ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/12/03

げん＠姐さん @guru_gene

#twnovel 夏の義務のように流行りの水着を買って海水浴場へ向かう。目的は多分、泳ぐためじゃなかった。海の家は温いビールを流し込む酒場。あの日会った彼が運命のひと、だなんて言わない。だって彼の全てを見たはずなのに、覚えているのは触るとひやりとするメタルフレームのメガネだけなの

miminari_ @miminari_

マンションの屋上で太極拳をやっていると、その動きに合わせて街並みが整理され始めた。呼吸に合わせて醜い場所と美しい場所が分別されていく。最後に長く息を吐き出すと、ひと塊りになった醜いエリアが東京湾に雪崩落ちていった。清々しい朝。邪魔者が消えた街を歩く。 #twnovel

layback @laybacks

30年という長い眠りから目覚めてみると世界は殆ど変化していなかった。ただ一つのことを除いては。男性がみな女性の背に二人羽織の体で張り付いているのだ。不思議に思った私は道行く女性に尋ねてみた。「いまや男性は女性のブラジャーとして乳を支える役割しか果たしていません」 #twnovel

layback @laybacks

「いまや男性は女性のブラジャーとして乳を支える役割しか果たしていません」「なんということだ。ではパートナーが貧乳の場合はいったいどうするのですか」私がそう訊くと女性は苛立たしげに言った。「揉むのです」去り際彼女の後ろで振り返った男性は悲しげな微笑みを私に見せた。 #twnovel

クリントン大西 @klinton_onishi

#twnovel 予言者女子高生。未来のことをことごとく当てる。ただし予言は絶対なので、どんなにあがいても不幸を防げない。幸せな予言もするが、そんなの先に教えられたら台無しだ。彼女は発想を変え『絶望屋』に鞍替えした。予知によって相手の楽しみと希望を奪う、魂の殺し屋。

浅葉積木 @tsumiki_a

ある雪女が熱い風呂につかってみたいと思った。そこで、人間の男を誑かして惚れさせて、手ひどく裏切って自分を捨てさせるように仕向けた。心を芯から冷やして風呂の熱に対抗するためだ。計画は上手く行った。雪女は熱い湯船の中で、いつまでも温まらない自分の体を抱きしめた。 #twnovel

@akemi_miura

#twnovel クリスマスはどんなスタイルで過ごしますか？今年のトレンドは古代ギリシャ風。イオニア式エンタシス円柱をかたどったツリーでご近所の度肝を抜き、トーガをまとって優雅に寝そべったまま、朝まで吐きながら飲み食いしましょう。

@K_Ichida

#twnovel 夫「ヒ素を取り込む生物がいるんだってな。すごいよな」。　妻「あら、あなたもずいぶん長くヒ素を呑んでるはずなんだけど」

こち @kochi_192

屋敷に恐ろしい円盤が来ました。NASAが何かを発表したようですがまさか……。埃を吸いながら屋敷の床を縦横無尽に動き回るUFOめ。私の仕事を奪いご主人に取り入るつもりか。所詮角には対応出来ない皿め。「メアリ。それは返品しておくから掃除ロボットと張り合うのはやめろ」 #twnovel

芹沢文書 @DocSeri

「今回発見された新言語は模倣子として視聴覚や触覚の代わりに嗅味覚を用いるものです。文法的にも語順の概念がなく、複数の分子により一文を同時発話する特徴があります。構造上、既存言語との通訳は困難であり映像ベースのコミュニケーションが期待されます」 #twnovel

佐藤ちる @chiruSugar

僕のノートは「もしも」で満ちている。もしも雪が降ったなら。もしも僕の足がもっと速ければ。僕の癖字は、型にはまったフィクションを延々と語る。もしも僕が君を信じていたら。もしもここに、君がいたなら。やがて僕はその単純作業に飽きる。僕は呟く、「次は比較構文やろうっと」 #twnovel

しまだゆういち @chimada

#twnovel 最初は、ツイッター小説を書く人には変わった人が多いと思った。けれど次に、ツイッターにいる人はみんなどこか変わっていると感じるようになった。最終的には、人間はみんな奇妙なものなんだという結論に達した。まぁ、こんな考察をする自分も、それなりにグロテスクなんだけれど。

ぬこ @sakuranuko

深夜NASAから地球外の生命体について発表があると言うので、横で寝ている彼女に悪いと思いつつ、同時中継を見ていた。「既に他の星からの生命体が人間と同じ姿で紛れています」衝撃的な内容だ。驚く僕に何時の間にか起きてる彼女がキスをしながら言う。「細かい事キニシナイ」 #twnovel

