FF6二次創作SS:鎮魂のアリア~7回目

ここから後半に入ります。…ちなみに、ピクシブに上げた分では次に更新予定の箇所までが中編でした。 第一回目:http://togetter.com/li/707429 前:http://togetter.com/li/742392/次:
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みなみ @minarudhia

30秒もしないうちに鍵を開けるその手腕は、相も変わらず彼を『ドロボウ』と呼ばせしめるのにふさわしいものだった。 しかし、その間に。 ロックは、戸の向こうでかすかにガラスの砕ける音を聞いた。

2014-11-22 22:39:55
みなみ @minarudhia

途切れるソプラノ。 開く戸。 一行が中へ押し入ると、そこには。 「やっぱり、あの人だ!!」

2014-11-22 22:40:44
みなみ @minarudhia

リルムが指差した先には、黒いフードとローブを纏った高身長の人物。 そして、その周囲を、みずぼらしい格好の男達が手に得物を構えて囲んでいた。 よく見れば、人物の足元には奇妙な図式の魔法陣が描かれており、四方を囲むように立てられた蝋燭が何本か蹴散らされてしまっている。

2014-11-22 22:42:23
みなみ @minarudhia

少し低い位置にある割れたガラス窓が、風でカーテンをバタバタとあおっていた。 「おうぁあああ!」 男の一人がローブの人物めがけてナイフで斬りかかっていった。 稲妻のような速さでローブが翻された。 しゅっと薙ぐナイフの刃がローブをわずかに裂く。

2014-11-22 22:44:02
みなみ @minarudhia

翻ったローブの人物に別の男が後ろから組みつこうと走って来た。 「!」 身長こそ足りないが、後ろから組みつくことに成功する男。 「助けるぞ!!」 それを見たロックを先頭にマッシュ、セリス、ティナとセッツァーが駆けだした。

2014-11-22 22:46:38
みなみ @minarudhia

なぜ、助けると言ったのか。 その理由はロック自身にはわからない。 「ぁぁぁああぁぁぁああ!」 ローブの人物に向かってもう一人が正面から切りかかってくる。 それに対してローブの人物は。 組みつかれるに任せ、裾がまくられるや白い脚が前方の男の下あごを蹴りあげた。

2014-11-22 22:49:08
みなみ @minarudhia

「ごふっ」 何かが砕ける嫌な音と共に男があごをおさえて倒れ込む。 そしてローブから手を出したかと思った時、後ろから組みついた男から絶叫があがった。

2014-11-22 22:51:56
みなみ @minarudhia

――その両手は妙な方向に曲がっていた――組みついていた男を蹴り飛ばし、身を翻したローブの手は白銀の美しい鱗に覆われ鋭く太い三本の爪を備えているように見えた。 目の錯覚だろうか。 そう思った時、すでにロックは男の一人に向かって切りかかっていた。

2014-11-22 22:53:29
みなみ @minarudhia

続いてマッシュがナックルを装着した拳で一人に殴りかかり、セリスとティナの両人が剣で倒すのが見えた。 それを少し離れた所から見ていたのがストラゴスとリルムだった。 魔力を失った二人はただの老人と少女でしかない。

2014-11-22 22:55:12
みなみ @minarudhia

そのそばで立ちはだかるインターセプターが激しく毛を逆立たせ、敵に向けて牙をむき出しにし威嚇していた。 「一体何だね!?」 物音が聞こえたらしくダンチョーが入って来た。 そして、目の前で繰り広げられている戦いに驚き慌てふためく。 「な、何だねこれは!?」

2014-11-22 22:56:57
みなみ @minarudhia

「ダンチョーどのは急いで出るゾイ!」 リルムを後ろでにかばい、杖を構えたストラゴスがダンチョーに向け声をかける。 これにダンチョーはすぐ扉の裏へと引っこんだ。 ローブの人物はナイフを避け、流麗な動きで宙を舞う。

2014-11-22 22:58:57
みなみ @minarudhia

二本の白いしなやかな脚が弧を描き音もなく着地すると、近くにいた男に向かって腕を突きつけた。 「ぐあっ」 掌から不可視の力でも発せられたのか、男の身体が後ろへ吹き飛び壁へ叩きつけられてそのまま静かになった。 ―――静かに、なった。

