同居する森と月と伊月の誕生日(当日)

森「誕生日にプレゼントを3つあげるのってなんだっけ?三種の神器?」 伊「イエス・キリストな気がします」
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同居する森と月bot @doukyomi5

森「今からイベントパートに入るから連投ウザいってお嬢さんたちはミュートしておいてね!最終回みたいなテンションだけど最終回じゃないよ! あらすじ:来月からこのbotが『同居してない森と月bot』になるかどうかの瀬戸際」

2014-10-23 18:30:32
同居する森と月bot @doukyomi5

「改めて、誕生日おめでとう、伊月」 「ありがとうございます、森山さん」 昨日の今日で、伊月はいつもの伊月になった。明るいしよく笑うし、オレにも、周囲への接し方も自然。寧ろオレを意識してぎくしゃくしていた数日のほうがおかしかったんじゃないかって思える。 部活を終えて帰宅する。

2014-10-23 18:40:31
同居する森と月bot @doukyomi5

ちなみに葉山は寄席のチケットをくれたらしい。人気の噺家の人気の演目で、いわゆるプラチナチケットらしく、伊月は頬を染めて喜んでいた。葉山らしくないもののチョイスだと思っていたら、どうも実渕と赤司に相談と協力を要請したみたいだ。保護者(?)が出てくるのズルい。

2014-10-23 18:45:29
同居する森と月bot @doukyomi5

チームメイトからはダジャレ関連物とアイケアグッズが多い。 「じゃあオレのプレゼント。その一、な」 「うわ、大きいですね」 「ケーキ買おうかと思ったけど、伊月はケーキよりこっちがいいかなって」 冷蔵庫から取り出したのは、ホールケーキよりやや小さいくらいのコーヒーゼリー。

2014-10-23 18:55:29
同居する森と月bot @doukyomi5

「こんなに大きいのどうしたんですか?手作りですか?」 「うん。あ、大丈夫、何回か試作してみたから味もマトモだと思う」 「今更森山さんの料理の腕を疑うなんてないですよ」 伊月は笑い、端っこをスプーンで掬って食べた。 「あ、美味しいです!オレの好きな味だ」 「だろうだろう」

2014-10-23 19:05:29
同居する森と月bot @doukyomi5

多くのメーカーのコーヒーゼリーを買ってきて食べさせては、硬さや舌触り、苦味や風味など、伊月の好みを細分化していったのだ。かなり伊月好みの味が再現出来ていると思う。 コーヒーゼリーを幸せそうに崩していってる伊月の前に、今度は小さな箱を置く。 「ん。どうしたんですか、これ」

2014-10-23 19:10:32
同居する森と月bot @doukyomi5

「プレセント、一つに絞りきれなくて」 「そんな…コーヒーゼリーだけで十分ですよ」 「まあまあ、年に一度のことだし。なくなっちゃうものだけなんて寂しいだろ。オレの時に三倍返ししてくれればいいよ」 プレゼントって、やる側の自己満足だよな。茶化し気味に言うとその手に箱を握らせる。

2014-10-23 19:15:29
同居する森と月bot @doukyomi5

遠慮がちに伊月はリボンをほどいていく。 「ペン、……じゃなくて万年筆ですね…」 「心ゆくまでこれでキタコレメモってください」 「そんな、こんな立派なの、なくしそうで普段使いなんてちょっと怖いです、ああ、でも嬉しいです」 20歳の誕生日は世間一般でも一つの区切りだ。

2014-10-23 19:25:28
同居する森と月bot @doukyomi5

ちゃんとしたものを送りたかった。何年経っても、伊月の人生の傍にこの万年筆があるように。 オレが傍にいなくなっても、とは寂しいから考えない。 「プレゼント、実はもいっこある」 「……え?」 食べる手を止めて、まだあるのか、という目で伊月がオレを見た。

2014-10-23 19:30:30
同居する森と月bot @doukyomi5

オレは、隠していた小さな箱を差し出す。 「…」 言うなれば、コーヒーゼリーは同居人として、万年筆は先輩としての贈り物だ。 最後の一つは…特別な相手として。 テーブルの上に置かれた箱に伊月が動作を止めている。 どう見てもドン引いてる気配がする。 「…これは、あの?」

2014-10-23 19:40:28
同居する森と月bot @doukyomi5

頑張れ。 ここで本気にならないでどうする。ナンパの時の、当って砕けてからがオレの一回戦、という図太いポリシーよ今立ち上がれ。 箱の中身は細身の銀の指輪。小さな飾り石はイーグルアイだ。指輪の石にするタイプの宝石ではないと言われたんだけど、これ以上のものは見つけ出せなかった。

2014-10-23 19:50:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「伊月。…伊月が好きだ。後輩として、チームメイトとしても大事だけど、もっと大事にしたい。世界中の誰より」 震える心を叱咤し、言葉をつなげる。 「……一緒に暮らさなくても、気持ちは変わらない。だから言う。好きだ。実家に帰っちゃっても、お前がオレのことどんな風に考えてても」

2014-10-23 19:55:29
同居する森と月bot @doukyomi5

一緒に暮らしてて毎日すごく楽しい。でも、伊月がオレといるのがつらいなら寂しいけど引き止めない。今までありがとうって言って笑って送り出せる。実家に帰っても、どこにいても、そんなのは大した問題じゃない。たとえ地球の外にいたってオレはお前のこと好きなんだ。 「……森、山さん、」

