空気を肺に取り入れる。 #変態不知火さん
2014-10-09 08:27:54その瞬間、彼女の擬態は元に戻る。岩と全く同じ色に染まっていた肌が戻り、髪も銀色になる。後は報告と下準備を早急に。 また彼女は呼吸を止めて擬態する。 ──彼女、浜風の切り札とも呼べるそれは自然界の擬態の天才、蛸と同じ能力。素肌は触れた場所と同じ色に擬態するのだ。 #変態不知火さん
2014-10-09 08:32:51来た道を再び戻る。なんばパークスの地下、聖なる泉。エル・アル・タブール…いやラ・ビ・アンローズ…とりあえずバットマンに出てきそうな名前の泉で、加賀は毒抜きを行われている。あの謎の女にも怪我の治療で遅れる旨は伝えたから、加賀の容態を怪しまれることはないだろう。 #加賀さん観察日記
2014-10-09 14:53:22