ライスのアニメ感想：＃２００　ユリ熊嵐(1)

テリー・ライス @terry_rice88

ユリ熊嵐 EPiSODE:01「私はスキをあきらめない」 さて、ついに始まった幾原邦彦監督最新作。色々語りたいことがあるので、その辺りをつらつら自分の見た印象で語っていこうと思います。お付き合いいただければ。その第1話。結構わかりやすく感じた一方で、引っかかりも覚えた箇所も。

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Tipsとして、 ・OP映像の多幸感 ・薔薇は消え、椿と百合に ・軽々と乗り越えられたピンドラ ・透明な嵐と乱立する断絶の壁 ・鍔競り合う剣から貫かれる銃弾 ・断絶のコート（法廷）という名の場 ・クマと人間の関係 こんな辺りかな。 順を追って語りましょう。

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まったく持って幾原監督の感性のブレのなさを感じる1話だったと思います。OPの映像からしてもうちょっと極まってたくらいで、幾原監督のOPやED映像では「手を繋ぐ事」が何よりも重視して描かれてて、基本的には手が繋がりそうで繋がらない演出がなされているんだけど、今回は違ってた。

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手をしっかりと握って、全裸で踊る中、あまつさえキスにまでいきそうになるその多幸感がもうヤバい。同じように「手を繋いだ」演出が見られるのが「青い花」のOP映像だったりもして、そっちもけっこう凄いんだけど、精神的に繋がった感じの強さでいえば、ユリ熊嵐の映像に軍配を上げざるを得ない。

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個人的にはウテナのOP曲や「時に愛を」の上位互換版としての響きが「あの森で待ってる」の中に入ってて、それが映像に乗っかってきてるから恐ろしくソリッドな刺激になってるんだと思う。80年代末期～90年代初期のスタイリッシュな白抜き＆カラフルなデザインを踏襲もしてるのかなと。

テリー・ライス @terry_rice88

さて、本編だが。問題はウテナの時期より深刻になっているんだと思う。簡単に言ってしまえば劇場版ウテナでは外の世界に出ることが出来たけど、実はその先には壁、壁、壁、壁の連続だったって話で。しかもそれらが全部建設途中というのがまたなあと思った。なんかもうね、薄ら笑いしか出てこない。

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ウテナでの作中舞台はTV版の鳳学園は前方後円墳を模した「モラトリアムの棺おけ」で、劇場版の鳳学園は最上階の見えない空高き「台（うてな）」で、それぞれ意味があるのだけど、今回の嵐が丘学園は「外｣に開かれている一方で、「世界」は建設される壁に包まれつつあるのが強く目を引く。

テリー・ライス @terry_rice88

この壁って簡単に言えば、まんまSNSのクラスタみたいなもので、同じ志、考え方を持つもの同士しか見えなくなってるし、集まらなくなってるっていう状況なんじゃないかな。マジョリティが異なるマジョリティと「壁」を作りつつあるっていう状況で、マイノリティはないがしろにされる構図が出来ている

テリー・ライス @terry_rice88

ピンドラの「箱」理論の拡大解釈というか。社会全体が閉鎖的になるというより、そうやって、社会の中に「壁｣が乱立することで、集団が固定化、閉鎖的にしていくさまこそが乱立する断絶の壁なんじゃないかと思う。集団が大集団にならず、集団ごとで断絶するというのは現代の溝だと言えそう。

テリー・ライス @terry_rice88

そういうのは、多分みんな、このTLで経験してるんじゃないかと思いたいｗ＜断絶の壁　そこにさらに透明な嵐というのが重なると、もうどうしようもなく事態は深刻化しているのが目に見えてわかると思う。透明な嵐も幾原監督のモチーフの言い換えであることは明らかなんだけど。

テリー・ライス @terry_rice88

透明な嵐って、ウテナクライマックスにおける幾億本の剣よね。どちらも示しているのは同じ意味で、社会から発せられる誹謗中傷などだと解することが出来るけど、当時はまだ「剣」だったからいいものを、今回は「透明な嵐」だ。誰にも見えないし、分からないが、容赦なく襲い掛かってくる。

テリー・ライス @terry_rice88

断絶の壁が乱立する世界の中で透明な嵐が吹き荒れている。どのように捉えるかは人それぞれだけど、自分には繋がる事を急速に社会を形成する集団群が拒絶し始め、個々の状況においてはどこからともなく、理不尽にやってくる誹謗中傷、つまり透明な嵐に脅える状況に思えてならない。

