マザーウィル泊地 #17 SoM泊地大整備

雲の向こう、何もわからない場所。 初代雪風は今も「あちら」で生きている。
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Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

あの雲の向こうには、異世界があるらしい。らしいというのは、確実ではないからだ。私は何度かあの中へと行った。しかし、異界に行けたのはただ一度だけ。 『しれぇ!攻撃を受けました!焼き尽くしますね!』 向こうに残した先代の雪風は、終ぞ帰ってこなかった。 #マザーウィル泊地

2014-12-14 13:50:21
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

死んではいないだろう。扶桑姉妹とは別の意味で不死身である、安心して残せた。 幾人もの傭兵、艦娘があの中に行き、殆どが帰ってこなかった。私は嫌われたのか、あの中に行っても突き抜けるだけだ。今はもはや航路を逸れることさえ考えない。 #マザーウィル泊地

2014-12-14 13:54:41
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

依頼であろうと知った事か。こちとら数万の人員を抱えているのだ。そう言うと「人一人いないだろう」と返ってきた。 相手は中将。こちらが命令に従うとでも思っているのだろう。 白煙と同時に映像が途切れる。まだまだ咳や悲鳴が聞こえる。 #マザーウィル泊地

2014-12-14 14:17:19
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「生き残ったか」 「ちゃんと手加減はしている」 那智が脳天にツェリスカを突きつけていた。壁を主砲で器用に吹き飛ばし、綺麗に捕まえた。 羽黒が慈母の如き笑顔を振りまき、インシュロックで中条殿の欠損した部位の止血をしている。手慣れたものだ。 #マザーウィル泊地

2014-12-14 14:29:16
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「羽黒。四肢を縛れ。念入りに、な」 「はい」 既に結構な失血が見られる。だが、この程度で許すものか。 「よし。やれ」 カメラの視界外からの銃声。レバー装填の独特の軋みが耳に心地よい。大腿、上腕と散弾がブチ込まれ、縫い合わせても繋がらないよう切り離された。 #マザーウィル泊地

2014-12-14 14:43:56
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「はっは。見事なダルマだな。なぁ、那智」 「こんな不味そうなのは要らん」 一蹴だった。我ながら面白いことを言ったつもりなのだが。笑い声が棒読みなのがいけなかったか。 「その無能を連れて帰投しろ。生かしてここに連れて来い」 #マザーウィル泊地

2014-12-14 14:53:27
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

アリス、もとい妙高が肩に担いで連れてゆく。 証拠隠滅のため、足柄がガソリンを撒く。劣化ウラニウムとFAEの嵐で灼き尽くしたかったが、そうも言えん。 そもそも殺すだけならいくらでも方法がある。趣味に走る必要もない。 #マザーウィル泊地

2014-12-14 15:19:45
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

椅子に縛られた中将を前に、妙高達が準備をしてくれている。 AMSをプラグを突っ込まれ、精神不可に不快感を示す。禍々しい機械が繋がっており、それは中将を囲むように立っていた。 「生きているようで何よりだ」 #マザーウィル泊地

2014-12-16 12:49:43
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

既に麻酔は打ってある。キリキリ、ジジジと不気味な音を立てる機械はその頭をしっかりと保持し、メスやドリルをそこに突き立ててゆく。 脳に電極を突き刺し、それはすぐに終わった。 「便利な世になった。拷問に質問さえ不要なほどに」 #マザーウィル泊地

2014-12-19 03:13:52
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

防壁のない簡易AMSで、記憶も思考も丸裸にする。 誰に唆されたのか。こんな小物が、自力で当泊地に依頼できるとは考えられない。 別に死のうがどうだっていいため、AMSの出力を上げる。最早なにを考えているのか、自分でもわかるまい。AMS適性も無さそうだ。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 03:38:47
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「それで、どうなったの?」 足柄が結果を聞きに来た。 「やられた。噂と不確定情報に見事に踊らされたらしい。我々は内部粛清か暗殺に利用されたようだ」 「その様子だと、裏にいたのは企業?」 「わからんさ。今の時代、器用な傭兵も提督も多い」 #マザーウィル泊地

2014-12-19 04:12:07
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「向こうからの来訪者、かもな」 那智が思いついたように言う。 「可能性はあるが。我々は自由に行き来はできん。雪風は帰ってこなかった」 それだけは今でも悔やんでいる。生きてはいるだろう。だがその幸運も無限ではない。命運尽きて沈むのはあの雪風とて。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 04:16:54
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

