霊木が集う森の、零落したエルフ一族と一匹の小鬼

切腹の人さん(@HarakirimanEX)による小話
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切腹の人. @HarakirimanEX

樹齢二千年を超える霊木が集う森にて霊木の加護を受けていたが、あまりに増長し他の種族を見下し貴族然として振る舞ったがため、霊木の加護を奪われて零落したエルフの一族。 他の種族に嫌われ人里に逃げ込むように移り住むも高すぎるプライドが邪魔して生計を立てられず、少しずつ数を減らしていく。

2014-10-20 21:05:56
切腹の人. @HarakirimanEX

一方で、霊木たちは森に住まう一匹の小鬼(オーク)を知る。 エルフ達の遊戯狩猟で家族を失い、森に隠棲していた魔法使いに拾われた小鬼は読み書きどころか学問を修め、魔法使いが都に戻った後その小屋を受け継いで文化的な暮らしを始めた。 野蛮さのかけらもなく心優しい小鬼に霊木は加護を与えた。

2014-10-20 21:10:10
切腹の人. @HarakirimanEX

霊木の持つ英知と限りなく不死に近い力を与えられた小鬼は、森の外にある鉱山跡の廃村再生を始める。垂れ流しにされて鉱毒で汚染された水源と土を時間をかけて浄化し、森で採れる野草や木の実を移植し、放棄された畑を少しずつ耕し直す。五年、十年と、少しずつ辺りは命に満ちてく。

2014-10-20 21:14:36
切腹の人. @HarakirimanEX

傲慢だったエルフ達の凋落と周辺環境の再生を知った民が、少しずつ森に戻ってくる。小鬼は戻ってきた村人たちに畑を返し、また、かつての鉱毒に苦しんでいた村の古老達のために薬を調合した。 森を追われたエルフ達が幾度か小鬼を襲い力を取り戻そうとしたが、森の木々と動物たちが行く手を阻んだ。

2014-10-20 21:22:04
切腹の人. @HarakirimanEX

力をカエセと嘆くエルフ達。あるものは嫉妬に心と魂を歪ませて悪鬼と成り果て、あるものは別の森を求めて立ち去り、あるものは加護のすべてをあきらめて人とさほど変わらぬ定命の身体であることを受け入れた。 やがて月日が流れ、村の老人ですらそこにエルフがいたことを知らぬようになった頃。

2014-10-20 21:28:48
切腹の人. @HarakirimanEX

定められた命を受け入れ世代を重ねることを選んだエルフ達の、最後の純血の娘が森を訪ねた。 そこが失われた故郷であることを娘は知らない。そして娘は森の奥で小鬼に出会い。 女エルフ「……という脚本で次の収穫祭では劇を披露する予定なのだが」 女騎士「良い医者を紹介してやろう」

2014-10-20 21:33:04
切腹の人. @HarakirimanEX

登場人物解説:オークさん 他所の国だと世界樹とか言われそうな樹齢数千年クラスの霊木がたくさん生えた森の住人。 このような森には高慢ちきなエルフが棲んでて結界で森を隠すのがファンタジーの王道なのだが、エルフもいなければ結界もないので複雑で陰惨な過去があるとみんな勝手に推測してる。

2014-10-20 21:49:41