れんそうほう艦これSS 時雨と愉快な不良たち

れんそうほうがテンションの上下に揺り動かされながら一時間の間に言葉を紡げるだけ紡いでいく艦これSS一時間一本勝負のまとめです。
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量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

花を捧げ、両手を合わせる。 「扶桑、山城。僕、今度、旗艦として出撃するんだ…難しいけど…見守ってて、くれるかな。」俯き気味に小さく呟く。 そして、朝一で来たはずの時雨より先に添えられた花と、先客の忘れものが眼に入る。 その白い手袋を拾う。 「仕方ないな…司令官は。」 #艦これSS

2014-10-19 21:08:55
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

キス島撤退作戦。 かつて神鳴島として日本領だったその島から、守備隊の撤退が命じられ、これに時雨達は従事した。 迅速な作戦行動が求められる為、駆逐艦のみの編成でなければならず、今回の編成は旗艦が時雨、以下、島風、五月雨、文月、望月、夕立であった。 #艦これSS

2014-10-19 21:12:17
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「さぁて!素敵なパーティ、始まっちゃうっぽい??」跳ね上った髪の毛を犬の様にぴょこぴょこ上げながら夕立がはしゃぐ。 「えー…だるいわぁ…」眼鏡を眠そうに上げながらけだるく望月が応じれば、 「ダメですよ!重要な作戦なんですから!言葉に気を付けて!」と諌める五月雨。 #艦これSS

2014-10-19 21:15:33
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「っていうかー!みんな、おっそーい!」短いスカートをパタパタさせながら島風が意気込めば、 「あ、あたし…夜戦なら、頑張るから!」と幼い声を懸命に挙げる文月。 (…なんだ…僕、一番…影が薄いじゃないか…)と時雨は思わず思ったが、旗艦としてすぐに皆をまとめ進軍した。 #艦これSS

2014-10-19 21:18:46
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

初戦、軽巡や雷巡が編成された深海棲艦の編隊。 しかし夕立の「お前の様な駆逐艦がいるか」というレベルの火力と島風の圧倒的な機動力、五月雨の堅実な射撃と望月のやる時はやる雷撃で簡単に突破した。 (…見てくれてるかい、二人とも。僕ら、こんなにも戦えるようになったんだ…) #艦これSS

2014-10-19 21:23:18
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「これ~いけちゃうんじゃない?」思わず文月が漏らした一言の直後。 北方の冷たい海を揺らすかの如き低音が響く。 戦艦ル級eliteが二隻。その他重巡二隻を含んだ圧倒的な威圧感を放つ敵艦隊が時雨たちの前に立ち塞がった。 望月は「あー…やな予感、してたわ~…」と零した。 #艦これSS

2014-10-19 21:28:40
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

しかし時雨は。 あの二人から受け継いだ髪飾りにそっと手を触れた。(僕に、勇気を…!)皆に言い放った。 「ここを突破する!島では兵隊さんが僕らを待ってるんだ!」 凛とした声が極寒の海に心地よく響いた。 「はい!」五月雨が即座に応じ、島風は既に旋回運動を取りつつ近づく。 #艦これSS

2014-10-19 21:33:15
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

島風は速い。駆逐艦の中でも図抜けた回避能力を持つ彼女が水面を誰よりも何よりも速く、愉しむかのように滑る時、敵艦は既に彼女を目視できない。 一瞬、辺りを見回した敵艦は「おっそーい!」という一言と共に連装砲の一撃を喰らう。 「やったね!さっすがれんそうほうくんだ!!」 #艦これSS

2014-10-19 21:35:39
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

夕立は強い。 改二となった彼女は「狂犬」と呼ぶか「地獄の番犬」とでも形容したくなる圧倒的火力は、見た目の愛らしさと相反してその強さを際立たせている。 愛くるしさに油断した敵艦を蹴散らし、薙ぎ払い、灰塵と化す。 それが夕立の強さであり、頼もしさだ。 #艦これSS

2014-10-19 21:39:01
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

では時雨は。 時雨には何もない。島風のような速さも、夕立の様な力強さも、残念ながら時雨には無かった。だが時雨は。 ル級が敵艦隊を倒そうと、旗艦である彼女に狙いを定めた。都合よく、素早い駆逐艦でも手ごわい駆逐艦でもなさそうだ。ル級はそう判断する。 轟音。 #艦これSS

2014-10-19 21:42:58
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

だが着弾音が聞こえない。「??」ル級が辺りを見渡した時、時雨は背後に立っている。 「?!?!」 時雨には艦娘の中でもどこか達観したところがあった。それは言いかえれば見極めが早く、消極的な姿勢が戦闘でも見え隠れする事があった。 だが今は。 二人の姉妹が彼女と共にある。 #艦これSS

2014-10-19 21:47:16
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

出撃前。碑石に時雨は誓った。 「あの島に残っている僕らの仲間は、絶対に連れて帰るよ。」碑石を濡れた雑巾で磨きながら。 「君たちが…僕の命が光だって、言ってくれたように。だから。」 彼女は、生きると誓った。 だから。 「ゼロキョリ…!?」 ル級の危機感は現実になる。 #艦これSS

