邦人拘束についての「自己責任」論について

夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 @futodoki

あの、「自己責任」は当たり前なんですね。お二人とも誰かに命令されて現地入りしたわけじゃない。問題は、「自己責任」だから「救う義務はない」という論理のすり替えがセットになっちゃってることです。「自己責任」は正しいから反論しづらいけれど、だったら見捨てていいのかっていうと別の問題系。

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事業仕分けのときに「芸術は自己責任」という論理で助成が削減されかけたことも、演劇関係者は覚えておかなきゃいけないと思います。「自己責任」イコール「放置していい」のすり替えが問題の本質です。

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一緒に仕事してるひとが「あんなの自己責任だ」って話をしだしたからやんわりと反論。でも、だから助けないでいいって話にはならないんですよ。山や海で遭難したひとを助けないでいいかっていうと違うんですよ、と。でも伝わらなかったな。死んじゃえばいいんだって賛同してほしかったんだな。悲。

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1.ちょっと連投します。「自己責任だ」とどうして様々なひとびとが合唱してしまうのか、何がどう間違っているのかについて、改めて。まず、誰がなんのためにそれを口にするのかから確認しましょう。最初にその発言を鮮やかに使ったのは小泉純一郎でした。

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2.発言の是非についてはさておき、あのときの小泉純一郎発言の切れ味は相当なものでした。政府はどう対応するのか、という追い込まれた局面で「彼らに何が起こってもその責任は彼らにある」と強気な姿勢を保ち続けた胆力、説得力には相当なものがありました。

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3.あのとき人質になった方々へのバッシングは相当なものでした。容貌のことや何から何まで。僕自身も知人の一人が「あの家族は、助けてくださいの前にうちの息子が迷惑をかけて申し訳ありませんとなぜいわないのか」と憤っているのに触れて呆然としたことを鮮明に覚えています。

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4.是非はともかく、としつこく念を押さなければなりませんが、あのときの小泉は「自己責任」とはねつける必要がありました。テロに屈し、政策を変更することを回避し、世論の攻撃もかわす必要が彼にはあった。自己責任発言への反論もかなりの人々が口にしていましたが、結果としては弱かった。

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5.さて、少し丁寧に考えてみます。まず、「自己責任だ」とは何についての責任なのかが曖昧なまま使われています。「この事態を招いたこと」なのか、「これから起こることの全て」なのか。ここに論理の詐術、もしくは錯覚点が存在します。

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6.「自己責任だ」という主張に大抵のひとが、「まあ正論だよな。そんなところに行ったのは自己責任だよ」と説得されてしまいます。そしてそれはいつの間にか、「政府から助けてもらえなくてもそれは自己責任」にすり替わってしまうのです。

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7.大事なポイントなのでもう一度確認します。「自己責任だ」は主語がないゆえに、当然の指摘をしつつ「だから救済しなくていいんだ」という狂った結論を導き出せるマジックワードなのです。

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8.「自己責任だから助けないでいい」がなぜ間違っているのかを指摘するのはごくごく簡単です。私たちは不幸な結果を招く選択をすることがありますが、それでも救済を必要としています。飲み過ぎて倒れたひとも治療しますし、海辺に住んで津波に遭ったかたを「自己責任ですね」と見捨てはしない。

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9.「自己責任だ」と言い立てる人たちのほとんどは、責任の所在の話と救済する必要性の問題をごっちゃに考えているといっていいでしょう。責任が誰にあろうとなかろうと、命の危険に晒されている人は助けなければならない、ということがなぜか、わからなくなってしまうのですね。

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10.「自己責任だ」をいいたがる人たちの多くが混同しているらしいのは、個人的なジャッジと社会制度設計の問題です。「危険ドラッグで倒れたやつなんかほっとけばいい」というのは個人的な感情としてはしょうがないかもしれませんが、「治療の必要はない」と社会に訴えるなら。それは違うこと。

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11.仮に、「このプールは自分の責任で泳いでください」という注意書きのあるプールで、人が溺れたとします。助けないでいいのかというと違います。下山できなくなった登山者は助けないのかというとこれも違う。自分の意思で運転して事故に遭った人は救急車に乗せないでいいのか、そういうこと。

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12.この混同は至る所で見られます。パチンコで破産したやつに生活保護制度は必要ない、といった主張なんか典型ですね。個人の感情はそうでも、社会としてはあらゆる個人を救済しなくてはならない。セーフティネットのない社会では餓死か犯罪かの道だけになってしまう。

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13.そして救済、生存権のありかたに「責任」の問題が介在してはならないのです。酔っ払い運転で身体機能を失ったひとと、生まれつき同じ障害のあるひととで手当を変えるべきか？ 個人的感情は「自業自得のやつに税金を使うな」であったとしても制度設計としては否定すべきでありません。

夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 @futodoki

14.言いかえると、バカもアホもドジもマヌケも、同じように生存権を保証される社会を私たちは選択し、維持しているのです。決して、ヘマをしたやつは死んでいいという社会ではなく。「自己責任」をいいつのる人の多くは無意識に「馬鹿は死ね」というマッチョな社会を希求してしまっている。

夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 @futodoki

15.次の問題。なんで「自己責任だろ」なんてわざわざそういうことをいっちゃうの？ っていう疑問です。単純には、複雑な問題をスパッと一刀両断する錯覚の快感からなんでしょうけれど、もう少し別な理由があるような気がしています。

夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 @futodoki

16.あのときの小泉のように「対応はどうするんですか？」と記者たちに取り囲まれているわけでもなんでもないのに、異国の地で拘束されている被害者を貶めるようなことをわざわざいう、そのことによって何を得ているのか、または何がそのひとに「自己責任だろ」と言わせているのか。

夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 @futodoki

17.もしかして、建前をいうことは恥で本音をいうことがカッコいいという誤解があるのではないか、というのが今思いついた仮説です。ポリティカルコレクトな意見を持つのは凡庸でカッコ悪く、「ありのーままのーわたしー」の本音をいうことがよいのだという刷り込みです。

夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 @futodoki

18.そしてそれは、テレビのキャスターなんかがいえないような意見をいえる自分、いいでしょ、みたいな形で発動されます。その結果みんな似たような、形にはまった「毒舌」を並べてしまうわけですが。「自己責任」をいいつのるひとたちについてはまあ、そんな印象を私はもっています。

夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 @futodoki

19.「この俺様にいわせればだな」みたいな勘違いの姿勢と自己責任論とは、とても相性がいいですよね。俺ならあんなヘマはしないぜっていう身下した視線とセットになっている。その傲慢さはなんだろう、と考え込む私もまた、私ならそんな物言いはしないぜと見下しています。同じ穴のむじなー。

夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 @futodoki

やあぼくむじな。ごはんたべてくるよ。長々とお付き合いありがとうございましたー。しゅたっ！

夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 @futodoki

20.あ、あと、「人に迷惑をかけないようにしましょう」の洗脳が圧倒的なんでしょうね。被害者なのにバッシングしだすのは。泣き崩れる家族に「まず謝れよ」なんて考えるの、それですよ。「⚪️⚪️くんは武装勢力に捕まってめいわくをかけたのでよくないとおもいまーす」

夏井孝裕 NATSUI Takahiro 🐠 @futodoki

togetterはまとまった形で残しておきたいという使い方にしているのでコメント欄での反論への反論はしないことにしています。