Jシャルの愉快な珍道中5

従者の日記【@J_diary_】さんを読み直し用に(勝手に)まとめてみたその5 ※また編集します
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従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】白くてふわふわとした服、同じ素材の手袋と靴、そして頭巾にはウサギの耳を模した飾りがついている。ラッパを吹いている人物を見つけたと思った瞬間、物凄い速さで駆け寄ってきて身構えたが、正体はぬいぐるみが人間になったような見た目をした少女だった。こんな環境では浮いて見える。

2014-04-28 22:26:10
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【従者の日記】一体何を背負っているのかと思っていたが、彼女が背中の布地をよけると大きなぜんまいが現れた。これでは本当に玩具のようだ。僕たちに向かって突進してきたのは、ぜんまいを巻いてほしかったためらしい。自分じゃ手が届かないと言うが、これが切れたら彼女はどうなってしまうんだろう。

2014-04-29 22:04:35
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【従者の日記】とりあえず限界まで巻いておいたが、ほどけきるまでどのくらい持つのか、という質問に対して彼女は首を傾げるばかりだった。故郷には同じような姿の人びとが多くいたけれど、それぞれかかる時間は異なっているのだとか。ほどけきったらおしまいだから確かめられない、なんて笑っていた。

2014-04-30 22:44:23
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【従者の日記】彼女はとても人当たりが良いし、故郷には多くの友人がいて、互いにぜんまいを巻き合っていたのだろう。むしろそれが彼女の種族にとっての当然なんじゃないだろうか。誰もいないような土地にひとりで出てくれば命の危機にさらされるのは分かっていただろうに、どうしてわざわざ、と思う。

2014-05-01 22:19:02
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】彼女はどうしても、危険なことが分かっていても、外の世界を旅したかったのだと答えた。故郷のことが嫌いなわけではないけれど、知りたいことが沢山あるのだ、と。その気持ちはおそらくシャルル様に近いものがあって、改めて自分に言い聞かせた。旅は危険で、そして魅力的なものなのだ。

2014-05-02 23:21:30
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【従者の日記】ぜんまいを巻いてくれたお礼に、と彼女に細長い紙を渡された。カラフルな文字で何かが書かれていて、端が切り取れるようになっている。彼女の故郷で使えるチケットのようだが、その街がどこにあるのかも何のためのものかも分からないし、そもそも一枚しかない。まあ一応貰っておこうか。

2014-05-04 00:27:29
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【従者の日記】彼女が再びラッパを吹き始めると、どこからかあの白い小さな生き物が現れて肩に乗った。友達になったの、なんて言っているということは、今後は一緒に旅をするのだろう。ぜんまいを巻かないと生きていけない彼女のために、走り回ってひとを探す役割を貰ったらしい。良かった、と思う。

2014-05-04 22:30:28
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【従者の日記】白いふわふわの上に白いふわふわが乗っている、そんな彼女の後ろ姿を見送って、僕らも「壁」に向かって進み出した。あの様子だったら、これからきっと良い関係を築いていけるだろう。彼女のラッパの音が完全に聞こえなくなる頃には、地面の色が変わってきて、少しずつ緑も見え始めた。

2014-05-05 23:21:54

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従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】「壁」を越えた途端、むわっとした熱気に全身を包まれた。南のほうでよく見かける、背の高い植物が生い茂っている。すぐ隣のブロックは乾燥した土地だったというのに、こんなに差があろうとは。シャルル様の身体が心配だ。湿気で服が肌に貼りつくようで、気持ちの良い暑さではない。

2014-05-06 23:31:03
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【従者の日記】ここの鳥はやたらと派手な色をしている。鳴き声はやかましい。しばらく歩いても目に入るのは珍しい植物や鳥ばかりだが、この場所に人間は住んでいるのだろうか。村か何かないかと探したところ、遠くに細く煙が立っているのが見えた。あれを目印にして行けば、誰かいるかもしれない。

2014-05-07 22:44:18
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【従者の日記】ひとりの女性に出くわした。最初は、向かってくるものが人間であると気づかなかった。というのも、彼女は巨大な獣を背負って引きずっていて、まるで獣そのものが二足歩行でこちらに向かってきているように見えたからだ。狩りの後といったところか、彼女の褐色の肌は血にまみれていた。

