実花が転校するはなし

来夢さん続き待ってるねヾ(:3ノシヾ)ノシ
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鴨虫🫠 @kamocolle

@null 触れた指先に、心臓が移動した錯覚がする。 進むことも退くこともできない。 私たちの距離感って、どうだったかな。もっと近かった? それとも遠い? 久しぶりに会った幼なじみは、随分と大人っぽくなっていて、まるで初めて会う人のようだった。 でも、口調だけはあの時のままで。

2014-11-08 00:34:45
鴨虫🫠 @kamocolle

@null だから、どうしたら良いかわからなくなる。 昔のように話したら良いのか、そうじゃないのか。 そして今、なぜか暴れる心臓も、熱い背中も、動かない首も。 あの子は。 最初に反応してから、動く気配がない。だから指先は手に触れたままで。 「……なあ、美南」 「えっ、な、なに」

2014-11-08 00:36:21
鴨虫🫠 @kamocolle

@null ほんの少しの身動ぎ。 手のひらがスライドして――小指と小指が絡まるように、重なった。 それだけでさらに鼓動が強く、高くなる。まるで初心な子どもみたいだと、頭のどこかで思う。 「……あたしはさ、星を見に来たんだよ」 あの子の言葉は、それだけ。他はなにも言ってくれない。

2014-11-08 00:38:37
鴨虫🫠 @kamocolle

@null だけど、わかってしまった。 見た目が変わっていても、お互い大人になってしまっても、実花は、実花のままだった。 「私は違うから」 それが、無性に嬉しかった。私にとって、大事なことだったから。 「私はね、『実花と』星を見に来たよ」 絡んだ小指がきゅ、と締め付けられた。

2014-11-08 00:40:15
鴨虫🫠 @kamocolle

@null 「あのさあ」 私の小指は未だに絡め取られたまま。 一言だけ呟くと、あとは黙りこくってしまった。埒があかないので引き抜こうともがいてみたけど、許してくれず。結果、実花の方を振り向けない。 顔が見たい。 諦めて顔を上げて、空を見る。自然、とさりと頭が肩に乗ってしまった。

2014-11-18 21:27:20
鴨虫🫠 @kamocolle

@null 今日は雲もなく、空気だって澄んでいるから、街中の割には良く星が見える。しばらくそうしていると、今度は実花の頭が肩に乗せられる。僅かに間をおいてから、ちらりと横目を見ると、おそらく同時にこちらを見たであろう実花と目が合ってしまい、慌てて目を逸らした。

2014-11-18 21:28:52
鴨虫🫠 @kamocolle

@null 「……怒ってんじゃねえかな、って思ってたよ、ずっと。あたしは」 ぽつりと、実花が、言葉をこぼれ落とす。声が震えて聞こえたのは、気のせいだろうか。 なんだか、それが無性に可愛らしい気がして、吹き出してしまった。

2014-11-18 21:30:50
鴨虫🫠 @kamocolle

@null 「ぷっ……ばっかねえ、怒ってたに決まってるじゃない。私だけに転校黙っててさ。あの日、私が気付かなかったらどうしてたの? 今ここで、のこのこと姿を現せる?」 できる限り、脅してやりたいのに。言葉尻だけなら、辛辣なはずなのに。どうして声音が穏やかになってしまうんだろう?

2014-11-18 21:32:06
鴨虫🫠 @kamocolle

@null 「……でも、さ。今はここにいるから、許してあげる。仕方ないから」 「そっか。さんきゅーな」 もう一度横目で見ると、やっぱり目が合ってしまう。今度は逸らさずに、にやり、と笑ってやった。 小指が解ける。 あ、と思う間もなく、身を翻した実花に、肩を掴まれて――

2014-11-18 21:32:59