2014-10-19 21:53:13
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「うわぁ…戦果、ぱねぇ…」ル級が轟沈し起きた巨大な水柱を見て望月が呟く。 「時雨さん、凄い…」同じ様に五月雨も思わず漏らす。 「はっやーい!時雨も速いね!!」はしゃぐ島風を諌めつつ時雨は答える。 「みんなで集めた、練度の結果だよ…」あの日から止まない、雨のおかげ… #艦これSS

2014-10-19 21:59:18
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

そうして神鳴島、いやキス島撤退作戦は成功した。無傷で全員を撤退に成功させたこの作戦は、後に「奇跡の作戦」と呼ばれる事になるが、それはまだ先の話である。 「全員、作戦完遂してただいま帰投したよ、提督。」執務室で時雨は報告する。その顔には僅かに安堵が窺える。 #艦これSS

2014-10-19 22:02:30
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「よくやってくれたよ、時雨。守備隊は全員無事。本当に良かった。ありがとう。」提督は帽子を取り、頭を下げる。 「や、やめてよ提督…そんな。」 「はは。まぁ…そんな気分だったんだ。そうだ、作戦の成功を祝って…伊良湖さんのところに行こう」 「伊良湖?間宮さんじゃなくて?」 #艦これSS

2014-10-19 22:06:03
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

…てなところでお時間オーバーと相成りました!! 続きは次回!! 途中ふぁぼ投げしてくれた皆さん、有難うございます!元気玉作ってる気分でした! あぁ予定ではもう酒保にみんなでいくつもりだったのに~だったのに~書くのが遅い~すみません~ 続きも書きますよ!! #艦これSS

2014-10-19 22:08:25
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

バナージ君。聞こえているなら今の時間に私に仕事をふるのは止めろ。このままでは二人とも残業が伸びて家に帰れなくなる…! ……すみませんそんなわけで鼻血も出なくなる勢いで仕事してますが艦これSS、少し開始が遅れるかも…ごめんなさい…泣 pic.twitter.com/xnW3X0E6i0

2014-11-03 19:37:10
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量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

綿の光ったような雲がせわしなく動く秋空の下、提督と艦娘達が歩いていく。 「十六夜が連れてきてくれたんだ、伊良湖さんを」 「すごいっぽい!どんなお菓子がでてくるっぽい?!」夕立は小さな犬の様にぴょこぴょこ跳ねる。 「文月、フルーツ系が良いなぁ」 「わ、私は何でも…」 #艦これSS

2014-11-03 21:39:43
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「…良いのかな、僕たちだけ、そんな…」と呟く時雨に提督が耳打ちする。 「全員で行ったら俺の財布がオーバーキルだから」 くす、と手を軽く口に当てて笑う時雨。 が。 「よぉ提督!遠征艦隊、ただいま帰投したぜ!」 「なのです!」 「ぐぇぇっ?!」 天龍と第六駆逐隊だった。 #艦これSS

2014-11-03 21:43:19
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「あ?どうした、踏まれたカエル見たいな声出して。ほら、海上護衛任務分の資材だぜ!」 「あ、ああ、ありがとう…」引きつる提督。威厳ゼロ。 「あれ?時雨たち、みんなで何処か行くの??」怪訝な顔をした暁に夕立が楽しそうに事の次第を伝える。 提督の顔が疲労マークそのもの。 #艦これSS

2014-11-03 21:46:39
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「マジかよ!!新しい給糧艦?!うぉぉ、提督、超GJじゃんか!」天龍は既にキラキラ状態に。 「あ、戦意高揚の為だから今の天龍には必要ないね?」保身に走る提督。 「え…なんだよそれ…」天龍の顔がコダマの様になっていく。 「だー!分かった分かった!みんなで行くぞオラァ!」 #艦これSS

2014-11-03 21:50:01
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

『部下の為 自腹を切る俺 報われず』 そんな心の俳句を提督が詠んでいるウチに食堂に着き、ワイワイと三々五々席に着く。 「あら、いらっしゃい皆さん。」リボンのポニーテールの艦娘が厨房で甲斐甲斐しく準備をしている。 「今日はね、カボチャのケーキよ」 途端に歓声が沸く。 #艦これSS

2014-11-03 21:54:58
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「ありがとう、そして着任もありがとう、伊良湖さん。」提督は白帽を脱いで頭を下げる。 「あらやだ提督、そんなことなさらないで下さい」 「いーじゃん、それが提督なんだし~」ケーキを頬張りながら望月。 「似合ってるよね、下っ端キャラ」と文月。 提督のTが折れそうである。 #艦これSS

2014-11-03 21:59:30
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「うめぇ!こりゃ俺と同じくらい世界基準超えちまってるな!!」と喚声を上げる天龍。 「天龍お姉ちゃん、そんなに慌てて食べると咽ちゃうのです」 「そうよ、レディは大人しくいただくのよ?」と胸を張る暁。 が、「暁、服にこぼしてる」響が暁の服を払う。 #艦これSS

2014-11-03 22:03:18
量産型ほうれんそう㌠ @356cm_cannon

「パウンドケーキ…ここに来る前に用意してくれたのかい?」と提督が聞くと 「ええ、着任の手土産にと思って用意しておきました。パウンドケーキは焼いて三日ぐらい寝かせたのが一番ですから。」とアイスティーを配りながら伊良湖は答える。 「あ、このお茶、甘くなくてケーキに合う」 #艦これSS

2014-11-03 22:05:57