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「わざわざ見送りなんてええのに」 白い息にクソ寒い始発前のホームがますます寒く感じた。 「ちゅーか、昨日の今日でどーゆー神経しとんねん」 今吉はあっさりと笑顔を剥がし吐き捨てた。もう勝負する気がないらしい。 「帰ったところをこの目で見ないと信じられないもので」 「花宮は、」
2015-01-01 04:40:06「ワシを買いかぶりすぎやったんやて。ワシだって辛いときは泣きたなる、普通の人間やで。勝てば官軍、負ければ賊軍ゆうけどな、今のワシは軍に志願すらしとらん平民やで。どや、百年の恋も冷めるやろ?」 電車の到着を知らせる案内が流れた。 「いーや。10年過ぎる頃からもっと恋しくなりました」
2015-01-01 04:45:04「戻ってくりゃいい。勝負の世界へ」 「それ本気で勝負せん奴に言う資格ないんとちゃう?」 今吉は背を向け電車に乗り込んだ。言い返そうと口を開いた時には扉がオレ達を隔てていた。 今吉がふり返る。 “ワシはもっと嫌いになったわ” 口の動きだけで言うと、片目を閉じオレのように舌を出した。
2015-01-01 04:50:06_
ゲームを2周して暇になったオレは近所の本屋へと足を運んだ。そこで偶然にもバイト中の黒子にエンカウントし…!? 「花宮君ってボクのシフト把握して来てますよね。ストーカーですか? 気持ち悪いです」 「オレは尾けられる専だ」 黒子はクスリと笑った。 「あと少しなので待っていてください」
2015-01-04 19:45:07「久しぶりですね。WC家族で見ましたよ。おばあちゃんがキミのことを“若くて格好良い監督さん”と褒めていて気分が悪くなりました。どうしてくれるんですか。花宮君は年末年始どうでしたか。…何かあったみたいですね。ボクの人間観察を甘く見ないで下さい。キミのような分かりやすいタイプ、」
2015-01-04 20:05:08「まるっとお見通しですよ」 黒子は裏口から出るなり一息で言いきった。紅白も見たようだ。 「…今吉が来てて」 「あー。それはキミが悪いですね」 「まだ何も言ってねぇだろ!」 「キミの話はだいたい120%キミが悪いじゃないですか」 「これだから文系は。オレは悪いが悪いのは100%だ」
2015-01-04 20:10:09「冗談ですよ。ちゃんとやってたじゃないですか」 黒子の言葉(バスケ)は決まって驕傲で清廉。 「ほら、正々堂々と戦う方が楽しいでしょう」 厚顔無恥で公明正大。 「ふはっ。どんなやり方だろうと同じだ。オレのバスケはいつも不幸と共にある。人を潰すようにしかできてない」 虫酸が走るより、
2015-01-04 20:15:05「つらい練習も頑張って努力してバスケに青春かけてたイイコちゃんをまた一人潰しただけだ。楽しいかって?」 「花宮さん…」 やりきれない。 「楽しくねぇよ!」
2015-01-04 20:20:10_
外そうかと迷ったが、もう癖のようなもので、なければないで落ち着かない。いつもの、上着で見えない位置にそっとネクタイピンを付けた。
2015-01-05 08:00:05_