【アイドル・ポリス26】#7

イベント重点エピソード。もっと軽く仕上げようとしたらとても長くなった。でもよくカラテした。ヨロシクオネガイシマス。
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ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「ンアーッ!」シズカの口元を黒い雫が伝う!「イヤーッ!」「イヤーッ!」シホの追撃ブローを辛うじて腕でガードし、シズカのチョップ突きがシホの喉元を刈り取りに行く!シホは体を大きく逸らし回避!「イヤーッ!」その反動で頭突きを仕掛けた!「ンアーッ!」直撃!二人がよろめく!

2014-11-25 22:00:27
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

そしてすぐさまワン・インチ距離での絶え間ないカラテの応酬!だがそれはワザマエからはほど遠い武骨な力任せのイクサだ。殴られては殴り返す子供の喧嘩めいて。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

2014-11-25 22:05:09
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ステージのスクリーンに今までのシホのイクサの断片がノイズ混じりで映される。そこに暗いライトに照らされ、殴り合う影が浮かぶ。「イヤーッ!」「ンアーッ!」シズカの痛烈なランスキック!シホがワイヤーアクションめいてステージ端まで吹っ飛ぶ!シズカがスプリントを開始!「ヌウーッ!」

2014-11-25 22:10:11
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

転がり起きたシホも駆け出す!そしてカラテを構える間もなく激突!「ゴボボーッ!」「アバッー!」シズカが喀血し膝を着く。シホはもんどりうって倒れ伏す!ふらふらと立ち上がったのはシズカ!もはやメンポはどこかに吹き飛び、威圧的なマッポコートはただの黒い襤褸切れめいている。

2014-11-25 22:15:07
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「アバッ…アアア…」シホの目に強烈な殺意の白い炎が燃え上がる。「「アアアアア!」」足元に黒い血だまりを作りながら両者はカラテを奮い続ける。モノクロのステージは不純を許さない。信念も動機も色を失い、あるのはただ生か死かだけ。ナムサン…二人はマッポーカリプスの日まで闘い続けるのか!?

2014-11-25 22:20:11
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ぼんやりとした観客席の亡霊達に見守られ、また血飛沫が舞う。シホは朦朧とした意識の中で拳を撃ち付ける己を自覚した。(((私は何の為に…)))相打ちクロスカウンターめいて顔面に衝撃。崩れかけるアイドルのニューロンに声なきコールががなり立てる。殺せ。殺せ。殺せ。「…コロス!」

2014-11-25 22:25:05
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

シズカの目の中にも理性は感じられない。ステージの上でブザマに踊り狂うアイドル。…それが彼女の望みだったのか?意識はザラついたノイズに掻き消され、纏まることなくモノクロ分解されて虚空に消えた。燃える白い光だけが彼女の全て。シホのニューロンから最後の矜持が消え去ろうとした時。

2014-11-25 22:30:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ギャアアアアアアアン!無音の劇場をけたたましいエレキギターの騒音が切り裂いた。スピーカーからドッと音楽が流れ出しシホの耳をつんざく!それは彼女達『国家機密』のデビュー曲!シホは目を見張り辺りを見回した。一体何が起こったというのか!?…おお、ゴウランガ!スクリーンを見よ!

2014-11-25 22:35:07
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ノイズに塗れたスクリーンに一つ、ギターを構え片手を高々と挙げている少女の影。掲げたるはキツネ・サイン!「…ジュリア=サン」ゴウ。スクリーンの奥から紅蓮の炎が吐き出され、ステージを蹂躙した。白黒の劇場が真紅に染まっていく。シズカの姿が飲み込まれても、シホは影を見つめていた。

2014-11-25 22:40:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

影は動くことないまま炎に焼き尽くされた。それが彼女の最後のライブだった。シホの為の、彼女達だけのステージ。モノクロの舞台が焼け落ちる。シホは駆け出した。未練を焼き焦がす炎に追われ、客席の亡霊が焼失していくのを横目に劇場の扉に肩口からぶつかり、色溢れる世界へ躍り出た。

2014-11-25 22:45:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「イヤーッ!」シホの拳がシズカの顔面に直撃した。「ンアーッ!」ワイヤーアクションめいてシズカが吹き飛ぶ。彼女のニューロンが加速し、流れていく景色がゆっくりと目に焼き付く。今際の際のソーマト・リコール現象だ。元の自室。唸るような音楽の奔流。幾重にも響いている。いったいどこから?

