【番外編】春の嵐

弱虫ペダル二次創作 腐向け ただ一度の永遠 番外編
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ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「東堂くんも一緒にくればよかったのに」 「いや。オレは通常通りで構わんよ」 「でも、練習場とか使えるのは便利だぜ」 「部活に入ったら自由に走れないだろう。だったら走りおさめをしておきたい」 この時、オレはまだ尽八の練習量を知らなかった。

2014-11-30 01:47:37
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon だから、身体が鈍るんじゃないかなんて余計な心配をしたりもしていた。 もちろん、そんなことなんて全然なかったのだが。 靖友と初めて顔を合わせたのは入学式の終った後だった。 部屋に戻ると、靖友がいた。 (あ……) 細い影。逆行で顔はよく見えなかった

2014-11-30 01:50:41
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon ただ、何かこみあげてくるようなものにオレの中は塗りつぶされた。 (……誰だ?) それは圧倒的な勢いで、一瞬にして俺をおかしな気分にした。 初めて会うはずなのに、何だか懐かしいような不思議な慕わしさがオレを支配していた。 「えっと、新開?」

2014-11-30 01:54:24
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「あ、うん」 「荒北靖友。今日からよろしく」 「こ、こちらこそ」 理由もなく焦った。 なぜか、その顔がまともに見れなくて、でも、そっと顔をあげた。 靖友が、オレを見て笑っていた。 それはものすごく柔らかな笑みで、オレはポカンとそれに見惚れた。

2014-11-30 01:56:30
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon (あ……) こみあげてくる何かがその勢いを増す。 「どうした?」 「い、いや、何でもない。あ、ちょっと外すな」 オレは、俯いてそのまま便所に駆け込んだ。 後から後からあふれ出る涙の意味が、オレにはわからなかった。 わかっていたのは、一つだけ。

2014-11-30 01:59:40
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon (……たぶん、オレは、彼に会いたかったんだ) おかしな言い方だけど、そう思った。 こみあげてくる何かは、俺の中を嵐のようにぐちゃぐちゃにした。 でも、そう思ったら、気持ちはだいぶ落ち着いた。 (オレは荒北くんに会いたかった) 心の中で繰り返す。

2014-11-30 02:03:15
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon それはもはや確信だった。 そして、オレはもう以前のままではいられないことを何となく予感していた。

2014-11-30 02:04:28