稲川淳二のつぶやき怪談　2014年10月31日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

もう一人の彼が、 懐中電灯を向けて、 個室の中をゆっくりと照らし出してゆくと、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

“ん？！” 床から壁にかけて黒ずんだ大きな染みができているのが目に入った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

“えっ？！” 白いチョークで人の輪郭が描かれている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ここで、人が死んでたんだ」 と、Ａ子さんの彼が言った。

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隣の個室との仕切りの壁を、明かりが照らしてゆくと、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「やだァー！」 とＡ子さんが叫んだ。

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そこには、赤黒い手形をしたシミが、 下から上へ向かうかっこうで続いていた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

“ペタン・・・ペタン・・・・と壁を叩く音がしたのは、これだったんだ” と思った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

体中から一気に血の気が引いて、 ブルブルと震えている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

“じゃあ隣の個室から覗いていたあの女は・・・？” と思ったその時、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

Ａ子さんの彼が、 「お前が見たの幽霊だよ」 とポツリと言った。

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とたんに、 「ギャーッ」と悲鳴を上げて、 女の子二人が駆け出したんで、 男二人も後を追って、公衆トイレを出ると、 黄色いテープがちぎれて落ちているのを見つけた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「これ警察のテープじゃないか？」 と一方の彼が言った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あっ、らしいな」 とＡ子さんの彼が答えて、 近くに倒れている立て看板を拾い上げて見ると、 そこには、

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『この女性トイレの個室で、 若い女性の腐乱死体が発見されました。 情報をお持ちの方は・・』 と書かれていた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「Ａ子が見たのこの女だったんだ」 とＡ子さんの彼が言った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

クルマの前では既に彼女達二人が青ざめた顔で待っている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

急いで行って、ドアを開けると、 皆が慌てふためいて乗り込んだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

キーを差し込んで、ヘッドライトがつくと、 闇の中の看板を照らし出した。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それは一つのパネルに一字ずつ書き込まれて、 柵に打ち付けてあるもので、 『宮・の・森・特・別・区・域・駐・車・場』 となっているんですが、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それが『特別区域』の『域』という字が落ちて 『区』の字が、釘が抜けたのか、 ぶらんとぶら下がっていて、 『区』と言う字が、 凶悪の凶の字に見えた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

続けて読むと、 『宮の森特別凶（きょう）駐車場』 になったというんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「つぶやき怪談」いかがでしたか？

稲川淳二 @Junji_Inagawa

怖・楽しい時間を、楽しんで頂けましたでしょうか？ 喜んで頂ければ、何よりです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

不定期なんですが、 また「つぶやき怪談」やりますんで、 よかったら遊びにきて下さいね。