2014-11-25 22:50:09
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

シズカの背後、巨大モニターの全ての画面には、監視カメラ映像は映っていない。そこには擬人化されたピンクのウサギ、黒いネコ、そして赤いキツネのキャラクターが描かれたロゴが映っている。『国家機密』のイメージだ。画面一つ一つから大音量の楽曲が流れ出している。何者かのハッキングか。

2014-11-25 22:55:05
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

CRAAASH!シズカの背がモニターを突き破り、夜の街へ吸い込まれていく。彼女が愛した夜景だ。「サヨナラ!」爆発四散の音は街を揺する歌の波に掻き消された。シホは砕けた窓枠から街を見下ろした。街中から歌が聴こえる。この世の不条理と不屈を謳った曲が。間違いなくアンナの仕業だろう。

2014-11-25 23:00:17
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

今宵、一人の独裁者を除いた。それは無気力な人々の解放と成り得るだろうか。彼女達の歌は世界を目覚めさせることが出来るだろうか。答えは否だろう。それでも彼女は果たした。曖昧な世界から白と黒を切り取ったのだ。シホは街を見た。人々が生きているネオサイタマの街だ。

2014-11-25 23:05:05
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ピガー。奇跡的に無事だった通信機が鳴る。アンナからの通信だ。シホは応答ボタンを押そうとして、暫し躊躇った後に窓から投げ捨て、もはや誰のものでもない部屋を後にした。

2014-11-25 23:10:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

……『安い。実際安い』『回していますか?回さなきゃ当たらない!』『アメ。もっと欲しいですね』爆発事件、ハイデッカー長官事故死などの騒動があったにも関わらず、翌日にはネオサイタマは不自然なほどにいつも通りだった。無関心の原因の一つには、被害が無人物件ばかりという点が挙げられる。

2014-11-25 23:15:10
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ハイデッカー崩壊の際にはネオサイタマ警察が速やかに対応し、街にカオスが蔓延するのを食い止めた。 市民の多くは39課が縦横無尽に治安行為重点しているのを見掛けた事だろう。それはあくまで日常の延長であり、一晩の騒動で何かが変わることはない。空虚な電飾に押し潰されて空を仰ぐ者はいない。

2014-11-25 23:20:18
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ウシミツ・アワー。ライブハウス『和三盆』は既に解体工事が始まり、数日の内には更地に変わっているだろう。シホは隣接する雑居ビルの屋上から見下ろしながら考えた。散々迷った挙句、最後はやはりここに辿り着いた。あの晩からどれくらい経っただろう。そう長くはないはずだ。遥か彼方と思えても。

2014-11-25 23:25:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

結局アンナには会えず仕舞いだった。礼が言えなかったのが心残りだが、仕方がない。復讐は終わった。もう生き永らえる必要も無くなった。終わったのだ。何もかも。シホは己の最期の場に、同じように存在意義を失くしたライブハウスを選んだ。ここにシホ・キタザワの全てが詰まっているからだ。

2014-11-25 23:30:11
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

スカートの中の銃の重さを確かめ、シホはライブハウスに飛び移ろうとした。その足が止まる。シホのアイドル視力は暗闇に少女を見出した。その頬を腫らした茶髪の少女は、ささやかな花束をライブハウス前に置くと建物を見上げた。シホのアイドル記憶力はすぐにその人物を探り当てた。

2014-11-25 23:35:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

まだシホが『国家機密』のメンバーと歌っていた時、その少女はいつも最前列で叫んでいた。一度だけ会話をしたのを覚えている。上気した顔で歌が好きなのだと語っていた、あの少女だ。少女は決意的な表情で建物にキツネ・サインを掲げると、くるりと踵を返し去って行った。シホは立ち竦んだ。

2014-11-25 23:40:10
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「…そっか」まだ、終わっていなかった。キツネの子は死んでいない。彼女達がいる限り、シホ達が込めた歌の力は生き続けるだろう。そして、それを守ることが出来るのは…「…私でいいの?」シホは自問自答した。答えはゼンモンドーめいて帰って来ない。ただ胸に灯る熱い炎が背中を押す。「…あれは」

2014-11-25 23:45:05
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

闇の中に更なる人影あり。カメラを構えた不審な影が去り行く少女をストーキングしている。その者が纏うのは…ナムサン、アイドル装束ではないか。マフラーの奥で優しく緩んでいたシホの口元が引き締まる。そうだ、まだ何も終わってはいない。全てはここから始まった。シホは決断的に駆け出した。

2014-11-25 23:50:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

右目にジゴクのサイリウムめいた白い灯が輝く。「イヤーッ!」シホは飛び上がり、ネオサイタマの夜に飛び込んだ。

2014-11-25 23:55:04