ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/06

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短いお話です。
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リュカ @ryuka511

私はこの世界に生まれ皆に愛されるはずだった。あの男の気まぐれで、私の存在は闇に葬られ無かった事にされた。私の命を消した男はもう私の事など忘れ次の事を考えている。私の命を、人生を返せと、「ごみ箱」と題されたデータフォルダの中から懸命に叫び続ける。 #twnovel

2012-05-05 23:59:50
泥辺五郎 @dorobe56u

影を噛んでいる。おぼろげな人だった。儚げな男だった。「そろそろ死のうかと思っている」が口癖なのに、健康に気を遣っていた。「早く殺してくれ」とも言っていた。でも私は殺さなかった。違う女に殺された彼は私の部屋に影だけ残して煙になった。影には味がない。味には影がない。 #twnovel

2012-05-06 00:47:08
ささやか @ex_bungaku_girl

「月が大きいからって騒ぎすぎよ」さっき買ったアイスを食べながら君は言う。こんな時間だというのに通りには珍しく人がいて、皆一様に空を見上げている。ぷりぷりと怒る君の横を歩きながら、僕は笑いを堪えるのが大変だ。だって君、普段なら、買い食いなんて絶対しないじゃないか。 #twnovel

2012-05-06 00:51:24
@soubihinn

彼女は僕の言葉を信じてなかった。「貴方の愛はすべて、優しい貴方が作った偽物でしょう?」その言葉のあと、僕の愛の言葉は聞いてくれなかった。否定された僕は、彼女の腕を、足を、口を、目を、全てを塞ぎ彼女の気持を否定し、残した耳に愛を毎日囁いた #twnovel

2012-05-06 00:56:08
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 男性客は女性の体ばかりを買う。女性客は男性の心ばかりを買う。セット販売にすればよかった、とオーナーが気づいたときは手遅れで、倉庫には売れ残った女性の心と男性の体が山積み。ナマモノなので廃棄となる。だから、ゴミ捨て場には、女性の心を持った男性の体が蠢いているのだ。

2012-05-06 01:24:11
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 定規は仲間をさがしていた。彼は百円ショップ出身の30センチ定規だと自覚していた。しかし、街が崩壊したときに自分も歪んでしまったのではないか、と不安に思っていた。正確に自分は30センチあるのか、真っ直ぐなのか、確かめたい一心でヨロヨロともう何十年もさまよっている。

2012-05-06 01:48:29
140字物語 @shortshortshot

「今夜はやけに大きく見えるね」「いつもより14%も大きく見えるんだってさ」「という事はこっちも大きく見えてるのかなあ」「そりゃそうさ。さぞ美しい姿だろうね」「おーい!地球のみんなー!月はきれいに見えてるかーい⁉ここから見える地球はとってもとってもきれいだよー!」 #twnovel

2012-05-06 02:36:57
嘘つきプラム @ps_plum

雨の日に外に出るのが彼の癖。濡れない道を選びながら、水溜まりを飛び越えながら、雨を愛おしむように進むんだ。私はその後を追っていく。ふと立ち止まった彼。なんだか笑ってるように見えた。雨の中に何を見つけたの?彼の見つめる先、空を見上げる。大きな虹が架かってた。 #twnovel

2012-05-06 15:50:16
らし @rashi_catwillow

#twnovel 半開きのマンホールの、隙間から落ちた携帯電話の、助けをよぶような振動を、地下で生まれた少女が聞きつけ、少し離れて、膝を抱えて、じっと見守る(恐れと興味の入りまじった目で)。ふいに電話は動かなくなり、地下の少女は声をたてずに少しだけ泣く。もしもし、もしもしと泣く。

2012-05-06 17:15:47
@mimimdr

イキジビキ・ロボットは少女が幼い頃から沢山の疑問を解決してきた。「あの子に会うとどうして動悸がするんだろう」美しく成長した少女がそう問うと「きっと彼は危険な男なのですよ」とイキジビキは答えた。イキジビキはどうして突然自分の出力装置が壊れてしまったのか判らなかった。#twnovel

2012-05-06 18:01:02
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel 迷子のインコが交番に保護された。ある電話番号を繰り返すインコ。警官は試しに電話してみた。「インコを飼ってますか?」「いいえ」女は心当たりがないと言う。その時、インコが叫んだ。「くそ!俺の意気地なし!」「どうやら誰かが貴方に恋してるようです」

2012-05-06 18:09:50
すわぞ @suwazo

#twnovel 古道具屋で水瓶を買った。アパートまでやっとこさ運んできてから気づいたのだが、底でおっさんが正座している。「何やってんだ、誰だよお前」僕の台詞と全く同じ台詞をおっさんは繰り返した。おっさんの傍らにもそっくり同じ水瓶があった。その水瓶の中に僕の後頭部と水瓶が見えた。

