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「荒北さーん、お菓子ください!」 「はぁ?んなもん急に言われても持ってねーヨ、新開ンとこでも行ってきな」 「あはは、はーい、わかりましたあ~」
2014-10-31 07:56:12あと5分で荒北さんの休憩が終わる、っていうタイミングで俺のローラーのタイマーが鳴った。 「真波休憩入りまーす」 荒北さんはボトルを飲んでいる。 すぐ横で東堂さんが靴紐を結んでいた。目が合う。2人でゆっくりと、頷く。
2014-10-31 16:30:32荒北さんが立ち上がるのと同時に、東堂さんが伸び上がって持っていたメットを荒北さんに被せた。 「ッ!?っにしやがるいきなりィ!」 「ハッハッハ、これから外周だろう?メットはきちんと被らねばならんよ!」 「わぁってるヨ!これから取りに行こうと思ってたんだっつーの…くそ…」
2014-10-31 16:35:07荒北さんは顎紐の調節をしている。ざわめく室内練習場に黒田さんが入ってきた、途端にぽかんと固まる。荒北さんは首を傾げた。 「黒田?」 荒北さんの肩ごしに人差し指を口に当てた。隣で東堂さんも首を振っている。 「すんません何でもないス、外周、いってらっ、ふ…ッ、い、いってらっしゃい」
2014-10-31 16:40:16俺たちが各々愛車を引いてグラウンドに出ると荒北さんは新開さんと話していた。ビアンキに跨った荒北さんが何か言ってる。新開さんは左手でパワーバーを食べている。 会話を終えた新開さんがこっちに歩いてくる。俺たちに向かって親指を立てたから、それに親指を返してから荒北さんの背中を追う。
2014-10-31 16:45:26正門付近で福富さんが荒北さんに声をかけた。 「外周か」 「そ。今日はBコースでいんだろ」 「ああ…」 そこで視線を泳がせた福富さんと目が合う。隣で東堂さんが拳を突き出した。 「どした福ちゃん?」 「…なんでもない 。怪我には気をつけろよ」 そう言って主将は荒北さんの背を叩いた。
2014-10-31 16:50:37荒北さんのビアンキが消えていくのを見届けて、遅れてやってきた新開さんと合流。四人で再び彼を追う。俺の両隣の直線鬼と山神は、もう大爆笑を堪える気もないみたいだった。 俺も、緩む頬を抑えられないんだけど。
2014-10-31 16:55:34ハッピーハロウィン、計画通り! 今俺たちの数メートル先を駆ける荒北さんは、狼の形をしたヘルメット(特注)を被りサドルにもふもふの尻尾をぶら下げている。サイクルジャージは、今朝箪笥の1番手前に置いておいた茶色っぽいそれ。 トリック・作戦コード『知らぬ間に狼さん』!
2014-10-31 17:00:58意外と気づかれなかったですね〜 「ああ…ふっくく……荒北にしては、ヒ、すごく、ふふ、可愛らしい背中ではないか…っふはは」 「やべーな靖友、ははは、すれ違う奴らもぎょっとしてるの、笑える」 「狼は奴に似合っているな」 ざっと一周したら部室に呼んで種明かしですかね
2014-10-31 17:15:18「きょろきょろしだしたな」 「流石に周りがざわめいてるのに気づいたんじゃないか?」 自分がその原因なことには気づいてなさそうですね 「む、動くぞ」
2014-10-31 17:30:27Bコースは山がちなルートだから基本的にすれ違うのはウチの部員ばっかりなんだけど、普通に道路だから一般の人もちらほら見かける。 颯爽と山を駆ける狼に驚いた顔をしているお姉さんたちに、追い抜きざまに東堂さんがしいっと指を立てて新開さんが撃ち抜いた。
2014-10-31 17:35:22「もうすぐ一周だな」 「では俺は手筈通り先に部室のほうに行っておこう」 「俺も、正門のとこに立っとくよ」 ご武運を〜 「真波、離されそうだ。ペースをあげるぞ」 はあい福富さん!
2014-10-31 17:41:04学校前まで戻ってきた。正門前に立つ新開さんが手を上げる。 「靖友、部室寄っていけよ」 「まだ一周しかしてネェしもーちょい走ったらな」 「えーと、…寿一が呼んでるんだ」 「福ちゃん?なんだよ外周行く前に言えっての…」 じゃあ福富さん、俺たちも部室に行きましょうか。
2014-10-31 17:45:54「おお来たかあらき、ふは…っ!」 「アァ!?テメー人見ていきなり笑いやが…あ?」 東堂さんがそっと掲げた看板には『イタズラ成功!』と大きく書かれている。 「いたず、ら?」 そっと、新開さんが全身鏡を荒北さんの前に置いた。隣で福富さんが大きく頷く。
2014-10-31 17:56:14