ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/11/27
#twnovel おやすみの前に。こんばんは、アナウンサーの星孝夫です。時々通る道の塀の上に、いつもちょんと座っている猫がいます。尻尾を振ってくれるので、私も小さく手を振ります。職場でその話をしたら猫好きに「猫は理由なしに気分で尻尾を振るんだよ」と言われ、私、ちょっと泣きました。
2010-11-27 00:07:51#twnovel 男が旅を続けているのは世の中からカレーライスが消えたからだ。そのせいで母国のインドでは内乱が今も続いている。自分が向かう日本という国にはまだ、それがあるという。元カレー屋の自分が求めるのはカレー粉だ。カレーうどんとは一体・・・。男の胸に不安と希望が入り混じる。
2010-11-27 00:15:06旧いビルの中を進む。一番奥のドアには窓と格子があり、まるで牢獄のよう。私はそのドアを開ける。中には絵や彫像が飾られている。先に来ていた女の子が、ちょうど絵の中に戻ろうとしているところだった。私は部屋を横切りながら服を脱ぎ捨てて、隅にぽつんと置かれた首輪をつける。 #twnovel
2010-11-27 00:37:19お父さんの誕生日に訪れたライブで出会った彼は硬そうな黒髪のシャープな顎に黒眼鏡のチェリスト。若い頃のお父さんに似た彼は華奢な身体に似つかわしくないほど全身で表情豊かな音を響かせた。私はお父さんが大好きだったし生きてたら63歳。ハッピーバースデイ。忘れないよ #twnovel
2010-11-27 00:55:27後輩が美術室に来ると珍しい人が居た。「剣道部部長」「やあ」「俺が呼んだ」美術部部長が剣道部部長をモデルに絵を描くらしい。「自分から行かなかったんですか?」絵のためならば何処でも行く彼だと後輩は思っていたが「道場は寒いし」「……なるほど」剣道部部長も頷いていた。 #twnovel
2010-11-27 01:21:27昨日、生徒会で卒業式に歌いたい曲を募った。案の定白紙が大半、中には破いたものまであった。徹夜で作り朝早く登校して印刷したものが、こうなって返される。待つ間、小さく折り畳まれた用紙を開いていく。その一枚に、欄一杯の意見と励ましの一言。誰かわからないけど、ありがとう #twnovel
2010-11-27 01:47:36背中を泡のついたタオルでなでているだけだが、今の娘の力じゃこれが精一杯。けれど力が強くなる頃にはもう一緒にお風呂には入れない。少し寂しく感じてしまい顔が曇った私を娘が心配そうに覗き込んだ。いかんいかん、こんなことじゃ結婚式ではバスタオルが必要になってしまう。 #twnovel
2010-11-27 02:20:23システムは正常に作動しています。明日は晴れです。空気は澱まない程度に風で循環。気温は例年並を維持。紅葉は引き続きアーカイブを参照。夜間の空は美しい月夜とし、適度な雲を自動生成。本艦“地球七号”は光速の2436%を維持したまま、次の目的地まで航宙を続けます。 #twnovel
2010-11-27 02:41:21体中から茸が生えてくる奇病に悩まされていた。いくつ病院を回っても原因は分からなかったし、どの薬を試してみても効果はまるで見られなかった。悩んだ末、外科手術に頼ることにした。12時間に及ぶ手術は無事成功したように見えた。だが麻酔から覚めると僕は女の子になっていた。 #twnovel
2010-11-27 03:20:38#twnovel 別に独身主義という訳ではないが、縁がなくてずっと一人暮らし。53になっちまったよ。このままずっと独身のつもりでいたが、テレビなんかで孤独死なんてのを聞くと結婚してもいいかなあと思い出した。そこで知り合いの世話好きおばさんに話をしたら、丁度手頃なのがあるそうだ。
2010-11-27 04:20:07#twnovel 会社に自分しかいない残業中に入ったトイレの個室に紙がなかった。運良く便器から神様が現れて願いを聞いてくれたが、何を勘違いしたのかもう一人神を生み出しやがった。おかげで二人の神による世界を巻き込んだ最終戦争が始まったが、紙がないので僕はまだトイレから出られない。
2010-11-27 07:46:28夕暮れ川辺を二人で歩いた。寒く晴れた日で頭上にはオリオンが光っていた。その時あの人は私を呼び捨てで呼んだ。少しはにかんだ顔で。そして右手を私の方に伸ばしたけど、私は驚いて、少しはずかしくて俯くだけだった。あの時、手を繋ぐ勇気があったら未来は変わっていたのだろうか #twnovel
