同居する森と月と葉山曰く、

葉「オレ的にはこのたとえ、すごく秀逸だと思ったんだよね。ラクダが言いましたくらい」 森「葉山お前実は伊月のダジャレ大好きだね?!」 葉「決勝戦の真剣勝負の場で言われたオレの衝撃を考えてよ森山サン…。なんつうか、刷り込み的な…」
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同居する森と月bot @doukyomi5

人生の半分以上バスケをやってきた。何万本もパスを出してきたけれど、自分が納得できたパスはたった一本しかない。受け手の手元に、最高の状態で届くパス。赤司なんかが簡単にやってのけるそれはPGの理想だ。 オレは天才にはほど遠いから、今日も理想を追って練習を積む。

2014-09-24 18:55:28
同居する森と月bot @doukyomi5

トライ&エラー、トライ&エラー、またトライ、そしてエラー…永遠に。 「……づき?おーい!」 葉山の声で我に返った。無心だった。放った自分のシュートはネットの中に収まった。 「もー自主練の時間も終わりだぜ。道具片付けないと怒られちゃうよ」 「あ、ああ。…お疲れ様、葉山」

2014-09-24 19:08:08
同居する森と月bot @doukyomi5

「伊月もね。夏休みも終わりだからってちょい追い込み過ぎてんよ」 葉山はニっと笑ってオレの胸に拳を入れると、ドリブル練習に使っていたコーンを重ねていく。オレは、ボールを集めた籠を用具室に戻した。 掃除まで終えてしまうと、所在なくちょっと入口あたりをうろうろする。

2014-09-24 19:14:56
同居する森と月bot @doukyomi5

「伊月まだいんの?森山サン待ち?」 「うん。帰り道のスーパーが安売り日だから一緒に買い物して帰ろうと思って」 「主婦か!」 森山さんは監督と何か熱心に話してる。新しいフォーメーションの完成度が上がらないことだろう。オレが言い出したことで負担をかけるのは、どこか申し訳ない。

2014-09-24 19:25:28
同居する森と月bot @doukyomi5

「随分なついてんね。前は帰り待ってるとかなかったじゃん」 「ああ、うん。オレ森山さん好きだし。近くにいて、できることがあれば何でもやろうって思って」 倒れるまで無理に気付かない同居人なんて同居人失格だ。今度こそそんな事態は未然に防がなければ、とオレは深く心に刻む。

2014-09-24 19:35:28
同居する森と月bot @doukyomi5

ところが葉山は、眉間にしわを寄せて、動物がうなるみたいな表情になってた。 「伊月さ、それはわかって言ってんの?」 「なにが?」 「確かに森山サンは、なんつーかこう、好意を口に出してやりたくなる不憫キャラだけど、無理して言ってない?」 「え、別に無理なんてしてないよ」

2014-09-24 19:45:30
同居する森と月bot @doukyomi5

無理、っていうのは、本当は好きじゃないけど好きと口にする事だろう。 そういうことは決してない。オレは森山さんのこと、バスケをするチームメイトとしても、一人の人間としても好きだし、尊敬もしてる。とても大切な先輩だって思ってる。 「……オムレツ、あんじゃん」 「はぁ?」

2014-09-24 19:50:29
同居する森と月bot @doukyomi5

葉山が顔を思いっきりしかめたまま、妙なことを言い始めた。 「中の具をさ、包み切れないと、中身が卵からはみ出すじゃん」 「はぁ」 「今の伊月はそんなカンジ」 「……?」 謎かけか?オムレツは蒸れつつ仕上げるキタコレ!じゃなさそうだな。 葉山の顔は真剣だ。

2014-09-24 20:01:25
同居する森と月bot @doukyomi5

「伊月の『好き』って言葉は、いろいろはみ出し過ぎてる。それじゃいくら不憫キャラっつっても森山サンが不憫だよ。一緒に住んでる伊月が、もっとよく見てあげなよ」 「え、」 わからないことを言うだけ言って、葉山はバッグを抱えて体育館の外に消えた。 「んじゃーね」 …オムレツ?

