【創作】ランプロファイア序章

創作作品の殴り書きをまとめ。自分用。 ------------------------ 流野昭博(ながれの・あきひろ):男子大学生。何かの干渉を受け、デイの存在を認識できるようになった。 白浜栞(しろはま・しおり):女子大生。昭博の恋人。 続きを読む
1
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 「何を」「嘘はついてないさ。この状況でつく意味がない」本来ならば彼と対話する必要もない。それでもこのイレギュラーな事態を次の試行に活かせないか。そう思考が展開していた。「ならば私の役割は何か。端的に言うなら『世界の管理者代行』かな。SFみたいでしょ?」

2014-12-23 04:57:09
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 「何を馬鹿な話を」「事実は小説より奇なりだよ、流野昭博(ながれの・あきひろ)」「!」名前を呼ぶ。『彼』の瞳が疑念から驚愕へと染め変えられる。あげていた両手を下げる。「信じられなくても、事実なんだよね」『彼』のすぐ側まで歩み寄る。合わないはずの視線がぶつかる。

2014-12-23 05:14:27
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 「……もし、そうならば」「あくまで私は『代行』でね」『彼』の言葉に無慈悲に割り込む。「出来る事には制限がある。例えばその彼女――『白浜栞(しろはま・しおり)』の死だけを無かった事には出来ないんだ」言い切る。『彼』の瞳に絶望が落ちて――すぐに、消えた。

2014-12-23 05:20:55
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 『彼』が伸ばした腕が、こちらの腕を掴もうとする。立体映像を掴むかのように空を切った。「私は神様じゃないんだ。悪いね」「そこではない!」叫び声。月が陰り闇が落ちる。『彼』の瞳は切望と絶望の狭間で爛々と輝いていた。まるで一本の蜘蛛の糸を見つけたかのように。

2014-12-23 05:26:28
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 「出来るのか」「何を?」「栞の死を無かった事に出来るのか」『彼』の瞳に宿るのは――一種の修羅。「……君なら気づくと思ったよ」隠している口元に自嘲の笑みを浮かべ、答える。『彼』を誘導するような言い回しをしたのはわざとだったのだから。「出来なくはないよ、理論上」

2014-12-23 05:36:59
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 少し離れた場所にあるパイプ椅子の位置情報を更新。すぐ側まで引き寄せて、それに腰かける。「夜明けまでにはまだ時間がある。そのあたり話してあげるから、その上でどうするか決めたら良い」考えるまでもなく大博打だ。傾向が読めない乱数を追加するようなものだから。

2014-12-23 05:43:48
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 「長いし胡散臭い話になる」「構わん」「了解」思い詰めた声に、忘れたはずの痛みが蘇る。「ああ、そうだ。その前に一応私の呼び方を決めておこうか。D.E.(デイ)で良いよ。何の略かは好きに決めてくれて良い」足を組み直す。「……じゃあ、話を始めようか」(一旦〆

2014-12-23 05:54:38

井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 「じゃあ、話を始めようか」椅子の座面は当然ながら床より高い。自然と『彼』を見下ろす形になる。『彼』の腕の中で熱を失った『彼女』の姿も自然と視界に入る。「……彼女、どうする?寝かせてくるなら、待つけど」「それには及ばん」即答。わかっていたはずの言葉に嘆息する。

2015-04-02 02:18:57
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 「わかった」小さな苛立ちを握り潰す。足を組み直す。未だに修羅を宿したままの『彼』の瞳に視線を合わせる。「白浜栞の死だけをなかった事には出来ない。これは良いね?」無言で『彼』は頷く。『彼女』の身体から流れ出た血溜まりから動こうとしない。

2015-04-02 02:19:13
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 「ならばどうするか。世界そのものを書き戻し(ロールバック)すれば良い」事も無げに言ってみせる。実際それ自体は指先ひとつでも可能な事だった。「書き戻し、だと」「うん」問いに頷く。「ああ、心配はいらないよ。初期化するわけじゃない」

