ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方、ドラゴン・ニンジャ……ユカノは、目の前の若いニンジャに対して神秘的な尋問を継続しながら、ダークニンジャの名がもたらした衝撃に耐えていた。何故その考えに今まで至らなかったのか。彼はロード・オブ・ザイバツの亡骸とともにアノヨへ消えた。そして戻った!当然の帰結ではないか! 25

2014-12-16 17:19:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

どうやって戻ったのか?ヴァレイ・オブ・センジンを飛び降りた者が、それを取りやめて上がってくることなど、できはしない。こぼれた酒が盃に戻ることはない。戻ってくる事などできはしない……だが事実彼は戻ってきたのだ。そしてザイバツ・シャドーギルドを手中に収めていたのだ……! 26

2014-12-16 17:22:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……その瞬間、玉座で俯く黒ローブのニンジャは物憂げな顔を微かに上げ、謎めいた視線を虚空に走らせた。この城内で彼の名が発せられた。ギルドのニンジャでも、敵対残党ニンジャでもない。となれば、ドラゴン・ニンジャであろう。他の者との接触があったか。 27

2014-12-16 17:29:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いかがなされました」彼を半眼で見上げたニンジャは、ニーズヘグと並ぶギルドの重鎮、パーガトリーである。ダークニンジャは玉座を立ち、階段を降りてゆく。「ドラゴン・ニンジャとの接触が果たされた」「誰でしょうな?満足に役目を果たせるや否や。この捻れた事態の中で」 28

2014-12-16 17:44:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「心配せずとも、これがメイルシュトロムとの決定的なイクサとなろう。悲観将軍よ」ダークニンジャは言った。「よして頂きたい。私は常に最善手を睨んでおるのでござる。それを様々な……」パーガトリーはもぐもぐと呟いた。ダークニンジャは彼を伴い、玉座の間を後にした。先遣隊の鼓舞の為に。29

2014-12-16 18:10:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

広間の壇上には人ひとりほどのサイズの酒樽があった。樽には「武運」とショドーされた紙が貼られ、赤と白のシメナワが巻かれていた。樽の左右には重ねられた赤と白の餅。下の餅は大きく、上へゆくほど小さくなる。古式ゆかしい出陣の儀式である。30

2014-12-16 23:17:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

壇上に立つのは、今回のミッションにおいて先遣隊として送り出されるニンジャ達である。ミラーシェード、ディミヌエンド、スパルトイ、そして、エンブレイス……即ちシルバーキーだ。妖艶なキモノ姿でオコトを奏でるのはオイラン奴隷ではなく、ギルドの中核を担うニンジャの一人、パープルタコ。 31

2014-12-16 23:28:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーは気まずく広間を見渡す。集められたニンジャ達の一様な士気の高さに、彼は慄く。(今の世の中は……一応、平和な世の中だろ?)シルバーキーは心の中で呟いた。(こいつらは違う世界を見てるんだな)オコトを演奏するパープルタコを何度か視界に入れては、深呼吸をする。(アイツ!)32

2014-12-16 23:39:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

忘れようものか!彼女の艶姿を見ると、シルバーキーの心拍は上昇する。恐怖と苦痛の記憶が蘇るのだ。(アイツ……なんだってこんな所によ……!なんなんだ!)それも、彼女は相当上のポストにある。入院中の情報収集で彼女の名を知った時の彼の衝撃のほどをお察しいただける読者の方もおられよう。33

2014-12-16 23:42:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そうは言っても、彼はなるべくこの場の視覚情報を怠らず取り込もうと務めた。(今後何があるかわからねえし……ニンジャスレイヤー=サンだってザイバツが今こんなことになっちまってると知ったら……)パープルタコは淡々とオコトを演奏する。伏せられた目に睫毛は長い。何を考えているのだろう。34

2014-12-16 23:47:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

思えば、以前のイクサにおいて、シルバーキーの参戦は天守閣。組織としてのニンジャ知識は皆無に近い。イクサの後再びザイバツと関わるなどとは、その時考えもしなかった。このニンジャ達の何に注目したものか、勘所は掴めない。(だから見当違いの情報でも責めないでくれよ)彼は弁解した。35

2014-12-16 23:53:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドッソイ」木槌を束で抱えたスモトリ奴隷が、壇上の先遣隊に一つ一つ手渡していく。シルバーキーは上の空で受け取った。(これで?)シルバーキーは辮髪のニンジャ、スパルトイの視線を追った。(あの酒樽の蓋を割るのか。ワカル)スパルトイはシルバーキーを見た。そして不敵に鼻を鳴らした。 36

