#リプきた単語で三題噺 「ピエロ」「オオカミ」「ヨーヨー」

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ネッシー @0ZaALZilA

「ピエロ」「オオカミ」「ヨーヨー」 #リプきた単語で三題噺

2014-11-26 23:28:26
ネッシー @0ZaALZilA

縁日で良く見る、水風船にゴムをつけた遊具。所謂ヨーヨー。釣り針にこより紙を結びつけた道具で、ヨーヨーを釣る露天を見たことがあるだろう。紙が千切れるまでの勝負だが、紙が水に浸かってふやけ、簡単に切れてしまうことしばしば。 「ほいっ、ほいっ、ほいっと」

2014-11-26 23:28:57
ネッシー @0ZaALZilA

だからこそ手本を、と、店主のデモンストレーション。すいすいすいっと釣りあげていく。 「すっげえ!」 子供が囃し立てる声を聞き、なんだなんだとギャラリーが押し寄せる。あっという間に大賑わい。 「わあ、すごい!やってみたい!」 「おじさんおじさん!僕にもコツ教えて!」

2014-11-26 23:29:26
ネッシー @0ZaALZilA

流石にこうなってしまっては、お客様の対応が優先される。 店主が、自分の釣り糸を引き上げた瞬間。 「あっ」 ボロリと、こより紙が水で剥がれ落ちる。 中に一線、煌めくものが。 針金。釣り針に結び付いていた。

2014-11-26 23:29:56
ネッシー @0ZaALZilA

「なんだ、イカサマか」 「最初っからおかしいと思ってたぜ」 「他んとこ行こ」 予期せぬ種明かしに、興冷めしたギャラリーは去った。 嘘吐きは嫌われる。狼少年を見れば明らかなこと。 「どういうことだよ父ちゃん!何でイカサマなんかしたんだよ!」

2014-11-26 23:30:21
ネッシー @0ZaALZilA

最初に歓声を上げた少年は店主の息子――客寄せピエロだった。 しかし、彼は狼少年ではない。父親の、プロフェッショナルなパフォーマンスに、純粋に尊敬の眼差しを向けていたのだ。 でも、自分は父親店主に操られた愚かなピエロだと、知ってしまった。

2014-11-26 23:31:11
ネッシー @0ZaALZilA

「や、こうでもしないと、人気が出ないと思ってつい…」 群れることができなかった孤独な狼を一匹狼と言うが、今の店主はもはや負け犬と表現した方が相応しい。 祭りが終わるまで客に見放され、大損こいた店主は最後にこう呟いたとさ。 「おお、神よ」

2014-11-26 23:31:44
ネッシー @0ZaALZilA

おわり。 今回は短いながらも三要素ちゃんと絡んでるのではなかろうか。

2014-11-26 23:32:37