テリー・ライス @terry_rice88

作中でも言われるように「友達が大事」、「透明にならなきゃいけない」というのが断絶の壁と透明な嵐と重なっていて、マクロでもミクロでも「狭く弱い絆」を共有し、なるたけ「無個性」でいることを強いられているというのが作中というか、今の状況なんだろうなあと思う。

テリー・ライス @terry_rice88

そこで「私はスキをあきらめない」というサブタイトルが繋がってくる。 もうぶっちゃけトリプルミーニングで。 一つはそういう状況に対しての宣言、 また、椿輝紅羽の宣言でもあり、 もう一つは幾原監督の宣言でもある。

テリー・ライス @terry_rice88

「スキをあきらめない」ためのガジェットとして、銃があり、銃弾がある。 ウテナの時は分かり合えないときは「決闘」で剣を交わせ合えばよかった。 しかし、今回はそうも行かない。透明な嵐は「大切なものから壊していく」からだ。 分かり合えないものは理不尽なまでに分かり合えないまま、なのだ

テリー・ライス @terry_rice88

ではどうするか。 「透明な嵐」と「断絶の壁」を「スキ」という銃弾で打ち抜くしかないんだよね。 その銃と弾丸で打ち抜いた先にいるかもしれない同志を探し出すために。 そのくらい、目に見えなくなっている。

テリー・ライス @terry_rice88

だからこそ椿輝紅羽は銃を持っているんだと思う。

テリー・ライス @terry_rice88

ところでユリ熊嵐には1話の時点で「あの」薔薇の花はまったく出ていない。 百合と椿だけである。 ちなみに百合の花言葉は「純粋」「無垢」「威厳」 椿の花言葉は「完全な愛」「完璧な魅力」「女性らしさ」「誇り」「理想の恋」 　　　　　　　　　 「私は常にあなたを愛します」 だそうだ。

テリー・ライス @terry_rice88

この花言葉を並べてみると、アバンで描かれる純花と紅羽の関係性はより分かりやすいでしょう。この作品のモチーフとして、百合と椿を担っているキャラだからです。しかしこの二人の関係は残酷なほど、実は近くて遠いのです。ぶっちゃけ相容れてないとも言えるかもしれない。全ては紅羽に起因してる。

テリー・ライス @terry_rice88

でまあ、ようやく本編の筋に入るわけだけどｗ　紅羽と純花の関係性が如実に表れているカットが銀子たちの転入シーン。銀子の視界から、心配げに紅羽を見つめる、純花。睦みあう仲のはずの紅羽の視線は純花にまったく向かわない。けど、昼休みになると、紅羽は姿の見えなくなった純花を必死に追いかける

テリー・ライス @terry_rice88

劇場版ウテナではアンシーはだんだん遠ざかっていくけど、純花は紅羽が学校の屋上を歩くのを見るまでまったく姿が出てこない。これが自分は彼女たちの関係が「近くて絶望的に遠い」とする理由。純花は紅羽をずっと見ているけど、紅羽は純花を見ていないし、ずっと追いかけている。

テリー・ライス @terry_rice88

そこに彼女たちの担う、椿と百合の花言葉がかかってくる。純花は「純粋無垢」だが、紅羽は純花に「完全な愛」と「理想の恋」と「女性らしさ」を重ねる。けどそれは純花は持っていないものだ。ただ彼女はどこまでも穢れのない心の持ち主。その美しさに紅羽は憧れを抱く。

テリー・ライス @terry_rice88

で、その屋上でのシーン。純花を追いかけて、お腹が鳴る紅羽に事も無げに自分のパンを分け与えるシークエンスはピンドラを全話見てる人なら、震えると思うんだ。あのシーンでピンドラ全24話が内包されちゃってるから。少なくとも自分はそこまで軽々と超えちゃうことがすごいなあと感じた。

テリー・ライス @terry_rice88

と、同時に純花＝桃果であって、紅羽にとっては「手の届かない存在」という構図が明らかになったので、その後の展開は推して知るべしといった所かな。実はこの物語、ずっと紅羽しか追っていない。現段階でフィルムの中心にいるのは間違いなく紅羽であり、映像に感情が乗っているのも彼女一人だけなのだ

テリー・ライス @terry_rice88

で、椿輝紅羽。完全に憶測になるけど、名前のくれは→クレア→クレアトゥールっていう可能性があるのかもしれない。フランス語で「ファッションデザイナーの中でも特に創造性が高く、流行に左右されず、一貫して自分のスタイルで創作している人のこと」という意味があるらしい。となるやはり。