#完全ノープラン艦これ与太話 【リヴェンジェンス・フロム・ミッドナイト・アビス】 #1～#2

春魔解丼 @vespiking

#完全ノープラン艦これ与太話 【リヴェンジェンス・フロム・ミッドナイト・アビス】 #2 #KZNPLN

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『アアアア……アアアアアアーッ！』ビタビタと、壁に肌を打ち付ける音が響く。白い殻の中で、血が弾ける。『アアア！アアアアア！』とても嫌な音だ。卯月はそう感じ、苛立ちを募らせた。 #KZNPLN

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「オイッ！どうにかならねーのか」卯月は吼えた。熱の充満する機関室で、赤い蒸気が球状に爆ぜる。『アアアアーーーッ！』音と、叫び声は止まない。「無茶言わないで欲しいわ提督＝サン。応急処置にも『艦』が要る。貴女の底無し胃袋も、そろそろカラッポなのよ。艦を維持できない」 #KZNPLN

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クチャクチャとガムめいた何かを咀嚼しながら、己のリモート分離式艤装へ高慢に身体を預ける黒ドレスの深海棲艦がぼやく。「それじゃあ困るンだッピョン！この艦はうーちゃんの！最高のコレクションだ！どうにかしろデューカリオン＝サン！」「どうにかッて言われても、ネエ」 #KZNPLN

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デューカリオンと呼ばれた女は、機関室に鎮座する『白い殻』に手を当てる。「艦の中身を喰わせて繋ぐのも、もう限界よ。流石のアタシでもね、出来る事と出来ない事があるワケ。イヤなら、もっと喰ってよ。『お姫様』が満足するくらい、何もかも食い尽くして。ネエ？アバドン＝サン？」 #KZNPLN

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「その名で！私を！呼ぶなァッ！」卯月の右腕が触手に変じ、デューカリオンの首筋を狙う。デューカリオンはだが眉一つ動かさず、チョップでこれを止めた。胸に開いた４ツ目めいた亀裂が、ギョロリと卯月を睨み付ける。「アー。アー。面倒な女ね、アンタ」 #KZNPLN

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「『カンヘル』は未完成品よ。作動には相応のリスクが伴う。ましてギニアピッグに留まらず、本体に対して作動させるなんて。無茶苦茶よ、アンタ。無礼すぎなのよ。……『ニンジャ』ってモノを」卯月はバツが悪そうに触手を仕舞う。 #KZNPLN

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『アアア……飛龍＝サン……アアアアーッ！』悲鳴は一層、激しさを増す。「……総員伝達。ＵＡＶ特攻機を放て。我々は正式に、大日本帝国へ宣戦布告するピョン。……龍を、おびき出せ」踵を返した卯月の背を嬉々として眺めながら、デューカリオンは無線機をクルクルと弄んだ。 #KZNPLN

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太平洋中部海域より飛来した8機の深海型UAV特攻機は、大本営の防御システムによって悉く撃墜された。同刻を以て、大本営はMI海域を巡航する『冥王の艦隊』、並びに同艦隊に属する離反者ナグモ元大本営中将を国敵と定め、全面対決の意を表明した。 #KZNPLN

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飛来したUAV特攻機編隊は、特攻機として改造された艦戦と艦攻からなる混成部隊であった。大本営はこれを、不要な旧式機体を掻き集めた挑発用の捨て駒と解し、実際の戦力はこれを遥か上回るものであると想定。直近の帝都大破壊における武勲艦、北上へ出撃要請を下す。 #KZNPLN

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ミッドウェイ海域から飛来する、艦攻5機、艦戦3機の特攻機。この編成に込められた、大日本帝国に対するもうひとつのメッセージ。飛龍は北上から作戦の概要を聞き、激昂した。「アアアーーッ！畜生……畜生ッ！」飛龍は壁を強く打つ。拳に血が滲む。それでもなお、打つ。捨て鉢に。 #KZNPLN

