【第三部-十三】龍鳳に見つめられる時雨 #見つめる時雨

時雨 龍鳳
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誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

――先に触れてきたのは龍鳳だった。…あれから龍鳳とはあまり口を聞けていなかった。皆の前では普通に会話できるけど、部屋に戻って二人きりになると話し辛い空気が流れた。…全部、僕のせいなんだけれど…。でも今、僕の背中には龍鳳の手が置かれていた。

2014-12-26 23:55:09
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ゆっくりと、龍鳳が身体を寄せてくる。いつもは気にしない壁掛け時計の音が、やけに大きく聞こえた。…僕が何も話しかけられずにいると、龍鳳が先に口を開いた。 「…ねぇ、時雨?時雨はもう、全部知ってたよね。私の…本当の気持ち」 …龍鳳。それは…。

2014-12-27 00:00:14
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「時雨…こっちを向いて欲しいの」 僕は体を龍鳳の方へ向ける。そして…龍鳳と目を合わせた。…龍鳳は、微笑んでいた。目に少しの涙を浮かべて。 「…時雨」 とても、穏やかな声だった。でも…僕が龍鳳の声に返事をする前に、龍鳳は僕に抱き付いてきた。深呼吸が、耳元から聞こえてくる。

2014-12-27 00:05:10
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「時雨、私ね、時雨のこと…もう、そういう目でしか見られないの。ううん…ずっと、そういう目で見てきたの。知ってた?私、夜中に時雨のこと考えながらね…」 龍鳳の胸の鼓動が伝わってくる。柔かな声色に反して、その鼓動はとても速かった。龍鳳の心の声を、聞いているような気がした…。

2014-12-27 00:10:09
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「…時雨。もし、私の気持ちが迷惑だったら、私の肩を押して、突き離してください。そうでないと私、このまま…ずっと…」 押して、と言葉ではそう言っているのに、僕を抱き締める龍鳳の力は強くなっていった。そして、その手は震えていた。…僕は、何も出来なかった。

2014-12-27 00:15:09
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「…龍鳳、僕は…キミを突き放すことなんて、できないよ…」 …これが最もひどい回答であることはわかってる。でも…僕には龍鳳を突き放すことなんて、できるはずもなかった。

2014-12-27 00:20:08
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…龍鳳が口を開いた。 「…ずるい。いっそ突き放してくれればいいのに…」 嗚咽が、聞こえてくる。 「皆、ずるい。山城さんは、時雨の気持ちには答えてあげないのに、時雨を手離そうとしない。時雨は、私の気持ちを受け入れてくれないのに、私を突き放してくれもしない。ずるい。ずるいよ…」

2014-12-27 00:25:09
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「いいもん…いいもん…。皆ずるしちゃうなら…私だって、ずるいことしちゃうもん…」 龍鳳がゆっくりと身体を離し…僕の顔をじっと見つめてくる。龍鳳の吐息が僕にかかるくらいに、近い距離。涙で滲んだ瞳は、それでも僕のことをしっかりと映し出していた。

2014-12-27 00:30:10
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龍鳳が自分の人差し指と中指を揃え、そこに唇を落とした。そして…その指を…。 「…時雨。龍鳳は、貴女が許す限り、ずっと傍にいます。いさせて、ください…」 その指を、僕の唇へと触れさせた…。

2014-12-27 00:35:09
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再び、龍鳳が僕を抱き締める。…僕は、そんな龍鳳の背中に手を回した…。 「…ひどいひと」 「…ごめん」 「…好き」

2014-12-27 00:40:10
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「…ぎゅっとして」 だんだんと僕の方に体重を預けてくる龍鳳を受け止め、抱擁する。すると龍鳳は溜息をつきながら僕に頬ずりをしてきた。…良い香り、なんて感じてしまった僕は何だかもう最低だと思った…。

2014-12-27 00:45:09
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「…ん…時雨っ」 龍鳳は僕から身体を離すと、僕の横に寝転んだ。目元が赤くなっていた彼女だったけど、その顔には柔らかな微笑みを浮かべていた。…なんだか、いつもより幼く感じた。 「また明日から…よろしくね、時雨」 「…うん」

2014-12-27 00:50:11
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「また明日からよろしくね」。その言葉に込められた意味を、僕は心に受け取った。…そういうことだよね、龍鳳…。…龍鳳のさらさらとした髪を撫でる。すると龍鳳はとても気持ちよさそうに顔を緩ませた。

2014-12-27 00:55:09
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「…そろそろ、寝ようか、龍鳳」 「…うん」 龍鳳が、自分の布団へ戻っていく。龍鳳が布団の中に入ったことを確認してから、僕は部屋の灯りを落とした。 「…おやすみ、龍鳳」 「…おやすみ、時雨。また、明日」――

2014-12-27 01:00:10