『毛皮のヴィーナス』の話

『毛皮のヴィーナス』を観た直後の感想です。
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kntnko @kntnko

そいえば、新年一発目にポランスキーの『毛皮のヴィーナス』観てきたんだけど最高だった。『おとなのけんか』に続く密室劇なんだけど、『ローズマリーの赤ちゃん』を彷彿とさせる綿密に計算しつくされた構成と心理描写で、このおじさんもぜんぜん衰え知らずだなと。

2015-01-09 22:42:42
kntnko @kntnko

今までのポランスキーの映画には彼の出自が反映された『オリバー・ツイスト』だったり『戦場のピアニスト』みたいな作品があったけど、今回の作品は映画(舞台劇)をテーマに監督(演出家)と女優の現実と虚構が溶け合っていく関係性みたいなところが描かれてる。

2015-01-09 22:49:10
kntnko @kntnko

また、監督や演出家のクリエイティビティっていう一見高尚そうなものは実は…っていう身も蓋もないようなところをむき出しに描いてみせる。ゴダールがトリュフォーの『アメリカの夜』は肝心なものを描いてないって言ってたけど、この映画ではそれが描かれてる。ってか、それしか描いてない。

2015-01-09 22:54:47
kntnko @kntnko

わざわざ自分の嫁さんであるエマニュエル・セニエをヒロインに抜擢して、演出家の男にポランスキー自身に背丈も顔もそっくりなマチュー・アマルリックを起用してるあたりがすごいよね、覚悟が。ここまで自分の頭のなかを曝け出せるのは異常だよ。露出狂だよ。

2015-01-09 23:03:59
kntnko @kntnko

オーディションと現実が溶け合っていくと同時に演出家とヒロインの関係性が逆転していくシーケンスの表現が素晴らしいのね。背中のファスナーを使った表現だったり、名前が置換される瞬間だったり、『おとなのけんか』に引き続き電話を使う演出だったり。首輪の移行だったりとにかく演出の手数が多い。

2015-01-09 23:10:52
kntnko @kntnko

何よりエマニュエル・セニエのエロさね。これが物語の決定的な説得力を担ってる。女性がこの映画を観たらコメディなんだろけど、男なら間違いなくマチュー・アマルリックと一緒に彼女に翻弄されて疲れる。男を振り回す強引さだったり、ブーツを履かせるシーンだったり、乳首のチラリズムだったり(笑)

2015-01-09 23:14:48
kntnko @kntnko

簡単に言うと、インテリ気取った演出家がマゾッホの『毛皮を着たヴィーナス』をこれはただのSM小説だとか女性蔑視だとか言われて、最初は「こんな世界的古典文学をお前は何も分かっとらん!」とかイキってた男が結局は…って話なんだけど、まぁとにかく素晴らしいから観てほしい。

2015-01-09 23:29:57