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「飛龍……第二次……攻撃隊……。米空母、ヨークタウンへ……雷撃し……之を航行不能……未帰還……艦攻5機！艦戦3機！計8機！巫山戯るなッ！」飛龍は頭を抱え、呻いた。左手薬指の指輪が、煌々と輝く。飛龍は血の涙を流し、吼えた。「バカに！するなッ！アアアアーーーッ！」 #KZNPLN

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「……敵に回ったナグモ＝サンは元大本営で、現在の情勢に詳しい。重篤軍事マニアックでもあった。本拠地、特攻機の編成、そして、編隊はこの鎮守府へ、向かっていた。偶然とは思えない。敵は明らかに。飛龍を、挑発している。……どうする？」北上はおずおずと訊いた。 #KZNPLN

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「……わかってる。君が止めても、決して止まらない事くらい。……だから、これだけ。ひとつだけ、聞いて欲しいんだ」飛龍は溢れ出す殺意をどうにか堪え、じっと椅子に己を縛り付けた。「私は飛龍に、総司令になってほしいと思っていた。私より、きっと飛龍のほうが適任だって」 #KZNPLN

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「私はもう、君の姿を見る事はできない。君の怒り狂う姿も。君がこの椅子に座る姿も。私の眼には映らない。私はもう、君の代わりに戦えない。私の居場所はもう、殿にしかなくなった。本当は私が、前線に出たかったんだ。飛龍に任せたかったんだ」 #KZNPLN

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「飛龍。私を蹴落としてくれ。この椅子から。生きて帰って私から、この椅子を、奪ってくれ。……戦場に立てない艦にだって、戦う方法はあるんだ。だから、頼む。止められないのはわかってる。生きて帰って、この椅子に座ってくれ。私達には、君がまだ必要なんだ。……お願いだ」 #KZNPLN

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バタリ。執務室の扉が閉まる。北上は机に臥し、歯を食い縛った。「……ぽい……」隣で怯えていた夕立が、北上に擦り寄った。「霧島。飛龍。……この鎮守府が、みんなが……ばらばらになっていく……私は、あと何隻、失えば、いいのだろう……」北上は夕立の頭をかき抱いた。 #KZNPLN

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「……バカ」何度も聞いた、聞き飽きた罵声が、飛龍を呼び止める。「……何よ、欠陥戦艦」山城は飛龍の頬を打った。力一杯打った。飛龍はそれでも歩もうとした。山城は真正面から飛龍を抱き止め、応接室に引き摺り込み、ソファに叩き伏せた。「バカ！……スゴイバカッ！」 #KZNPLN

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「……死ぬわよ」「構わない」「よくない！」「ウルサイ！」山城は強く声を荒げた。「……なんでよ。なんでよ。なんで、どいつもこいつも、勝手に死ぬのよ。勝手に。勝手よ……」飛龍は山城を押し退けようとするが、戦艦の腕力は実際強い。 #KZNPLN

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山城は飛龍を押さえ付け、強引に唇を奪った。数秒の沈黙が、応接室を包んだ。飛龍の弱々しい抵抗をうけ、山城は悔しそうに唇を離した。「……やめてよ。こんな時に、そういうの」「……こんな時だからよ。死ぬじゃない。あんた」「やめてよ。縁起でもない」「あんたが決めた運命よ」 #KZNPLN

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今度は飛龍から、山城を抱き寄せた。艶かしい水音が、暗く冷たい静寂に染み渡る。2隻は激しく前後に動きながら、言葉もなく息を荒げ、船体を重ね合った。はだけた胸元を強く掴み、人為的に産み出された生命を燃やすように、激しく上下し、前後する。 #KZNPLN

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どれくらいの間、そうして2隻は求め合ったか。過去に何度も交わった筈の両者は、まるで初めて身体を重ねる生娘のように、感じた事の無い奇妙な快楽を貪った。それが何処から来るものなのか、両者は薄々感じながら、しかし互いに黙って前後した。 #KZNPLN

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キイ、と、応接室のドアがほんの少し、軋んだ。ソファ大きく軋ませ、生命を絞って上下する彼女らには、その音は届かない。夜は更ける。何者にも平等に、ただ無慈悲に。 #KZNPLN