世間体を気にする勇者と魔王の物語

魔王「何がお前をそこまでさせる⁉︎」勇者「守りたいものがあるからだ…それは世間体だ!」魔「世間体!?」勇「勇者の息子だからってさー…」ていうツイート見てから思いついたお話。短く終わらせるつもりですがよろぴくですー。
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羽印ぐぅ @hanegu

最終話(29) 「勇者君……」 私は勇者君を支えつつ、半身だけ起き上がらせる。勇者君は座ったまま、泣き続けている。 ああ、困った。 「実はね、勇者君。君に時間を稼がせてもらったのは、魔法陣を完成させるためだったんだ」 勇者君は聞いてるか解らない。それでも続ける。

2014-12-28 21:16:37
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(30) 「魔族とニンゲンの確執は根深く、魔王が復活する度に同じことを繰り返す。だから、私の代で終わらせようと思ったんだ。その為に魔族だけを別時空に転移する、魔法陣を作ることを考えたんだ。大規模なものだし、凄く手間がかかったよ」 「……」

2014-12-28 21:17:12
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(31) 「そして最後の仕上げが、私の死だ。正確には、私が死ぬことで解放される魔力が、発動の鍵になる。でも私が自刃するなんて出来ない。なら、私を殺してくれる、協力者がいるなあと」 「……」 「勇者君が来て、ああこの人なら、やってくれるだろうと思った」

2014-12-28 21:17:22
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(32) 「勇者君と会って、話して。ああ、この人に殺されたいなってもっと思うようになった。でも……」 思ったんだ。 「殺されたいと思うのと同時に、君と生きてみたいと……願ってしまったんだ」 ダメだなぁ、私は。 片ツノで、迫力もない、ダメな魔王。

2014-12-28 21:17:33
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(33) ダメな魔王だからこそ、最期を彩ろうと。勇者君のための華を飾ろうとしたのに。 「泣いているのか。魔王……」 目を真っ赤にした勇者君に言われ、私は自分の頬を触る。 「はは、涙なんて初めてだ…。魔王失格だなあ。ダメだなぁ」 「俺だって勇者失格だ」

2014-12-28 21:17:39
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(34) 魔王と勇者が揃って泣くとか、なんとも滑稽な姿だ。 「魔王」 そこに、勇者君じゃないニンゲンからの声が、こちらにかけられた。 周りに騎士を従えた、壮年の男。 「国王……」 勇者君が、ぽつり、呟く。 今の話を聞いていたのだろう。国王は少し渋い顔をしている。

2014-12-28 21:17:47
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(35) 「ニンゲンの王、貴方が殺してくれますか」 「……!」 勇者君が何か言おうとしたのを、私は勇者君を素早く抱き潰し、彼女の頭を自分の胸に押し付けて喋らせないようにした。 「でもお願いだ。勇者君は悪くない。勇者君は私の悪い魔法にかかったんだ。私が死ねばそれは祓われる」

2014-12-28 21:17:53
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(36) いやだ、と勇者君の声が小さく聞こえる。でも、聞くわけにはいかない。 ニンゲンの王の言葉を待つと、王は厳かに口を開いた。 「魔王よ、お前にとって、王とはなんだ?」 「……え」 呆けてるこちらを待たず、王は言葉を続けた。

2014-12-28 21:17:59
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(37) 「わしにとって王とは、『責任』だと思ってる」 「……」 「魔王よ、お前にとってもその責務は重いはずだ。我々人間との諍いは続いていた。それがお前の死だけで償えると思っているのか」 「な……」 「ならば、魔王よ、どうする?」

2014-12-28 21:18:06
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(38) どくり、と心臓が鳴る。 腕の中の勇者君も暴れるのをやめ、私の言葉を待っている。 いいのだろうか。 そんなことを、望んで、いいのだろうか。 「…………生きたい…………」 生きたい。 生きて、いたい。

