【創三・お題】一緒に

二荀で。
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みねちまさひろ @Minechimasahiro

二荀のほのぼのチュエーション 『あなた(私)の隣りで 深く息をついて 私はあなたに 「これからはずっと一緒だからね 」と言いました。』  shindanmaker.com/338356 やだこれ可愛い(確信)

2014-10-19 08:51:44
みねちまさひろ @Minechimasahiro

許都の喧騒は、城そのものの息吹である。日々唸りを上げ、末端に至るまで血液を送る……荀攸は、「まるで人のようだ」と思った。町人であろうと荷を抱え、あちらこちらを走り回っている。 ここには、生そのものが有る。帝を擁立し、権力を握ったあの董卓は、果たしてこの様な城を築いただろうか。→

2014-10-19 09:58:40
みねちまさひろ @Minechimasahiro

荀攸の前を歩く叔父・荀彧は、道行く人々に声を掛けられてはそれに応えていた。彼の叔父も、そんな城で働く一人であった。血液なんて物ではなく、それこそ心の臓ーーーそれを支える支柱であろう。「よく来てくれたね、公達。会えて嬉しいよ」叔父は、楽しそうに笑っていた。→

2014-10-19 10:08:01
みねちまさひろ @Minechimasahiro

何年も会っていなかった叔父は、驚くぐらいに変わっていなかった。頴川から都へ赴いた際に別れを交わしたのが、つい昨日だと錯覚してしまうほどだ。思えば、よくぞ今まで生き延びていたものだ。この乱世、一度別れた兄弟が、再び再会すると敵同士になっていた、というのもよくある話である。→

2014-10-19 10:25:09
みねちまさひろ @Minechimasahiro

益州州牧に任命された荀攸であったが、劉焉により経路を潰され、既に赴任期間もとっくに過ぎていた。つまりはどこにも所属していない、ただの無職である。なので、その辺りは考えなくとも良い。楽に許都を楽しめる。「はい。私も、お会いできて嬉しゅうございます」→

2014-10-19 10:46:29
みねちまさひろ @Minechimasahiro

「都と言うのですから、もっときらびやかな物を想像しておりました」洛陽は、許都のものとは違う喧騒で溢れていた。何もかもが輝いており、まるで夢幻かお伽噺を見ているかのようであった。だが、荀攸は、こちらの喧騒の方が好ましく思えた。→

2014-10-19 10:59:32
みねちまさひろ @Minechimasahiro

あの城は、誰かが裏で苦労して作り上げた城だ。そこを偉そうにふんぞり返って歩く役人共を、荀攸は同じ官吏として嫌っていたし、そうはなりたくないとさえ思っていた。官吏は、日々助けられている町人らに、働きで返さねばならない……荀攸の考えを笑うかのような城が、長安であった。→

2014-10-19 11:05:32
みねちまさひろ @Minechimasahiro

「思っていた物とは違ったか?」「えぇ。…良い意味で裏切られました」それを聞いた荀彧は、より一層喜び、満面の笑みを浮かべた。本当に子供の様に笑う人だ。やはり叔父は変わっていない。いくら地位が上がっても、それを威に着ない。これからの時代、上手くやっていく人は、こんな人間なのだろう。→

2014-10-19 11:14:54
みねちまさひろ @Minechimasahiro

「文若!」その時。呼ぶ声が聞こえ、荀彧が足を止めた。声を掛けてきた者は、丁度料理屋から出てきたところで、大量に荷物を持たせた隻眼の従者を従えていた。それを認めると荀彧は簡略化された礼を取り、そちらへと小走りで歩み寄る。「あぁ、そろそろそちらは伺おうと思っていたのです」→

2014-10-19 16:06:47
みねちまさひろ @Minechimasahiro

「俺はここで昼飯を食っていた。……なかなか元譲が放してくれなくてな」「……それは日頃の行いのせいでしょう」荀彧に言われ、男は苦笑いを浮かべた。 男の身なりは質素であったが、着ている服の素材は上質なものだ。手もささくれ立っており、武官の手に近いものを感じる。→

2014-10-19 16:13:22
みねちまさひろ @Minechimasahiro

後ろの従者が抱える荷物には、竹簡が多い。その中には与地図、馬の形の駒があり、それを見た荀攸は、成る程、そういうことかーーー心の中で一人語ちた。 「ーーー文若。この男が、例の?」きらりとした瞳が荀攸を見つめていた。見つめ返すと、どこまでもどこまでも深い瞳に引き込まれていく。→

2014-10-19 16:19:11
みねちまさひろ @Minechimasahiro

「私は、荀攸。字を、公達と申します。此度は叔父の荀彧に招かれて参りました。……かの有名な曹公にお目通り叶い、大変嬉しゅうございます」面食らったのは男の方であった。数秒ほど言葉を失い、ガシガシと頭を掻いて、「……お前は何も考えていない様な顔をして、実は全てを見通しているのだな」→

2014-10-19 16:23:26
みねちまさひろ @Minechimasahiro

「同じようなしょぼくれた顔をしているというのに、元譲とは大違いだ」言われた隻眼の男は、しゅんと眉を下げた。荀彧もなんとか助けを出そうとするものの、言葉が出ないようだ。「……文若から話は聞いている。『何進が召集した名士の中に選ばれた自慢の甥』、と」→

2014-10-19 16:35:56
みねちまさひろ @Minechimasahiro

「……孟徳、そろそろ」「おぉ、そうだったな。……すまない。遅れたら長文にどやされるのだ」急かされた曹操はうんざりした様子であるが、どこか楽し気でもあった。そこで荀攸は、初めて気がついた。今までの城と違う、もう一つのこと。「荀攸!また気が向いたら、俺のところに来い!」→

2014-10-19 16:50:18
みねちまさひろ @Minechimasahiro

「……叔父上」去って行く蒼い着物を見ながら、荀攸は小さく荀彧を呼んだ。大きく大きく……深く息を吸い、その長身痩躯の端々までに気を行き渡らせる。そして、言った。→

2014-10-19 17:10:14
みねちまさひろ @Minechimasahiro

「……これからは、ずっと一緒ですぞ」その言葉の真意を見抜いた荀彧はハッとし、そうして、泣きそうな顔で笑った。~完~

2014-10-19 17:12:32