2014-05-08 22:11:50
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】大収穫だし人数は多いほうが楽しいから一緒に、と誘われて、僕らまでご馳走になることになった。何の獣の肉かはよく分からないけれど、新鮮なのは間違いない。美味しいのならそれでいい。何もしないのも気が引けるので背負うのを代わろうかと申し出たが、笑いながら無理だと一蹴された。

2014-05-09 22:13:36
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】やたらと布面積の狭い服は彼女だけでなく村の女性共通のようで、正直どこを見て話すべきか悩むのだが、皆さっぱりとした性格をしているおかげで取っつきやすくはある。男女問わず子供を大事にする文化があるのか、シャルル様のことを色々と気にかけてくれるのも好感が持て過ごしやすい。

2014-05-10 22:06:52
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】焼いた肉につけるソースは甘いような酸っぱいような風味があって、おそらく何かの果物が使われているのだと思う。好みが分かれそうではあるけれど、僕は平気だし、シャルル様がにこにこしながら食べていたのでよかった。美味しいと思って出してくれたものは、美味しく食べたいものだ。

2014-05-11 23:12:10
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】楽器を持って集まってきた人びとが陽気な音楽を奏で始めると、食事を終えた者たちが次々に焚き火を囲んで踊り出した。騒ぐのが好きなのだろう。同じくらいの歳と思われる少女がシャルル様の手を取って輪の中に引き入れていた。僕は見ている側だったが、顔になにやらペイントを施された。

2014-05-12 22:15:50
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】良くしてくれた相手に酒を勧められて飲まないのも失礼かと思ったが、飲んだらもっと失礼な結果になるのは目に見えていた。この場にはシャルル様だっているのだ、断らざるを得ない。何か描かれた自分の顔がどんなことになっているのか分からないけれど、これも受け入れてくれた証だろう。

2014-05-13 22:58:47
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】大勢に見送られて出発した。あくまで客人としてもてなしてくれているのだと分かっていても、ここの人びとは全員がひとつの家族のようで、まるでその一員として迎え入れられているようだった。シャルル様が似合うと言ってくださったペイントをすぐに落としたのは、区切りをつけるためだ。

2014-05-14 22:48:53
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】楽しむことは疲れることでもあって、この土地の慣れない暑さにシャルル様もお疲れ気味のようだった。ゆっくり行けば行くほどブロックを抜けるのには時間がかかってしまうし、悩みどころだ。ここに来たのが真夏でなくてよかった。これ以上暑いとなると、僕のほうもバテてしまいそうだ。

2014-05-15 22:35:59
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】見たことのある形をした虫はいるものの、どれもこれも僕の記憶よりも数段大きくて、本当に同じ種類なのか疑わしいくらいだ。そして大半が毒々しい色合いをしている。見た目だけなら構わないが、実際に毒があるのなら気をつけなくてはならない。シャルル様に近づくものは叩き落とそうか。

2014-05-17 00:58:27
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】あと少しで抜けられるだろうか、というところで巨大な獣と鉢合わせした。例の、女性が背負っていた獣と同じ種だ。出会ってしまった以上襲いかかってくるものと思いナイフを手にしたが、獣は後ずさりをするばかりで、飛びかかることも逃げることもしない。大人しい性格なのだろうか。

2014-05-17 22:25:49
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】ことばとしてではないけれど獣に話しかけられて驚いた。こちらから襲いはしない、狩りが目的なのではなく通りすがりの旅人であるならば見逃してほしい、とのことだ。こんなに高い知性を持った種とは思わなかった。食べるため、必要として狩るのであれば、それは関係のないことだろうか。

2014-05-18 22:04:00
従者の日記 @J_diary_

【従者の日記】両の手のひらを見せて敵意のないことを示し、慎重に獣と擦れ違った。しっかりと礼を言われた。この種を食用に狩るあの村の人びとを責めようとは思わないし、僕も食べた身だし、他の獣の肉も食べる。どこからが「食べてはならない」ものに入るのか、僕にはよく分かっていないのだと思う。

2014-05-19 22:29:54

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