「フー・キルド・ニンジャスレイヤー?」#6・再放送Ver(実況なし)
「ドーモ。ナラク・ニンジャ=サン。フジキド・ケンジです」フジキドはナラクにアイサツした。「ドーモ。フジキド・ケンジ=サン。ナラク・ニンジャです」ナラクがアイサツを返した。赤黒い炎が。ぞっとするような悪意と憎悪に顔を歪めた老人のようにも見えるが、姿は常に定まらない。 22
2014-12-06 22:56:31「何をしに参ったかと訊いておる」ナラクが言った。発せられたその言葉だけでフジキドは吹き飛ばされかけた。これがナラクと対峙するという事だ。彼はあまりに長くこの感覚から離れていた。不意に彼は実感を持って悟った。己の身体を見下ろせば、吹きさらしの灰めいて、その輪郭は曖昧だった。23
2014-12-06 23:00:43フジキドは拳を握り、ナラクを睨み据えた。「私は戻る。私に力を貸せ。ナラクよ」「なんたるワガママ」ナラクの目が細まった。「左様な道理は通らぬ。イクサを自ら捨てた者に興味は無し」「イクサをしに戻る」フジキドは踏み出した。ナラクは赤黒い火の風を起こし、フジキドの身体を削り取る。 24
2014-12-06 23:07:04踏み出すほどに、フジキドの身体は……その自我は危機にさらされる。さきのナラクの言葉は真実である。今この時もだ。だがフジキドはナラクを睨み据えたまま、なおも踏み出さねばならない。何故なら彼はそう決めたからだ。「コシャクな」ナラクの姿は千倍にも巨大に膨れ上がったかに見えた。 25
2014-12-06 23:12:04「千日、十年、百年!儂は何度でも蘇る。オヌシごときがこの儂を!」「私はフジキド・ケンジであり、ニンジャスレイヤーだ」フジキドは目を見開く!「私はニンジャスレイヤーだ!」「イヤーッ!」ナラクがフジキドを呑み込んだ!「グワーッ!……グワーッ!」フジキドはよろめき、地に手をつく! 26
2014-12-06 23:16:24「グワーッ!グワーッ!グワーッ!……グワーッ!」やがてフジキドの叫びは嗄れ尽くし、再び顔が上がると、そこには赤黒に燃える装束が、「忍」「殺」のメンポが、邪悪な愉悦に狂う両目があった。フジキド・ケンジは死んだ。ナラクはそのように考えた。彼は笑おうとした。「ググググ……」 27
2014-12-06 23:18:35今やこのローカルコトダマ浮島は凪いでいた。邪悪な殺戮存在は咳き込むように笑った。「グググ、グググハハハ、グググハハハ、ハ……」彼は踵を返し、トリイに去ろうとした。そしてよろめいた。「グヌッ?」彼はふらつき、頭を押さえ、たたらを踏んだ。そして昏い炎を吐いた。「グワーッ!?」28
2014-12-06 23:21:43浮島が揺れた。その縁が砕けた。「グワーッ!……ニンジャ……ニンジャ……!」トリイに微かな亀裂が生じた。赤黒のニンジャは狂ったように宙にカラテを繰り出し、後退し、前進した。浮島は更に砕けた。赤黒のニンジャの足場は失せた。彼は落ちていった。「……ニンジャスレイヤー……!」 29
2014-12-06 23:25:51(お母さん)ニギコは呼ぼうとした。できなかった。手足。身体。動かない。口の中が砂利でいっぱいだ。彼女は闇の中にいた。(なに?)夢?なんと苦しい夢だろう。さっきまで何をしていた?どこにいた?展望台。そうだ。マルノウチ・スゴイタカイビル。展望台。そして……。(お母さん)31
2014-12-06 23:28:17声が出せない。息もできない。(お母さん!)父は今もこのビルで仕事だ。仕事の終わりを待って、三人でレストランに……(お母さん)展望台から夜景を。なのに、痛み。そして、重いのだ。潰されそうだ。(お母さん)返事がない。あったのだろうか?グルグルと音が渦巻いて、よくわからないのだ。 32
2014-12-06 23:30:26(お母……)唐突に闇に穴が空き、空気が流れ込んだ。ゴバッ、ゴバッ、徐々に体が軽くなる。「ゲホッ!ゲホーッ!」ニギコは咳き込み、砂利を吐き出した。「ニギコ!」見下ろす顔があった。母だ!「ニギコ!」「イヤーッ!」ゴバッ!身体が動く!ニギコは這い出した。「ニギコ!」「お母さん!」33