厄介事も終わり、18日も終わる。 この日を待っていた。 「こちらスピリット・オブ・マザーウィル。入港許可を願う」 『連絡は受けている。上陸まで衝突に警戒せよ』 岩国に巨大建造物用整備施設がある。人口が減り、廃墟となった工業地帯だ。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 05:14:23
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

呉からも近く、船で賑わう安芸灘を征く。 だが、ケチはどこでもつくものだ。 『そこの艦、針路を15度北に変更せよ』 「それで発生する損失を貴官が補填するなら考えてやって良い」 この巨体を15度ずらすだけで、どれ程の資源が必要なのか。理解できんわけはなかろう。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 05:27:36
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

『ふざけるな!進路を譲れ』 「ふざけているのはどっちだ」 『たかだか12隻の艦隊が転進するだけでどれほどかかるというのだ!』 SoMを牽引しているHURは6隻で、他に艦は見当たらない。こいつはどこを見ているのだろう。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 05:33:09
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「貴艦はどこを見ている」 『我が艦隊前方の艦隊、つまり貴艦だ!』 「なるほど、見えんのか」 雪が視界を奪い、上空警戒レーダーは動かしていない。連中の視界の狭い水上レーダーは、SoMの脚を艦と誤認しているのだろう。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 06:07:25
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

あり得るのかは知らん。だが今までの交信からは、そうとしか思えん。 「接近中の艦隊へ。南へ5度進路変更せよ。当泊地はそちらと接触するまで北へ2度が限度だ」 「こちらは日本企業政府第八艦隊。そちらが北へ15度進路変更しないのであれば、対抗措置を取る用意がある」 #マザーウィル泊地

2014-12-19 06:16:57
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「第八艦隊へ。こちらはスピリット・オブ・マザーウィル。たかだか艦砲で沈む要塞ではないということだけは伝えておく」 ポンコツ曳航戦艦HURとて、安易に沈むものではない。 なにか文句を言われるかと思ったが、第八艦隊は真南、45度進路を変更した。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 06:26:19
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「老兵のわがままに付き合ってもらい、すまない。貴艦隊の航海の安全を祈る」 返答は無かった。まぁいい、嫌われ役は慣れている。 50……51。それなりの大艦隊だった。預かる提督も舐められんよう必死だったらのだろう。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 06:43:25
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

あれだけ引き連れてどこへ行くのか。ネットワークに繋いだとしてもわかりはしない。傍受を恐れて電子的手段での通達はされないのだから。通信砲も人口密集地では破片の落下を恐れて使えない。 最近はRFC1149を実用化するとかいう話がまことしやかに囁かれている。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 07:38:45
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

その後は特筆することもなく、旧岩国発電所の北から上陸する。南岩国駅の東、空港と元海兵隊基地、そして海自航空基地の向こうの空港。ここに整備基地がある。 最近はここらも軍港だ。提督増加により岩国鎮守府も設立されるとか。そこに曳航戦艦隊は向かう。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 14:10:45
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

できるだけ空荷でいる。 艦娘は山口各所の拠点へと一時上陸を許可し、ついでに私物や資源の大半を預けている。 SoMが最低限動くための資源を残し、この有澤重工岩国工場までたどり着いたのだ。 空港を見れば、見渡す限りのヘリ、ヘリ、ヘリ。ヘリが埋め尽くしている。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 14:22:40
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

均された大地に白線が引いてある。それに合わせるように足を配置してゆく。できるだけゆっくりと降ろしてゆくが、それでもクレーターはできてしまう。豆粒にしか見えぬ誘導員が、土砂まみれで「止まれ」を指示していた。 停止、そして脚部関節の固定。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 14:35:15
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

整列しつつある作業員を引き止める。 「そのまま聞いてほしい。ゆとりある納期を提示してもらい、カネも諸君らの見積より多く払う。これが契約条件だ。代わりに諸君の最高の仕事をしてもらう。仕上がり次第では更に報酬上乗せだ。よろしく頼む」 #マザーウィル泊地

2014-12-19 14:41:19
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

怒号。いや、勝鬨か?こういう文化に触れることは無いゆえにとっさに言葉が思いつかん。 「早速始めて頂きたい」 あっという間に足場が組み上がってゆく。ヘリが動き始め、SoM甲板にフックを引っ掛けてゆく。甲板軸が抜かれ、ゆっくりと各甲板がSoMと泣き別れとなる。 #マザーウィル泊地

2014-12-19 14:51:00