ある日の両片思いバディ

プラコッテ僕おじR42委託 @umakotte

両片思い メイクさんも苦手だけどいないともっと困る。おじさんだからそのままでいいのにバニーがいじくってくるからだ。近い距離は心拍数がぐいぐい上がる。何か塗りつけるからと目をつぶると唇に触れた冷たい指に飛び上がりそうになった。早くアイパッチで全て隠してしまいたい。　#一日一兎虎

やじさん @yajisanyaji

@umakotte もういいからって顔を逸らされてアイパッチをつける彼。僕には触れられたくないのか、メイクさんなら平気な癖に。理由をつけて触れようとするとスルリと逃げる。目元を隠せばいつもは豊かな表情も隠れてしまう。でも、ねえ、何故耳が赤いんですか？もしかしたら #一日一兎虎

プラコッテ僕おじR42委託 @umakotte

@yajisanyaji ぐっとハットを目深にかぶって「出番もうすぐだろ？」　俺は顔を上げることが出来なかった。このあと隣に座って収録があるなんてついてない。体温と息遣いを感じる距離、そこで目線を交わしたらこの気持ちがバレてしまいそうだ。頭に入らないくせに何度も台本を捲った。

やじさん @yajisanyaji

@umakotte 「虎徹さん」そう呼んだらはっとして落ちた本、手が滑っちまったと屈める腰の括れに目を奪われる。視線に気づかれない様に台本を拾おうとして手が触れると彼の身体が怯えた様に身を引いた「どうせ覚えられないでしょ」僕は本を奪い取る。彼の視線を独占する本にまで焼きもちを焼く

プラコッテ僕おじR42委託 @umakotte

@yajisanyaji バニーにしては少し手荒な仕種で渡された本を受け取り、息をそっと吐くと気持ちを切り替えた。｢ま、そりゃそうなんだけどお前に怒られたくないし｣緑の目を見て笑って見せた。大丈夫、俺はこいつの相棒だ。これからもずっと。 バニーは呆れたような顔で大きな溜息をつく。

やじさん @yajisanyaji

@umakotte この人は僕の気持ちなんか知りはしない。琥珀の瞳は汚れを知らない子供の様だ。貴方を守りたい、貴方を汚したい…どちらも本当の僕の気持ちだ。でも「怒られるような事ばかりするからですよ」僕は結局貴方の相棒の位置を選ぶ。これからもずっと

プラコッテ僕おじR42委託 @umakotte

@yajisanyaji ある日、俺はロイズさんに呼び出された。身に覚えのない熱愛の記事。バニーじゃない。あろう事か俺の、だ。「ほんとに何もないの？」問いただされてよく見ると、アポロンからトレセンまでの移動中、転びそうになった所を助けた女性だった。もちろんしっかり抱きとめている。

やじさん @yajisanyaji

@umakotte 誤解ですって言ったら「わかってるよ、バーナビー君じゃないんだから」と全否定、そりゃそうだけどバニーが見たらって一瞬考えちまった。ロイズさんだって捏造だってわかること。俺がそんな事あるわけないことは誰が考えたってわかりきった事。バニーが勘違いするわけねーじゃん

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@yajisanyaji 執務室の帰りに自販機コーナーに寄り、念のために楓に電話をしたら「お父さんがモテる訳ないって分かってるよ」と冷たく言い放たれた。実の娘でも分かっているんだから相棒が勘違いする訳ねぇな。そう判断して俺は空き缶をゴミ箱に投げ入れると自席へと戻った。

やじさん @yajisanyaji

@umakotte 虎徹さんに恋人が。まさかと一笑する事は簡単だが僕の心に巣食った疑惑があざ笑う。あの人は本当は美しい人だ。ただ自分の魅力をわかっていないだけ、その上たちの悪い事に人たらし　彼の魅力に気づくなんて　取られてしまう…どうしたらいい？僕のものでもないのに焦燥感が募る

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@yajisanyaji バニーが苛々している。さすがに昔程分かりやすくはないけれど、隣にいればピリピリした気配がする。あの写真の件か？弁解したところで「今大事な時期なのに妙な噂はやめてください」なんて言われたら心が折れる。俺はそ知らぬ顔でいつも通りバニーに接する事を心に決めた。