2015-04-02 02:19:32
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakuTL 『彼』の不安を封じるように言葉を続ける。「この世界は半年毎に記録点(チェックポイント)が設定されていてね。半年間隔で歴史を『確定(コミット)』してるんだ」「……確定しなかったら、どうなる?」彼の問いは、少しだけ声が震えていた。

2015-04-02 02:19:57
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@souakutl 「なかった事になる」即答する。「幸せも不幸も全部平等に、君たちがその半年を生きた事実が綺麗さっぱり消えるよ」『彼』の視線が揺れた。計測値には変動はない。おそらく半年間の出来事が脳裏に浮かんだのだろう。「そしてやり直した後、同じ半年が過ごせるとは限らない」

2015-04-02 02:26:34
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakutl 「待て」「質問?どうぞ」『彼』の言葉の意図を察して説明を一度止める。「同じ半年が過ごせないとは、どういうことだ?」「……そのままの意味だよ」質問をされてから、余計な事を喋ってしまったと気づいた。何故そうなるのかは、はっきりとした正解を持っていなかったから。

2015-04-02 02:34:51
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakutl 「これは推測になるんだけど」前置きをしてから続ける。「この世界は無数の数式に乱数を投入する事で演算されている。書き戻す毎に乱数が変更されて、結果的に毎回異なる半年間が生まれるんじゃないかって思う」だから何百回試行してもまだ正解がわからない、と内心でぼやく。

2015-04-02 02:39:24
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakutl 「わからないのか」「さっきも言ったけど、私も神様じゃないんだ」若干失望したような響きの声に淡々と返す。『彼女』の身体から流れる血は『彼』の衣服を朱く染め上げていく。夜間の冷気は朱を介して『彼』の体温をも奪っていく。「……もうひとつ質問がある」「どうぞ」

2015-04-02 02:44:24
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakutl 「この半年が無かった事になるのは……」少し間があった。「栞のためだ、仕方ない」腕の中の『彼女』を抱きなおして。そう続けられた声は硬かった。「栞が生きている時間まで戻るとして……半年の記憶も、なかったことになるのか?」こちらに向けられた視線は鋭い。

2015-04-02 02:53:03
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakutl 「基本はね」「なら、どうやって栞を守れば良い」月が雲に隠れて室内が闇に落ちる。足を組み替える。顔を出した苛立ちを再びねじ伏せる。「私がこうやって君と話せているのはね、本来あり得ない事なんだ。だから、ちょっと裏技を試みようと思う」「裏技?」怪訝な声。

2015-04-02 03:01:31
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakutl フードの前を閉じて顔は隠しているため、『彼』に表情は見えないはずだ。それでも無意識のうちに無表情を装っていた。「君の記憶のコピーを私が所持する。書き戻し後、しかるべきタイミングで君にその記憶を戻す」「できるのか」「仮説の上では」実行後の影響は演算しきれない。

2015-04-02 03:04:50
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakutl 「負担は大きいだろうね」「構わん」『彼』の瞳には再び修羅が宿っていた。「栞が救えるなら、命と引き換えでも良い」「それはダメだ」修羅の言葉を反射的に否定する。「…彼女を今の君みたいにしたいわけ?」「……」補足は歯切れが悪かったが、それでも十分な力を持っていた。

2015-04-02 03:13:57
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakutl 「まぁともかく。これも何かの縁だ、私もそろそろ確定(コミット)を叩きたい」椅子から立ち上がり、両手を上着のポケットに突っ込んだ。触れられないのはわかっているが、『彼』のすぐ近くまで歩み寄る。夜が明ける気配がする。気づけば結構な時間がすぎていた。

2015-04-02 03:19:06
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakutl 「そろそろ夜が明けそうだね」「……そうだな」結局『彼』は一度たりとも『彼女』の骸を離さなかった。ふたりを見下ろして、密かに息をつく。

2015-04-02 03:21:30
井上ばるく@伯耆国 @in_baq

@sousakutl 「……じゃあ、また。『半年前』で会おう」やがて書き戻し(ロールバック)を迎える世界から自身を切り離す。夜明けまでに、やらなければいけないことができた。「全く……『上』は何を考えているんだか」その呟きは咥内で響くのみだった。(一応〆)

2015-04-02 03:26:24