2014-12-28 21:18:12
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(39) 勇者君が、無言でこちらに強く抱きついてくる。強く強く。 ああ、また泣いてるの? 仕方ないなあと思いながら彼女を抱き返すも、自分自身も泣いているのに気付いた。今日はやたらと泣いてしまう日だ。 「魔族も、変わってきたのだな……」 ニンゲンの王が、呟く。

2014-12-28 21:18:18
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(40) 「さあ、どうでしょう。私が変わってるだけかもしれません」 「ならば、今後も期待できるということだ。今までと違うなら…これから違う答えもできるということだからな」 ニンゲンの王は、穏やかに笑う。

2014-12-28 21:18:25
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(41) 「話し合いの場はまた別で設けよう。魔王とはいえ、我々の勇者をキズモノにしたという噂は一気に広まってしまったしなあ」 「えっ、いや、私本当になんもしてな」 腹を殴られた。勇者君、ボディでもやっぱり痛いよ。 それでは、とニンゲンの王は背を向ける。

2014-12-28 21:18:31
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(43) 門前に構えていた騎士団や兵士も王の命令で引いていく。 こちらも軍勢を引かせようと、後ろに指示を飛ばす、が。 「え、皆、なんで、そんな『この馬鹿野郎め』みたいな目をしてるの」 「そこまで解ってるなら流石です主様」 執事が代表のように前に出る。

2014-12-28 21:18:37
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(44) ただまあ、 「言いたいことは色々ありますが…よかったですね」 そんな言葉をかけられたのは、初めてだった。驚きの顔を崩せないでいると、執事はもう何も言わずに軍を引き連れて引き上げて行った。

2014-12-28 21:18:42
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(45) 腕の中の勇者君が、不思議そうにこちらを見上げてくる 「お前、あいつに死ぬこと言ってなかったのかよ」 「いやあ、彼と数人の幹部には…。うーん、色々予定が変わったから帰るのが怖いなあ」 「はは、バーカ。バカなことするからだ」

2014-12-28 21:18:49
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(46) 「勇者君のせいだよ。生きてるせいで、やることが沢山出来ちゃたじゃないか。めんどくさーい」 「大変だな、魔王は。せいぜい生きてることを噛み締めろ!」 「他人事だと思って……。あ、でも勇者君にも仕事あるんだよ」 「なんだよ」 「既成事実。つーくろ♡」 殴られた。

2014-12-28 21:18:54
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(47) 「いったーい!!勇者君、今日の私、君に殴られてばっかだよ!フルボッコだよ!」 「ううううるさい!お前が変なこと言うからだ!」 「先に言ったのは君からでしょー!!」 「うっせえー!!あの時は勢いとノリだったんだ!!」

2014-12-28 21:18:59
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(48) 「もうー!勇者君さあ、前々から思ってたんだけど、自分で言っておきながら後で恥ずかしがるのやめてよ!私が困るじゃない!何度押し倒そうと思ったかー!」 「んな!?変なカミングアウトすんなー!お前だって簡単にす、好きとか言うなよ!いつも勘違いしないように必死で…!」

2014-12-28 21:19:05
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(49) 「勘違いじゃないよ」 「ぅあ?」 「もう、それは勘違いじゃないよ。勇者君」 「う……」 「勇者君」 「…………」 「好きだよ」 「……!」

2014-12-28 21:19:11
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(50) 「勇者君は?」 「……そら」 「ん?」 「空に一緒に飛んでくれたら、言ってやる……」 「私の翼でいいの?」 「お前がいいって言ったろ」 「うん、そうだね。じゃあ」

2014-12-28 21:19:20
羽印ぐぅ @hanegu

最終話(51) 魔王の黒い翼が、大きく開く。 勇者は魔王の腕に抱かれ、空へと舞った。 飛ぶ先はまだ決めていない。 それでも、ふたりの心は幸福に満ちていた。 《おわり》

2014-12-28 21:19:24
羽印ぐぅ @hanegu

勇者と魔王の物語、とりあえず書ききったけど、その後の展開考えたらこんなんだよなと。EDカード風? pic.twitter.com/ZdMxsALfLi

2014-12-29 23:15:21
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