2014-09-24 20:10:32

伊「このイベントあとに、「オムレツに具ってないよね」ってつぶやいてる人がいた衝撃」

同居する森と月bot @doukyomi5

今からイベントパートに入りますので、連投が気になる方はミュートをお願いします。ネガいお願い…キテナイコレ。 ※あらすじ。葉山に、森山さんのことをもっと見てやらないと不憫だって言われた、あと、「オレ」の好きって言葉はオムレツみたいになんか色々はみ出してるらしい。

2014-10-04 20:40:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「……オムレツ?」 「まあ、オムレツだね」 葉山に言われたことが頭にひっかかっていたので、今日の晩御飯はオムレツになった。色々はみ出してないし綺麗にに楕円形にできたつもりだ。どっちのかわかるように、ケチャップを❤型と◆型にしてみたら森山さんが見て噴き出してた。

2014-10-04 20:50:28
同居する森と月bot @doukyomi5

未だに使うと照れるマグカップを置き、オムレツと簡単な和え物とご飯を並べる。向かい側で食事をとっている森山さんを、それとなく見つめる。もっとよく見てあげなよ、と言われるってことは、つまり今のオレは森山さんのことを見ていないということか。 「ん、な、なに?」

2014-10-04 21:05:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「あ、…何でも。おいしいですか?」 「うん、美味しい」 オレの目線に森山さんは真っ赤になる。森山さん、こんなに照れ屋さんだったろうか。微妙な違和感がひっかかり、オレはなおも見続けた。 「あー、こないだ出かけた時も言ったけど、あんまオレの好みに合わせようってしなくていいよ?」

2014-10-04 21:15:29
同居する森と月bot @doukyomi5

「え、それはつまり味がマズいって」 「いや違う違う!オムレツも、最初はレシピ本どおりの味付けだったじゃん。でも段々、オレの好きなふうになってる」 「ダメですか?」 「ダメじゃないけど!嬉しいけど、そこは伊月の好きな味付けでいいってこと!伊月家の味がさ、あるだろ?」

2014-10-04 21:25:31
同居する森と月bot @doukyomi5

「好きな」 ふと考える。うちは三食和食が基本で、洋食は何かのお祝いや行事があった時くらいしか食卓に上らない。だから自分の中では、うちで食べるハンバーグもオムレツも、特別な日の料理って感じで家庭の味って気がしない。家に帰って教えてもらってたメニューも和食がほとんどだし。

2014-10-04 21:35:29
同居する森と月bot @doukyomi5

だから好みと言われてもピンとこない。 ああ、だからオレ森山さんの好みに合わせようとしたのかもしれない。自分が洋食に馴染みがないもんだから。 なるほどなるほど、とオレは一人で納得した。

2014-10-04 21:45:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「あ、そうだ。オレ明日出かけるから、晩御飯はオレの分はいいからな」 「了解しました。どちらにお出かけですか?」 「小堀のお誕生日会。ほんとは二日が誕生日だったんだけど、ちょっとばたばたしてたしね」 森山さんは嬉しそうに笑う。 「海常の皆さん、仲いいですよね」

2014-10-04 21:55:31
同居する森と月bot @doukyomi5

「誠凛の奴に言われるのもなあ。充分仲いいくせに」 そういえばふと思い出した。初めは小堀さんに会って話を聞いてた時に言ったんだっけ。「森山さんが好きです」って。今思い返すとなんだか恥ずかしい。オレは、ぽっと出の、大学からの知り合いみたいなもんなのに。

2014-10-04 22:05:30
同居する森と月bot @doukyomi5

森山さんのことを長く知ってる小堀さんにわざわざそういうことを言うなんて。オレが主張しなくたって、小堀さんは森山さんの良いところや好ましい所なんて山ほど知ってるはずだ。 ……言わなくていいことを、なんでわざわざ言っちゃったんだろう。 「…」 「どうした、考えこんで」

2014-10-04 22:15:30
同居する森と月bot @doukyomi5

「わあ!」 いつの間にか目の前に森山さんの顔がある。近い!と思って後ずさろうとすると、椅子ごとひっくり返りそうになって森山さんが手を掴んで止めてくれた。 「もー…ドジ。何やってんの」 「いや、顔近くて!」 「それでそんなに引かれるとは…オレのイケメンっぷりを再確認したとか?」

2014-10-04 22:25:53
同居する森と月bot @doukyomi5

「……」 「ツラい!無反応ツラい伊月!」 「すみません。まだ考えてる途中なんです」 「……なにを?」 心底不思議そうな顔で森山さんが首を傾げた。 葉山に言われたこと、小堀さんに言ったこと。いろんなことが頭をめぐる。 オレにだって、よくわからない。

2014-10-04 22:35:29