2014-10-23 20:05:29
同居する森と月bot @doukyomi5

顔から火が出そうだ。怖い。恥ずかしい。困らせる。拒絶されたくない。 でも、もうどうにでもなれ!と思って顔を上げた。 目が合うなり、伊月が―― 逃げた! 「お前、ちょっ…逃げるな!」 部屋に駆け込んだ伊月を追ったが一足遅く目の前でクローゼットの扉をばちんと閉められる。

2014-10-23 20:10:33
同居する森と月bot @doukyomi5

「からかってます?」 「からかってないよ。どうして?」 応じながら、久しぶりに入った伊月の部屋を見る。私物は殆ど箱詰めされがらんとしている。思えば、ここに来た時も荷物の大半はネタ帳で、伊月の物は少しだったんだっけ。 「…森山さんは、別の人がすき、なのかなって思ってました」

2014-10-23 20:20:29
同居する森と月bot @doukyomi5

「ほんとうにそう思う?」 この五ヶ月一番一緒にいたんだ。 オレが誰を気にかけて、誰を見てたか、一番知ってるのも伊月じゃないか。 「ごめんなさい、……思ってない、です」 「伊月」 扉の前で立ちすくむ。断られはしなかった。けど、なにをどう話したらいいかわからない。

2014-10-23 20:25:30
同居する森と月bot @doukyomi5

男同士っていう事気にしてるのかな。同性同士だから被るであろう困難や理不尽や不利益。 それを、全部自分が持って行こうとでも思ってるんだろう。 でも、遠い将来のオレの幸福を願って、今、伊月が独りになろうとする、その選択肢がすでにオレを悲しくさせることに気づいてるんだろうか。

2014-10-23 20:30:29
同居する森と月bot @doukyomi5

二人でいることで発生する悲しみや不遇を、どちらかが一方的に引き受けることなんてできないし、しなくていい。そういうのは優しさでも思いやりでも、賢さですらないんだ。 別々の場所でお互いに寂しい思いを抱えていくくらいなら、一緒にいて多少の困難くらい笑いあって乗り越えたらいい。

2014-10-23 20:35:30
同居する森と月bot @doukyomi5

伊月、オレはね。 色んな物を背負い慣れて、引きずり慣れて、すぐなんでも自分一人で抱え込もうとするお前のそういうところを、なんとか変えたかったんだよ。 だって二人で背負ったら負担は半分になるだろ? 伊月は、オレが力がないって思ってて、あんま重い荷物も持たせてくれないけどさ。

2014-10-23 20:40:29
同居する森と月bot @doukyomi5

頭のなかで考えていただけの言葉は、口をついて出ていたらしい。 ぐす、と中から洟をすする音がした。オレは勢い良くクロゼットの扉を開ける。 座り込んでいた伊月は、目を真っ赤にしていた。 「、もりやまさん」 袖で目元をごしごしこすっている。 「聴いてた?…伊月、指貸して」

2014-10-23 20:50:29
同居する森と月bot @doukyomi5

オレは握りしめていた小さな箱から指輪を出す。 「う、…受け取れません、そんな大事なもの、」 「いらないならオレの知らない所で捨てていいよ」 それも嫌だ、というように伊月はぶんぶんと首を横に振る。 「じゃあ、誕生日伊月はなにが欲しい?」 伊月と目線を合わせようと屈みこむ。

2014-10-23 20:55:30
同居する森と月bot @doukyomi5

望んでくれ。一言でも言ってくれたら、オレがあげられるものは何でもあげるよ。心も、身体も、時間も、未来も。全部。 「森山さん」 手を伸ばしてその目の涙を拭おうとしたら、まるで体当りするような勢いで、全身で抱きついてこられた。 「ぅわ、わ!」 「森山さん、すき」

2014-10-23 21:01:17
同居する森と月bot @doukyomi5

「優しいところも、明るいところも、バスケに一生懸命なところも、ちょっとお調子者で残念なところも、好きです。全部、好き。数えきれないくらい好きです」 「は、あの」 ぎゅう、と、胸、というか胴体に抱きついてる伊月がしがみついてくる力を強くした。 い、今、「好き」って!

2014-10-23 21:05:28
同居する森と月bot @doukyomi5

聞き間違いじゃないよな?幻聴じゃないよな?「森山さん、すき…焼き」とか言ってないよな?! 顔がおかしいくらい熱い。 倒れる。幸せと衝撃が大きすぎて倒れる。いや現実問題酸欠で倒れる。景色がぐるぐる回り始めた。 「気持ちが溢れたら迷惑かけると思ったから、離れようって決めたのに」

2014-10-23 21:10:29
同居する森と月bot @doukyomi5

だが、気絶しかけたオレのパニックを鎮めてくれたのは、伊月の呟いたその一言だ。 「そういう理由で実家に帰るって言い出したの?オレのこと好きだから」 しがみついたまま、伊月が項垂れる。 「好きになってくれた相手のこと、迷惑だなんて思わないよ」 「……」 「どうした?」

2014-10-23 21:20:28