- newgibbousmoon
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@newgibbousmoon その道が交わることはなくとも、共に、全力を尽くしていることを知っている。エールを送ることもできる。 ならば、それでいい。 そこが違う場所であっても、闘っているのは一緒だ。 「なあ、ぱちちゃん」 「ん?」 「ヤストモのこと、頼むな」 「……ああ」
2014-12-24 23:41:49@newgibbousmoon 東堂は、まじめな表情で滝を見て、そして、深くうなづいた。 「任された」 「……ヤストモは、季節の変わり目には風邪をひきやすいから」 「ああ」 「熱だしたら、ポカリだから。アクエリだめだから」 「わかった」 「あと、プリンな」 「うん」
2014-12-24 23:43:02@newgibbousmoon 「あと、怒らせたら、唐揚げとベプシな。これでだいたい許してくれっから」 「わかった」 「それでもダメな時は、ひたすら謝り倒す」 「俺が悪くなくても?」 「こっちから謝れば、ヤストモも謝るから」 「……努力する。タキコージはそうしていたのか?」
2014-12-24 23:45:26@newgibbousmoon 「もちろん」 「自分が悪くなくても?」 「だいたい、そういうのはお互い様なんだよ。けどさ、ヤストモはエースだから」 「エース……」 「うん」 その言葉が、どれほどの意味を持っているのか東堂はまだ知らない。 「自転車のことはわからないけど」
2014-12-24 23:47:20@newgibbousmoon でも……と滝は言葉を継ぐ。 「でも、野球ではさ、エースは絶対なんだ。絶対の王様。もちろん、誰もがエースって呼ばれるわけじゃない。ピッチャーがイコール、エースってわけじゃないし。でも、ヤストモはエースなんだ」 絶対的なエース。 「だから……」
2014-12-24 23:49:23@newgibbousmoon そこで一息ついて、滝は笑みを浮かべて言った。 「オレのエースをよろしく」 そう口にすることは寂しかった。 もう、荒北の隣は自分のものではないと認めることだったからだ。 けれど、それが滝の新しい第一歩だった。 「……ああ」
2014-12-24 23:51:02