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hikari♡∞妄想♡
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《犬になりたい》 番外編-1 安田章大がやってきた。 俺の街に。 なんつったら大げさだけど、俺にとってはそんくらい衝撃的だった。 芸能人見たのなんて、小学生の頃、近所の祭りに営業に来てたコージー富田以来だし。
2014-09-06 22:52:50
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《犬になりたい》 番外編-2 安田章大は芸能人ぽくないってゆーか、意外とフツーで、っていうか俺に気ぃ使ってあえてフツーにしてんのかもしんないけど、とにかくめっちゃいい人で。 うちのねーちゃんのこと、気に入ってんのかなって思ったのは、初めて会ったとき。
2014-09-06 22:53:00
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《犬になりたい》 番外編-3 だって、ねーちゃんのこと「友達」だって言ったから。 いい年した男と女がトモダチ、なんて。 男女の友情なんて、どっちかが相手に片想いしてるか、お互い好きだけどすれ違いまくってるか、そのどっちかじゃないと成立しないと思う。
2014-09-06 22:53:07
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《犬になりたい》 番外編-4 俺にとって、男女の友情はあくまで発展途上の恋。 だから、友達になれたらしめたもん。 だって...。 友達にすらしてもらえないことだって、あるんだから。
2014-09-06 22:53:13
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《犬になりたい》 番外編-5 予備校の個別ブースの椅子に座ると、先生はあからさまにため息をついた。 「もう、やめてくれないかな」 「どうして？」 「この間の模試、現代文の偏差値は？」 「...64」 「...分からないとこなんてないでしょう？」
2014-09-06 22:53:20
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《犬になりたい》 番外編-6 俺の通ってる予備校は授業の他に、予約すれば個別で15分だけ質問ができるシステムで。 このありがたいシステムを、俺はおおいに活用してる。 好きなひとに、会うために。
2014-09-06 22:53:27
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《犬になりたい》 番外編-7 「だって、こうしないと話してくんないじゃん」 「...質問は？」 「彼氏いますか？」 「プライベートなことには答えません」 「好きなタイプは？」 「......」 「連絡先教えてください」 「ね、だから...」
2014-09-06 22:53:34
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《犬になりたい》 番外編-8 「俺がガキだから？」 「......」 「なんで俺じゃダメなの？」 先生はため息をついた。 「時間切れ」 分かってる。 大好きなひとを困らせてることくらい。 でも、こうでもしないと心が壊れそうで。 いつの間にかそれくらい、好きになってた。
2014-09-06 22:53:45
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《犬になりたい》 番外編-9 初めて会ったのは去年の、だから高2の、夏。 先生は、夏期講習の臨時講師だった。 俺より9個年上。
2014-09-07 23:05:28
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《犬になりたい》 番外編-10 例えるなら？ 北川景子と黒木メイサを足して2で割って長澤まさみをかけたみたいな、とにかく超キレイで、オトナの女って感じで、学校にいる子猿みたいにキーキーうるさい女子たちとは全然違って...。 一発でファンになった。
2014-09-07 23:05:37
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《犬になりたい》 番外編-11 授業の後、廊下で友達と話してたとき。 「お前はいーよなぁ。人生イージーモードじゃん。大学さえ受かっちゃえば、後は家継ぐんだろ？」 「いーなぁ、ボンボンはぁ」
2014-09-07 23:05:43
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《犬になりたい》 番外編-12 俺の家は地元ではそこそこ有名な、割とデカめの動物病院で、だからそんなこと、昔から言われ過ぎて慣れてるはずなのに。 何かうまく返せなかった。 俺はほんとに獣医になりたいのかな。 ずっと見ない振りしてた疑問が頭から離れない。 そーゆー時期で。
2014-09-07 23:05:49
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《犬になりたい》 番外編-13 自習室行くからって、一人になってぼーっとしてると、声がした。 「大丈夫？」 振り返ると目の前にいた、憧れのひと。 「もらったものをおんなじ状態で続けていくのって、ほんとはすごく大変なことなのにね」 「え...」