リオ @urufffayn

誘う理由も断る理由もないことが、問題か幸福かわからない。服を脱ぎ髪をほどきベッドに入って目をつぶる。そうすればほら、朝が来るでしょう。胸が痛くなってふとんの中にもぐる。体を抱えてぎゅっと目をつぶったら、涙が転がり落ちた。25歳ってこんなことで泣かないと思ってた。 #twnovel

泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 酔うと見境なく書く癖がある。メモ用紙に原稿用紙の裏に色紙に畳に。醒めた頭で解読してみても、ものになるような文章は見えてこない。飲まなければいい。書かなければいい。何度も決意しているのに、飲まなければ書くことが出来なくなっている。読点のような血が点々と落ちている。

やし酒飲みちゃん @eta_polita

最近よく見るあれ、なんなんだろう。かかとに米粒付けてる子たち。あれ流行ってるのかな。かわいい子だなーって思って、なんとなく足元までチェックしたらかなりの確率で米粒が付いてるんだよね。流行ってんのかなあ。 #twnovel

高山 環（たかやま かん） @Takuya11

#twnovel 「人類が滅亡するとしたら原因は何だと思う？」彼女に尋ねる。「地球温暖化かな？」「そんなんじゃ、滅亡しないよ。逆に暖かくなるメリットもある」「じゃあ、何？」「人が愛を信じられなくなった時。僕らが愛し合っていれば人類は絶望しないよ、絶対に」「馬鹿みたい」彼女が笑う。

なゆた @nayuta1072

#twnovel この店では皆、別れ話しかしない。別れ話専門店だからだ。あっちのテーブルは泥沼。こっちは修羅場。僕は店の隅に座っている彼に声をかける。「今日で何日目でしたっけ？」「129日」彼は自然消滅の真っ最中。店を出たら完全に彼女を忘れてしまうので、あれからずっと此処にいる。

なゆた @nayuta1072

#twnovel あの日、別れ話専門店で彼と一緒に「自然消滅」を選んだ。店を出たらその瞬間、お互いのことを忘れるのだという。でも私は彼のことを思い出した。そういえばマスターが言ってたっけ、運命ならばまた思い出す、と。私は待ち続けている。彼が店から出るのを。彼が私を思い出すのを。

しまだゆういち @chimada

#twnovel 少しだけ昔の話です。数十人の魔女が力を合わせて、王国と戦いました。けれど、その内に考えを変えたひとりの魔女がいました。「勝っても負けても、誰かが傷つくんだ」そうしてその魔女はどこかに旅立ち、今では誰も知らない場所でひとり静かに暮らしているということです。

穏やかに健やかに(๑´◡`)_旦 @chotto1koto

#twnovel 文学賞のパーティーで爆破予告があった。プチトマト刑事とチノパンは警備にあたった。レシーバーを使う振りをしてトマトを 食べる刑事。チノパンはパーティーだからと社会の窓に薔薇を挿している。結局、爆破予告は嘘だったが自分たちが一番怪しかったことを、まだ彼らは知らない。

Gabb-- @itisnot

イカ好きの彼の家にお呼ばれした。玄関をくぐってすぐに生イカのスリッパがお出迎え。水音を響かせながら進む廊下の白壁には裂きイカの抽象画が三点。ハンガーにはいつもの巨大イカの一夜干しコートがあり、電球はその巨大イカの目玉だという。「いいだろ」彼の手にはファブリーズ。 #twnovel

鈴々@物語る鳥 @re_rhythm

朝、彼の部屋を出た後で忘れ物に気づいた。再び階段を戻りつつ鍵を探すが見つからない。鞄に入れた筈なのに。きっと彼はまだ寝ている。昨晩彼と揉めた。顔を合わせるのが億劫で何も云わず部屋を出たのに今チャイムで起こすのは気が引けた。諦めようか。忘れ物も、彼とのこの関係も。 #twnovel

@wakegiorino

#twnovel おやすみの前に。こんばんは、アナウンサーの星孝夫です。通勤の途中「やあ」と声をかけられ、笑顔で握手して立ち話を始めましたが、名前が浮かびません。窮余の一策、自分の名刺を出して先方からも頂こうとしたとき、私の名刺を見て「あ、人違いでした」。私、ちょっと泣きました。