2012-05-06 19:24:38
リリー @chicoli___ly

今夜はスーパームーン 海に月の道ができるという誰かの呟きを見て思い出したムーンリバー 海にできたその道を渡って 遠い君のところへ行けたらなんて そんなことを考えながら空を見上げると 雲が厚いのか いつも見える方角に月はなかった 私が渡れないように君が隠したの? #twnovel

2012-05-06 19:47:38
リリー @chicoli___ly

アルコール度数40度のウイスキーをロックで飲む 喉が焼ける グラスと煙草を片手に外へ出て 空を見た 上り始めの月が見えた それは山吹色のような 濃い色をしていた いつもより14%明るく3万キロ地球に近くなっているという月が見えた 何故今隣に君がいないのだろう #twnovel

2012-05-06 19:57:29
ふらっと @L_582

「あの娘の右手に恋をしたんだ」僕の右手が真剣な顔で言う。右手には世話になっているし、応援することにした。右手たちのために、デートは人間が向かい合わなければならない。今日も僕たちは喫茶店で右手と右手を差し出し、彼らの愛の時間が終わるまで不慣れな左手で携帯を弄くる。 #twnovel

2012-05-06 20:29:19
miecha @miechorz

#twnovel 地球に物凄く近付く条件がみっつも重なった月はウルトラハイパーグレートムーンと呼ばれた。鬱陶しい呼び名のこの満月は雲より手前に現れ、クレーターなど表面を万人に晒した。この夜を境に天文学に興味を持つ少年は微増し、月にウサギが居ると信じる少女は絶滅した。

2012-05-06 20:33:25
すわぞ @suwazo

#twnovel とつぜん宇宙人がやってきて、10歳以下の子供をみな連れ去ってしまった。10年後、20歳になった者たちが帰ってきた。みな優しく賢く美しく礼儀正しく両親祖父母を愛し自らの完璧さに驕らず両親祖父母の欠点を責めず、ただ哀しげに、両親祖父母が愛してくれないことを嘆いた。

2012-05-06 22:17:26
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 寒さで目を覚ました。いつの間にか外にでていたのか。長い時間眠っていたので身体は骨しか残っていない。とりあえず肉が欲しいと思ったが、脳もないのにどこで考えているのだろう。どこに蓄積されているのかわからない記憶を頼りに肉屋へ向かう。牛でも豚でもいいから肉を纏いたい。

2012-05-06 22:35:08
雪月 @setugetufuka

いつもより眩しい月に照らされ、行き場を無くした闇の生き物がさまよっていた。「こっちこっち」兎が声をかける。「僕の隣にいればいい。一緒に月を見よう」闇の生き物は兎の影に隠れてそっと月を見た。初めて見る月は大きく、明るく、美しかった。二匹は静かに並んで月を眺めた。 #twnovel

2012-05-06 23:16:11
ソノミヤ @sonomiya_sonoko

「あの男は貴女が枯れ落ちる間際に飛び去るわ、新たな蕾を求めてね」予言を残した魔女を嘲った。捨てられたオバサンの恨み節が愉快で堪らなくて。数年後、彼は私よりも若い娘と結ばれた。旬の果汁は全て吸われ、乾ききった私の身体を遺して。贅沢な夢なんて見るんじゃなかった。 #twnovel

2012-05-06 23:27:55
layback @laybacks

ねこのクロが毛糸の端をくわえてきた。青い毛糸の出どころを目で辿ってみると窓の隙間を抜けて庭にまで伸びている。クロがちょいちょいと促すので私はその毛糸を引っ張ってみる。するするする。気がつくと私とクロは宇宙に浮かんでいる。掌の中にできた毛糸の玉は地球色をしていた。 #twnovel

2012-05-06 23:28:30
ちゃちゃ @chacha_n

「私ってこの世界の人間じゃないと思うの」煌々と輝く月を見て彼女は言う。妄想癖の強い彼女は戯言を口にするのが得意だ。「そんなにこの世界が嫌なの?」彼女は首を傾ける。「そうじゃなくて」照れ笑いをして空を見上げる。恋愛は現実なんだって。付き合って半年まだ夢の中にいる #twnovel

2012-05-06 23:44:01
橘 颯 @so__w

寝台には皮だけのテディベア。愛らしかった丸いお腹は拉げ、虚ろな腹腔を丸い眸が悲しげに覗いています。傍らには喉から真白の綿を零して死に果てた少女。来る日も来る日も綿を食べ続けた挙句の出来事でした。彼女は愛し過ぎたのでしょうか。其れとも、愛されたかったのでしょうか。 #twnovel

2012-05-06 23:57:29
夢名 七志 @mumei7c

連休か。普段が不規則な休みなので、家族で過ごすのが一番だ。旅行へ出かける事も無く、後ろめたい気もあった。自分への言い訳が半分で、一家で買い物に来ている。抽選会。購入金額で一回引けるらしい。子供がハンドルを回すと。鐘が鳴った。「特等。家族温泉旅行」明日から仕事だ。 #twnovel

2012-05-06 23:58:16