2014-12-16 23:59:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(なんだこの野郎。俺はお前に……今のところ……何の利害関係もねえだろうが。嫌な奴ばっかりだ)シルバーキーは溜息をついた。オコトの演奏が止まった。ニンジャ達が静まり返った。彼らの視線は壇上を離れ、桟敷に集まった。「……!」シルバーキーは驚愕に木槌を落としかけた。ダークニンジャ!37

2014-12-17 00:05:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

途端にニンジャ達がざわつき始めた。拳を振り上げ、「栄光あれ!」と叫ぶ者すらいた。シルバーキーは蒼白になり、天守閣のイクサの果てに消滅したダークニンジャのさまを思う。(あるじ……あいつが!)その傍らに高位のニンジャあり。パーガトリーだ。彼が手を上げ、ニンジャ達を黙らせる。38

2014-12-17 00:11:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダークニンジャが桟敷席にかけると、パーガトリーは咳払いして、よく通る声を発した。「者ども!イクサである」「オオオーッ!」ニンジャ達が吠えた。「諸君は十二分に精強だ。ゆえにただ吉報を待つばかりである」「オオオーッ!」「あるじ!」「イクサ!」「カラテ!」「然り然り、カラテである」39

2014-12-17 00:18:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パーガトリーはやや胸をそらし、一同を見渡した。「武勲を上げればあらゆる望みが思いのままぞ?いかに敵のはらわたを裂き開き、蹂躙し、征服するかを競い……」肘掛けに肘をつき、かすかに顔を傾けた背後のダークニンジャを視界の端に捉えると、パーガトリーは咳払いして話を止めた。「まあよい」40

2014-12-17 00:23:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パーガトリーは壇上を示した。「先遣隊の任務は至極シンプルである!例のメイルシュトロムとかいう胡乱者の隠れ潜む巣をいよいよ暴く機会が巡って来た。ブルコラク=サンやキャプスタン=サンらの尊き犠牲よ!斥候が残した痕跡を辿り、敵地への侵入路を確保。ミラーシェード=サンが実際最適任だ」41

2014-12-17 00:32:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ミラーシェードはオジギで応えた。シルバーキーは一連の流れを苦々しく見守った。(シンプルな任務、尊き犠牲と来た。ニーズヘグはアンタと同じぐらい偉いニンジャだろ。そんな奴が直々に地下牢でキャプスタン=サンを絞め上げたんだ。俺らはまだまだ知らされてねえんだろ、色々とさ) 42

2014-12-17 00:38:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーはミラーシェードのカラテの充実を見て取る。アトモスフィアを。先遣隊の面子の中でも彼のカラテは明らかに図抜けている。恐らく彼一人、他の三人と共有していない任務がある。たとえ先遣隊が壊滅しようと、ミラーシェード一人は追撃する敵を退けて帰還する事ができるだろう。43

2014-12-17 00:49:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ふと気づくと、ディミヌエンドがシルバーキーに視線を投げていた。やや眉根を寄せ、探るように見ている。シルバーキーは尊大な態度をもってその視線を受け止める。彼は危険を感じた。(あいつは察しのいい奴だ。エンブレイスの記憶喪失の件についても何か引っかかってやがる。間違いない) 44

2014-12-17 00:52:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何か?」シルバーキーは呟いた。「いえ」ディミヌエンドは首を振った。「シツレイだぞ」シルバーキーはもう一言投げた。彼女は答えず、酒樽に向き直った。「イヨオー!」スモトリ奴隷がシコの準備動作に入ると、先遣隊は同時に木槌を振り上げた。シルバーキーも咄嗟にタイミングを合わせた。45

2014-12-17 01:01:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドッソイ!」スモトリ奴隷が高々と上げた足を振り下ろし、シコを踏んだ。先遣隊は同時に木槌で酒樽の蓋を打ち割った。ミラーシェードが餅の横に並べられたマスを手に取り、酒を汲んで、ニンジャ達に掲げた。他の先遣隊がそれに続く。シルバーキーも咄嗟にタイミングを合わせた。 46

2014-12-17 01:06:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「幸運あれ!」パーガトリーが言った。「オオオオ!」「オオオオオ!」ニンジャ達は盛んに声援を投げた。ミラーシェードの名が最も多く呼ばれた。そしてエンブレイスの名も。心地よい体験とはとても言えなかった。「せいぜい俺の後をついて来いや」スパルトイがディミヌエンドに囁いた。 47

2014-12-17 01:09:16