やじさん @yajisanyaji

@umakotte ほら僕の事なんて何とも思ってない。普段通りいつも通り。彼の中で僕は単なる相棒。わかってたじゃないか。この間自分に戒めたじゃないか。自分の位置はそこしかないんだって。でも「バニー飯食いに行くか？」呑気に聞いてくる声に何て答えたらいい？学校ではそんな事習わなかった

プラコッテ僕おじR42委託 @umakotte

@yajisanyaji 「仕事が入っていますから」つれない声でバニーは出て行ってしまった。バリバリと頭を掻くと机に突っ伏す。俺達はすぐに行き詰る。やっと二人揃って再び一部に上がれたばかりだと言うのに。「うまくいかねーなー」そう呟いてバニーの机を見つめた。恋ってのは厄介だ。

やじさん @yajisanyaji

@umakotte 何て気の効かない答え。僕には仕事しかない…つまらない奴友達もいない奴って思われてる。友達なんていらない、彼さえいれば他は何もいらない。でも言えない「困ったな。昼を食べる所すら考え付かない」仕事も無いのに出てきた。会社の近くでは食べられないし。情けないなと呟いた

プラコッテ僕おじR42委託 @umakotte

@yajisanyaji 昼休みをなんとか潰して社に戻ると机の上に白い紙袋が。袋の下に下手くそなうさぎが描かれており、それが虎徹さんからの差し入れだと気づく。「タイガーなら単独の仕事に行ったわよ」女史が僕の思考を見透かしたように言った。「早く仲直りしなさいね」僕は大人しく頷いた。

やじさん @yajisanyaji

@umakotte あいつは昔のあいつじゃないし俺ももう昔の俺じゃない。俺が助けなくったってあいつは一人前の男でＨＥＲＯどころかＫＯＨだ。なのに俺はいつまでもあいつの保護者面して、独り立ちしてないような扱いをしてる。大人って本当にずるいな…そして俺はそんなずるい大人なんだ

プラコッテ僕おじR42委託 @umakotte

@yajisanyaji 珍しくピクルス抜きのホットドックを口に運ぶ。こんな風に甘やかされるのも嫌いではないけれど、虎徹さんにとって僕はただの子どもなんだなと痛感して胸が痛い。彼は誰にだって優しい。僕だけが特別ではない。そんな事は分かっているのに、恋心はたまに錯覚を起こす。

やじさん @yajisanyaji

@umakotte 彼が髪を撫でてくれるのが好きだ。でも「セットが乱れます」と言ってしまう。素直になったらもし素直に好きだと言ったら彼はどうするだろう？あぁ錯覚だ、錯覚…彼が優しいのは誰にでも。いい気になるなＢＢＪ 僕はホットドックの包み紙をクシャリと丸めるとゴミ箱に放り込んだ

プラコッテ僕おじR42委託 @umakotte

@yajisanyaji 気まずく別れたまま、その日はバニーと顔を合わせる事はなかった。アントンと軽く飲んで帰る途中、大きな満月と夜景が綺麗だったからついスマホで撮影する。こんな写真よりもっとすごいのがあいつの部屋からは見えるだろうに、俺はなんとなくメールの作成画面を立ち上げた

やじさん @yajisanyaji

@umakotte 「バニー。月が綺麗だ」 俺は何となくそんなメールを送った

プラコッテ僕おじR42委託 @umakotte

@yajisanyaji 虎徹さんからのメールを受けて窓辺からシュテルンビルトの空を眺める。確かに今日の月は明るく美しかった。 それだけだ。他意がないのは分かっているけれど、もし別の意味が込められていたら？ 「僕もそう思っていました」 それだけの短いメールを返す。

やじさん @yajisanyaji

@umakotte ピコン！メールして１時間以上たっても返事がないのでバニー寝ちまったのかな？それともあんなメールに返事すんのもばかばかしいのかな？って思ってたら突然メール着信音が鳴って俺はドキリとした。『僕もそう思っていました』同じ月の下同じ事を思ってると思うと少し嬉しかった

プラコッテ僕おじR42委託 @umakotte

@yajisanyaji 酔っていたし、返事が来た事に浮かれて俺はすぐに返事を書いた。「今度は一緒に見たい　ダブルチェイサーで行った事あるあの丘でさ」 送信ボタンを押してからふと我に返る。おじさんが送るにはあまりにもロマンチックな内容で送信を取り消そうとしたが間に合わなかった。