2014-11-22 23:01:27
みなみ @minarudhia

「これで大方片付いたが…こいつら、一体」 「そ、そそそ、それより」 床に倒れた男達を見降ろしながら、つかれる荒い息。 ロックを含め戦闘していた各々がダンチョーの存在にやっと気付いた。 ダンチョーは震える手で指差しながら叫んだ。 「そ、そこの人は誰だね!?」

2014-11-22 23:03:47
みなみ @minarudhia

ローブの人物は何も言わず立っていた。 その奥に光る眼がいつまた、紅いおかしな光を放つかとロックとセッツァーは警戒態勢をとる。 一方で、ティナは妙に気圧されるものを感じていた。

2014-11-22 23:05:15
みなみ @minarudhia

今や普通の人間と同じ存在となっていても、幻獣と人のハーフとしての彼女の鋭い感覚は面影を残し消えていなかったようだ。 ティナは、目の前に立つローブの人物から、非常に強力な力を感じ取っていたのだ。 …三闘神やそれに取り込まれたケフカからすら感じたことのない、強大な力を。

2014-11-22 23:06:04
みなみ @minarudhia

「おい、あんた」 セッツァーが前に進み出た。 ローブの人物は立ったまま、彼の方を見据えた。 「そろそろ隠し事もここまでにしな。役者は揃ってんだ。そっちが知ってる本当のこと、この際全部バラさせてくれてもいいんじゃないか。マッシュの事も。なあ―――トンボさんよ?」

2014-11-22 23:08:03
みなみ @minarudhia

「!?」 「と、トンボ!?」 マッシュが驚いてローブの人物を見つめる。 と、後ろから一人男が立ち上がった。 「! 危ない!」 ロックの言葉にローブの人物は振り向く。 そして、先程の男同様に、片腕を突き出し、掌から不可視の衝撃波を叩きつけた。

2014-11-22 23:09:48
みなみ @minarudhia

「ぅあっ!」 男が吹き飛んだ刹那、風圧がフードを吹き飛ばす。 フードが飛んだことで溢れるように外へなびき、流れるは漆黒の艶やかな髪。 露わになったその顔を見た瞬間、セッツァーを除く全員の口から声が漏れた。 「トンボ…!」

2014-11-22 23:11:18
みなみ @minarudhia

マッシュの呟きに、黒髪銀目の女――トンボは、溜息をついた。 「……参ったわね。騒ぎを起こされる前にこの魂鎮めを完遂させなければいけなかったのに、思わない所で邪魔が入ってしまうなんて」 「魂鎮め…あれは、竜の言葉によるものですな?」

2014-11-22 23:13:48
みなみ @minarudhia

ストラゴスの問いに、トンボは彼の方をつと見た。 「あなたは…?」 「失礼した。サマサの村のストラゴスという者じゃゾイ。マゴがあなたに助けていただいたようで、ワシから礼を言わせていただきたい。…しかし。まさか、伝承が真とは…」

2014-11-22 23:15:21
みなみ @minarudhia

「伝承って、どういうことだじいさん?」 「その伝承は、彼女が教えてくれるじゃろう。…トンボさん、あなたの正体を見せていただきたいですゾイ。…“輝竜”としての正体を」 ストラゴスの言葉に、トンボは沈黙を守った。 が、それも一瞬のことで、彼女の全身が光に包まれる。

2014-11-22 23:17:03
みなみ @minarudhia

「うっ!」 「わっ…」 光による眩しさに全員が目を庇う。 光は30秒ほど辺りを包んだ後、徐々に収まっていった。 眩しさによる視界の遮蔽がなくなったところで、全員は目を庇う腕や手を下ろす。

2014-11-22 23:18:41
みなみ @minarudhia

トンボが立っていた場所にいたものは、四本足で立ち大きな翼を備えた、白銀に光り輝く馬のような体型の竜だった。 その姿を見たロック、セリス、マッシュが声をあげた。 「あ、……ああっ!?」 「お前っ…!!」 「ふぃ、フィスト!?」

2014-11-22 23:20:35
みなみ @minarudhia

最後に名前を叫んだマッシュに、ロックとセリスが振り向いた。 「お前、彼女と会ったことあったのか!?」 「ほれ見ろ、やっぱり覚えがあったんじゃないかマッシュ。…しかし」 セッツァーが溜息をついた。

2014-11-22 23:23:22