ののやの人外タイバニまとめ

いままでに書いた人外アポロントリオssのまとめ。おもいつくままにかいた欠片ばかりです。
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小話 @ryokurintei

床に落ちていた血を指先で拭い取り、ためらいもなく口に入れる。みるみる険しくなる眼差しに予想は確信へと変わった。「虎徹さんの血です」呻くように呟いたバーナビーの瞳が森のような深い緑に変わる。「これだから人間は…!」「なあ、どうすんの?」「決まってるでしょう?」 #人外アポロントリオ

2014-05-01 00:29:02
小話 @ryokurintei

肝の小さい者は震えあがるような視線に、ライアンはひゅうと口笛を吹いて返した。久しく怒る姿を見せなかった男が、どうやら本気で腹を立てているようだ。「取り戻しにいきます」「だよなあ」肩を竦めるとライアンは両手を地面について軽く身体を震わせた。「ったく、手のかかるオッサンだぜ!」

2014-05-01 00:29:51
小話 @ryokurintei

その姿が陽炎のように大きく揺らいだかと思うと、一瞬にして本性に戻る。時間にしてほんの瞬きする間の事。本物の獅子より一回りも二回りも大きい、燃えるようなたてがみを持つ黄金の獅子が薄暗い部屋の中に現れた。バーナビーは臆することなくたてがみを掴むと、その背にひらりと飛び乗った。

2014-05-01 00:30:34
小話 @ryokurintei

「行きますよ、ライアン」『おう』妖を統べる百獣の王の息子は、これでもかとばかり辺り一面に轟き渡る咆哮をあげると、壁を蹴破り夜の闇へと躍り出た。 大きさからは想像できないほどの軽やかさで 着地を決め、すぐさま全力で走り出す。『落ちんなよージュニア君!』「余計な心配は結構!」

2014-05-01 00:31:04
小話 @ryokurintei

高位の妖であるライアンの脚力は並大抵ではない。唯のヒトならとっくに耐えかね手を離しているだろう風圧の中、バーナビーは妖力を解放し必死で虎徹の気配を追った。虎徹の身に何かあれば、と考えるだけで息が止まる。頭を振って悪い想像を払い落とすとバーナビーは怒りに満ちた瞳で前方を睨みつけた。

2014-05-01 00:31:37
小話 @ryokurintei

※人外アポロントリオss

2014-05-01 13:56:51
小話 @ryokurintei

「なぁ、アンタらっていつから一緒にいんの?」唐突に投げられた問いに虎徹は目を瞬かせた。枯木を火にくべつつ遠い記憶を辿る。「百年か二百年か…それ以上かもな」彼は膝の上で安心して眠る兎を一撫でして目を細めた。「気づいたら隣にいるのが当たり前になってた。いつからなんてわかんねえよ」

2014-05-01 13:56:06
小話 @ryokurintei

友恵さんと妖虎徹さんの別れの時。 夢十夜・第一夜をお借りしました。ハマりすぎて!

2014-05-01 22:26:07
小話 @ryokurintei

私が死んだら埋めてね。大きな真珠貝で穴を掘って、そうして星の破片を墓標に置いてね。そうして百年待っていてね。必ず逢いに行くから。 黒い睛に映った自分の影が揺れて流れ落ちる。長い睫の間から涙が頬に零れた。腕の中に柔らかな微笑みだけを残して、彼女は死んだ。

2014-05-01 22:24:20
小話 @ryokurintei

彼女の願い通りに埋めると、側に座って陽が上り沈むのを、ひとつ、ふたつ、と数えた。数えながら、これからこうして百年の間待つんだな、と思った。これで少なくとも百年の間は余計なことを考えなくて済む。東からのっそり上った大きな日が黙って西へと沈むのをまた数える。みっつ。

2014-05-01 22:24:52
小話 @ryokurintei

そうして上っては沈む日をいくつ数えただろう。数えても数えてもまだ百年は来ない。頭上を通り過ぎる日を幾つ見送ったのか、もうすっかりわからなくなったある日、石の下から斜に自分の方へ青い茎が伸びてきた。見る間に長くなって胸の辺りで止まると茎の頂きのすらりとした蕾がゆっくりと花開いた。

2014-05-01 22:25:17
小話 @ryokurintei

首を伸ばすと零れた雫で白い花弁がふるふると揺れる。柔らかな花びらにそっと口づけると、甘やかな香りに包まれた。花から顔をあげると遠い空に暁の星が瞬いていた。百年はもう来ていたんだ、とこの時初めて気づき声をあげて泣いた。

2014-05-01 22:25:38
小話 @ryokurintei

百年たって大泣きして、ようやく自分の気持ちに整理をつけて立ち上がった妖虎徹さんはそうして旅にでた先で、傷ついた兎の妖と出逢うのでした。 そうして、新たな2人のお話が始まるのです。

2014-05-01 22:31:38