2010-11-27 10:39:26#twnovel いつもの角を曲がればいつもの…あれ??いつもの店がない!!昨日まではあったのになんで?? 「地球から連れて来た生物のうち、人間だけが迷路実験で躓くね。」「人間は他の動物よりも生存本能が乏しく、餌が無ければ他を探すではなく、何故無いのかを考えてしまうようです。」
2010-11-27 11:28:16#twnovel 友人のタイでの話。予約していたホテル名を告げタクシーに乗り込んだ。ホテルに着き、名を告げると部屋のキーを渡された。部屋に入ると、一人の日本人がベッドに横たわっていた。同姓同名の人物だったという。因みに友人の予約したホテルは似た名前の違うホテルだった。実話である。
2010-11-27 12:05:54#twnovel 人間国宝に選定される見込が高まった。私は身の回りを片付け、ひとり家を出る。逃げるのだ。人間国宝となったらその技能の保存のため不老不死の処置が施される。それを喜ぶ者も多いのだろう。私は違う。私は何も生み出せなくなるだろう。私は私の作品を愛している。私は逃げる。
2010-11-27 12:26:14#twnovel ドラッグストアで男性用心洗剤を買って、最近荒れてる彼を洗濯機で洗った。びしょびしょで出てきた彼は最近見られなかった優しげな微笑みを見せたが、「君はダイヤモンドよりも美しい」などとクサイ言葉を連発する。パッケージを確認すると芳香剤入りだった。
2010-11-27 14:22:36「男が綺麗過ぎる言葉遣いだと腐女子漫画の執事みたいでキモい」って言ったらデコピンされた。「マジキモい」ってもう一回言ったら「うるせーよ馬鹿」って言われた。良かった、そういう本当の貴方が見たいだけ。アタシの前では飾らないでいて。 #twnovel
2010-11-27 16:15:41眠りの森の美女は要求をぶちかます。 三人の王子に三つの難問。 綿菓子のように甘い雲でできた毛布、世界で一番大きく柔らかい肉球まくら、名湯の湯とアルプス山脈の空気で編んだネグリジェ。 パツ金姫様、寝言は寝て言え。どちらにしても、そもそも起きる気が無いらしい。 #twnovel
2010-11-27 17:47:47人間豹は飢えていた。路地裏に不細工な豹の着ぐるみが立っていた。中には人が入っている。それが誰なのか人間豹には解った。芸能界は浮き沈みが激しい。お笑い芸人はなおさらだ。「呑みに行くぞ」言って人間豹が歩き出すと、着ぐるみが乾分のように後について行った。 #twnovel
2010-11-27 18:53:36#twnovel 僕は見知らぬ庭に迷いこんだ。すると、ひらけたところに椅子とテーブル、そして紅茶と菓子が置かれていた。僕はそれをひとつ盗み食いしようとした。けれど、声がした。「だめ。食べたらあなたは帰れなくなる」僕は慌ててそこから逃げた。あれからあの庭には一度も行かなかった。
2010-11-27 19:42:10#twnovel 満月の夜におおかみさまに噛まれた。月が満ちる度に狼になってしまう私。その代わりに噛んだおおかみさまは、月が満ちる日だけ、力を持たず不老不死でもない人間になってしまった。29分の1だけ寿命の延びた私、29分の1ずつ老いていくおおかみさま。でも私の方が早く死ぬ。
2010-11-27 20:14:00#twnovel 10ディムあれば4、5人で軽く飲み食いできるのだが、この国の貨幣ディムは他国とはかなり異なる。ディムは「次元」の意で、5ディム貨幣が2枚で10ディムになるとは限らない。1枚に既にある次元がもう1枚にあっても全体の次元は増えないのだ。金持ちは珍しい次元を独占する。
2010-11-27 21:14:51#twnovel 入浴中はさすがに変身ベルトをはずしているだろうと、泥棒怪人は籠にはいったベルトへ手を伸ばす。「お、重ッ!」一体、何キロあるのかベルトを持ち上げるどころか動かすこともできない。「これをつけて戦っているのか・・・」戦わずして負けを認めた怪人は手ぶらで帰っていった。
2010-11-27 21:25:04ドドドドドと地響きがする。遅刻や遅刻やーという甲高い叫び。信号待ちの群衆が割れる。心斎橋筋商店街を大男が駆け抜けてくる。戎橋中央で踏み切った大男は夜空に身を翻し、背中からビルの壁面に吸い込まれた。瞬時にネオンが点灯する。道頓堀の夜の幕開けにどっと歓声が上がった。 #twnovel
2010-11-27 21:34:55彼と入ったファミレス。深夜なのに賑わっている。勉強する大学生、若い女の子達。明日になれば顔も忘れる一瞬の出会い。彼はいつも心地良い言葉をくれる人。でもそれだけ。何故一緒にいるのか…そう思った瞬間、彼も他の客も輪郭から白抜きされコーラの泡のように消えてしまった。 #twnovel
2010-11-27 21:52:50