外科系の専門家にこそ知ってほしい、凝固第XIII(13)因子と後天性血友病13

血液の専門家でもあまりよく知らない、XIII因子とその抗体による後天性血友病について。どマイナーだけど「こういう病気がある」とだけ専門外でも知っていてほしい。いつか、あなたの前にもこういう人がいきなり現れる可能性があります。
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枇杷 @loquat_priest

第XIII因子(F13)の話。血液凝固です。 フィブリノゲン(I)がトロンビン(II)に切断されてできたフィブリンは、その電荷と構造により速やかに分子同士が重合して、フィブリン塊をつくります。

2014-11-02 10:55:02
枇杷 @loquat_priest

この反応は、出血部位で活性化して凝集した血小板(一次止血)上でおもに起こり、血小板による血栓を糊で固めるように強化して、止血を安定化します(二次止血)。

2014-11-02 10:57:14
枇杷 @loquat_priest

血小板だけの血栓よりフィブリン塊は強力ですが、フィブリン同士を化学的に結合させ、フィブリンポリマーをつくって血栓をさらに安定化させるのがF13です。

2014-11-02 11:00:54
枇杷 @loquat_priest

F13の存在と働きは、下手すると血液の専門家でもよく知らないくらいマイナーな話です。まれにですが、これが不足すると血栓が強化されず弱いままの止血しかできないので、自然にあるいは外科的処置の後などに異常な出血をきたすことがあります。

2014-11-02 11:03:43
枇杷 @loquat_priest

ひとつは消費の亢進。大量出血やDICなどで凝固因子がすごく消費されると、他の因子はそうでもないのに、F13だけが不足することがあります。これは、F13の半減期が6-10日と凝固因子の中で最も長く、もともと少量しかつくられないためだそう。

2014-11-02 11:06:59
枇杷 @loquat_priest

問題なのは、F13が不足しても、PTやAPTTなど一般的に行われる凝固検査では異常が見られないこと。「もしかしてF13欠乏なのでは?」と疑って、F13そのものの抗原量や活性を測定しないと、不足を見つけることはできません。

2014-11-02 11:09:34
枇杷 @loquat_priest

単純な不足の場合、活性を測って低いことがわかれば、F13の濃縮製剤(フィブロガミン)という薬がすでにあるので、これで補充を行えば異常出血はピタリと止まることが多いそう。ただし、出血時には他の凝固系は活性化してることが多いので、入れすぎて血栓症に注意。

2014-11-02 11:12:16
枇杷 @loquat_priest

さらに問題なのは、F13に対する自己抗体で起こる、後天性血友病13(AH13)。FVIIIやFIXに対する自己抗体で起こる後天性血友病AやBは、珍しいとは言えそれなりに認知されてきてるし、PTやAPTTが延びるので見つけるのはさほど難しくない。AH13はそうと疑わないとまず無理。

2014-11-02 11:16:29
枇杷 @loquat_priest

AH13の問題点 (1)そういう病気があることが知られていない (2)一般検査で見つけることができない (3)F13の活性が低いことがわかっても、抗体検査が一般に普及してないのでできない (4)出血時はたいてい他科で診ている ため、診断が遅れやすく、しばしば致命的。

2014-11-02 11:20:33
枇杷 @loquat_priest

また、大学病院など大きいところでは、F13も院内検査で測るのだけど、抗原量しかみていなくて活性を測ってないのも問題だと。AH13では、F13の活性は著しく低下しているにもかかわらず、抗原抗体複合体として抗原量はそれなりに測定されてしまう。必ず活性を測ってほしいと。

2014-11-02 11:23:25
枇杷 @loquat_priest

治療はまだ確立していなくて、フィブロガミン投与、血漿交換、二重膜濾過など対症療法から、ステロイド、エンドキサン、リツキサンなどの免疫抑制療法が試みられています。

2014-11-02 11:29:21
枇杷 @loquat_priest

最近、山形大学分子病態学の一瀬教授を中心として、F13欠乏の全国調査が行われ、40数例のAH13症例の蓄積があるとのこと。抗体検査を含む精密検査も同教室で行っています。疑い例がありましたら、ぜひ相談を。

2014-11-02 11:31:02
枇杷 @loquat_priest

山形大学医学部分子病態学教室のサイト id.yamagata-u.ac.jp/MolPathoBioche… 後天性血友病13の説明と連絡先(PDF) id.yamagata-u.ac.jp/MolPathoBioche…

2014-11-02 11:34:07