茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第1357回「selfie（自撮り）で、笑わなくてもいい」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート１３５７回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。今回は、このところ、気になっていたある問題について。

茂木健一郎 @kenichiromogi

スマホが普及して、selfie（自撮り）がとても簡単にできるようになった。私も、その場にいた一つの証しとして、自撮りをすることが多いし、それをツイートすることも多い。ところで、時々、ツイッターなどで、「茂木さん、笑って」とか、「笑顔笑顔！」みたいな反応があって違和感を抱いていた。

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selfie（自撮り）をする時に、笑うべきかどうか。ぼくは、別に笑わなくてもいいのじゃないかと思う。それよりも、他人に対して、selfie（自撮り）する時は笑え、とリクエストすることが、失礼に感じる。なぜか、と時々考えていて、昨日ワシントンＤＣを歩いているときに、「ああ」と思った

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笑顔って、笑いたい時に笑えばいいんじゃないかと思う。そもそも、作り笑顔は本当の笑顔と区別できる。目の周りの筋肉は、随意筋ではなく、ほんとうに笑わないと、収縮しない。「目が笑っていない」という言い方は、本当なのだ。selfie（自撮り）の時に、笑うのは、不自然だと思う。

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想像して欲しい。ぼくは、ワシントンＤＣの住宅街を走っている。あっ、この風景きれいだな、と思って、立ち止まる。それで、selfie（自撮り）のスマホを向ける。その時、男がいきなり立ち止まって、瞬間湯沸かし器のように、にこっと笑うって、どう考えても不気味ではないだろうか。

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selfie（自撮り）でも、自分の親しい人と一緒にツーショットやスリーショットで写る場合は、そのような社会的な状況でもあるし、笑うのが自然だと思う。しかし、ひとりで街を歩いている時に、selfie（自撮り）をする時には、笑うことを促す、社会的な状況がそもそもない。

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以上のような理由で、selfie（自撮り）に対して、「笑って」などと他人にツイッターなどでリクエストすることは、適切ではないとぼくは考える。もっとも、このように書いても、そのようなリクエストが今後とも来るだろう、ということは当然予想されるわけで、それはそれでかまいません。

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ところで、この、「selfie（自撮り）で笑う」ことをリクエストするみたいな雰囲気は、尾木ママが言っていた、「挨拶ができる」学校の雰囲気に似ている。いろいろな学校に行くが、生徒が、誰かの顔を見ると「こんにちは」と大声で挨拶する学校があって、あまり良くないと尾木ママは言う。

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そういう学校では、校長先生と尾木ママが廊下を一緒に歩いていて、通り過ぎる生徒が、みな挨拶する。隣で、校長が、「挨拶していいでしょ」みたいなことを言うと、尾木ママは、「そんなに良くない」みたいなことを言うのだという。尾木ママの気持ちが、とても良くわかるような気がする。

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挨拶も笑顔も、そのような気持ちになった時にするのが一番自然なのであって、それを強制するのは、かえって、人間の何かを損なうと思う。挨拶する時も、しない時も、笑顔の時も、そうでない時もある。その自然体の中で、挨拶をしたり、笑顔になるのが、一番素晴らしいことなのではないか。

茂木健一郎 @kenichiromogi

最後に、ツイッターやフェイスブックで、他人に何かを指摘する時に、文末を、「・・・・ですよ？」とするのが時々見受けられて、一部流行っているようだが、これも、自分の認識を他人に押しつけるようで、余り好きではない。文章は、その人の認識の癖を如実に表すものだから、こわい。

茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート１３５７回「selfie（自撮り）で、笑わなくてもいい」をテーマに、１０のツイートをお届けしました。ワシントンＤＣは、朝の６時５０分になりました。