2014-09-07 23:05:57
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《犬になりたい》 番外編-14 「全っ然、イージーモードじゃないよねぇ」 先生は優しく笑ってくれた。 「がんばってね」 心臓撃ち抜かれたような気がして、そっからもう、先生のことしか考えられなくなって。
2014-09-07 23:06:03
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《犬になりたい》 番外編-15 ソッコーでその時付き合ってた彼女と別れて、夏期講習の最後の日に告白した。 「ごめんなさい。気持ちは嬉しいよ。ありがとう」 そう言って、サラッとフラれたけど。
2014-09-07 23:06:10
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《犬になりたい》 番外編-16 それが、去年の夏のこと。 もうすぐまた...夏が来て、夏期講習が始まって。 俺は、18歳になる。
2014-09-07 23:06:15
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《犬になりたい》 番外編-17 先生にフラれてから、なんかやけくそになって、適当にいろんな子と付き合ったけど、先生より好きだったかって言われたら、違う。 誰と付き合ってもしっくりこない。 そんな悶々とした日々が続いてた時、ラッキーなことに、先生は臨時講師から講師に昇格した。
2014-09-08 22:40:52
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《犬になりたい》 番外編-18 再会してからも、付き合ってとか、かわいいねとか言いまくってたけど、先生はいつも笑顔でサラッとかわした。 つまり完全に相手にされてないんだけど、他に方法が思いつかないし、言いまくってりゃなんとかなるんじゃないかって淡い期待をしたりして。
2014-09-08 22:41:00
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《犬になりたい》 番外編-19 口説き文句が挨拶みたいになってた...。 はずなのに、急に先生が冷たくなったのには理由がある。 や、正確に言うと俺もよく分かってないんだけど。 今から一週間くらい前のこと。 自習室で勉強してて、外の空気が吸いたくなって、非常階段に出た。
2014-09-08 22:41:07
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《犬になりたい》 番外編-20 手すりにもたれて夕暮れの街を見下ろして、あー、本格的に夏だなぁ、なんて考えてたら、すぐ下から鼻をすするような音がした。 身を乗り出して覗き込む。 あれ...せんせー...？ え...あれ...泣いてる...？
2014-09-08 22:41:14
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《犬になりたい》 番外編-21 急いで階段を降りて...あと三段ってとこで目が合った。 先生は明らかに動揺してて、涙を指でぬぐって...。 逃げようとした。 「待って！」 階段を飛び降りて、腕を掴む。 「どうしたの！？」 「...どうもしないよ」
2014-09-08 22:41:23
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《犬になりたい》 番外編-22 「泣いてんじゃん」 「...泣いてないよ」 「なんで嘘つくの？」 そんなやりとりをしてる間も腕を引っ張って逃げようとしてて...。 強く手をひいて抱きしめた。 先生は俺の腕の中でしばらく暴れてたけど、ぎゅうっとしたら諦めたのか大人しくなった。
2014-09-08 22:41:30
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《犬になりたい》 番外編-23 俺は、先生が泣いてた...ことよりも、憧れのひとが腕の中にいるって事実が信じられなくて、ぽーっとしてた。 すげーいい匂い...。 なんか柔らかいし。 意外とちっちゃいんだなぁ...。 不謹慎にもそんなことを考えてたら、急に凄い力で押し戻されて。
2014-09-08 22:41:35
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《犬になりたい》 番外編-24 俺の腕を振りほどいて、顔も見ないでドアの向こうに消えてった。 多分、それから。 先生が俺を避けるようになって、前みたいな軽口にも露骨に困った顔をするようになったのは。 今日から夏休み。 一年ってはえーんだな。 生まれて初めてそう思った。
2014-09-08 22:41:45
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《犬になりたい》 番外編-25 夏期講習の初日。 ねーちゃんが適当につくった昼メシを食って、家を出た。 駅前に見覚えのある男がいて。 いつも散歩で会う、黒い柴犬を連れてる男。 「こんちは。何してんすか？暑いのに」 「あ...。お姉さんと、待ち合わせ」
2014-09-09 23:35:34