2014-12-06 23:31:14「ニギコ!」少女は母に抱え上げられた。「ニギコ!よかった……」「お母さん」「イヤーッ!」ニギコは首を巡らし、声を振り返った。そして目を見開いた。「アイエエエ!?」彼女の見たものは……瓦礫の山から巨大な破片を掴み上げては隅へ投げつける、赤黒のニンジャだったのだ!「アイエエエ!」34
2014-12-06 23:33:31母親に守られながら、ニギコはそのさまを凝視した。ニンジャが瓦礫をどかすと、更に一人、押し込められていた老人が空気の下に這い出した。血を流しているが命に別状はない。老人は己を助けた者を見て目を剥いた。「アイエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!」35
2014-12-06 23:35:59破砕したこの展望台に、ほとんど人は残っていない。彼らはガラス際で赤黒のニンジャを畏怖とともに見つめていた。悲鳴を上げた老人も、やがて彼らと同様、震えながら後ずさった。「ニンジャ……ニンジャナンデ……ありがとうございます……」36
2014-12-06 23:38:53瓦礫の下にいた生存者はこれで全てのようだった。赤黒のニンジャは彼らを一瞥したが……やがて、いきなり天井の穴めがけ、スリケンを投擲した。「イヤーッ!」穴の向こうの夜空が一瞬明るく光った。KABOOOM!それから、くぐもった爆発音が降ってきた。37
2014-12-06 23:40:59読者の皆さんはお気づきの事だろう。標的はビル上空にホバリングしていたヘリだ。これにより、おそらく爆煙の尾を引いてヘリは墜落、他のビルにぶつかるか、広場に落ちるかした事だろう。それによって誰かが負傷、あるいは死んだかもしれない。だが、もはや空から爆弾を降らせるものは無くなった。38
2014-12-06 23:42:43氷のように静まった展望台を、赤黒のニンジャは横切った。こじ開けられたエレベーター・シャフトを目指す。「待ってくれ!」天井の穴から一人の男が顔を見せ、穴の下に積もった瓦礫に飛び降り、転がり落ちた。「アイエエエ!待ってくれ!君!」「……」赤黒のニンジャは振り返った。39
2014-12-06 23:45:59男は腕に絡むロープの残骸を振り捨てた。「私はどうすればいいんだね!」「知らぬ。助けを待て」「それでは困りますよ!独りでコワイ!」「イヤーッ!」赤黒のニンジャは構わず、シャフトの中へ跳んだ。「アイエエエ!」男は頭を掻きむしり、生存市民を見渡した。 40
2014-12-06 23:48:10「アイ……エエエ!」彼もまた展望台を走って横切った。「待って!」ジャンプしてシャフト内のワイヤーを掴み、滑り落ちていった。「アイエエエエ……!」生存市民達はしばしその場に棒立ちになっていた。やがて母親はニギコを強く抱きしめた。彼女は涙をこぼした。誰かが「ありがとう」と呟いた。41
2014-12-06 23:53:04「イヤーッ!」KRAAASH!ニンジャキラーは足下のエレベーター天井部を破壊し、中へ躍り込んだ。無人であったのは幸いであった。市民が乗っていれば彼は無慈悲に排除したであろうから!ニンジャキラーは階数パネルに手を伸ばした。地下三階。ガゴン……エレベーターが軋み、下降を開始した。43
2014-12-06 23:55:20「まだだ。まだだ。まだだ」ニンジャキラーはブツブツと呟いた。メンポはひしゃげ、紅蓮の装束もズタズタに裂けている。皮膚が破け、肉が露出したかと思いきや、そこに見えるのはマグマめいて脈打つ炎であった。傷口の周囲がチリチリと燃えている。炎が装束と同化してゆく。44
2014-12-06 23:57:00「まだだ!まだだ!」ニンジャキラーは繰り返し「地下三階」のパネルを殴りつけた。そのたび火の粉が散って、足元に落ちた。「ナブケ=サン、聴こえるか」『……ザザッ……』死闘の中、通信機も破損したか?彼は訝しんだが、やがて答えが返った。『……不測事態……手が回りにくい、足が付く……』45
2014-12-06 23:58:28「まだだと言っておろう」ニンジャキラーは低く言った。「わからんのか」ゴン。ゴン。操作パネルを殴りつける。「実行部隊はどうした。貴様らの遠隔操作がかなわぬなら、奴らにやらせろ」『ザザザダメです、ニンジャどもに』「ニンジャ、ニンジャ、ニンジャ」ゴン。ゴン。パネルを殴りつける。 46
2014-12-07 00:01:18