リプライでもらったお題１０個詰め込んだSS『終わった世界の釣り人あかねちゃん～あかねちゃんと白線流し～』

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集まった要素はこれです。 ・スチームパンク ・博士の異常な愛情また私はいかにしてクロスアタックを愛するようになったか ・レズ ・テクノダンス ・胃もたれ ・白線流し ・衛星砲 ・秘伝のラーメン ・西表島 ・ポストアポカリプス

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リプライでもらったお題１０個詰め込んだSS『終わった世界の釣り人あかねちゃん』

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７月３０日、青い空、入道雲が海の向こうに見えます。耳を澄ませば、波の音が聞こえてきます。ここはイリオモテ、遠い遠い昔は、西表島と呼ばれていた島です。 1

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遠い遠い昔、空からとても強い光が降り注ぎ、世界は終わりました。衛星砲というとても恐ろしい兵器が、たった一度動いただけで、世界は終わってしまったのです。 2

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それから長い長い時間がたちました。生き残った人間たちは、ほそぼそと命をつなげ、今となっては、それなりに平和な世界ができました。 3

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あかねちゃんは、そんな終わった世界のイリオモテに暮らす１２歳の女の子です。あかねちゃんは、タンクトップにハーフパンツという、なるべく暑くなさそうな服装で、元気よく走っていきます。 4

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あかねちゃんの目的地は蒸気屋さんです。蒸気屋というのは、蒸気機関を扱うお店です。蒸気機関は、この終わった世界では、とても大切な技術です。たくさんのものが、蒸気機関で動いています。 5

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「おーい！すずおねーちゃーん！」あかねちゃんの元気な声が、蒸気屋の２階の部屋まで届きます。でも、返事は帰ってきません。「すず！おねー！ちゃーん！」もう一度呼んでも、返事は帰ってきません。 6

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「むー」あかねちゃんは、仕方ないなあという顔で、蒸気屋に入っていきます。蒸気屋の中は、いろいろな機械がいっぱいあります。料理に使う蒸気鍋や自転車に付ける蒸気補助輪、何に使うかわからない、とても大きな機械もあります。 7

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「やあ、あかねちゃん。いらっしゃい」店の奥から、やさしそうなおじさんが出てきます。「おじさん、すずおねーちゃんは？」「また部屋にこもって、なにかやってるんじゃないかな。行って呼んであげなさい」「ありがとう！」あかねちゃんはサンダルを脱いで、ドタバタと階段を上がります。 8

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「すずおねーちゃーん！」おかねちゃんは、元気よく力いっぱい部屋の扉を明けます。「あ、あかねちゃん。来てたんだ」すずさんはぼんやりと振り返ります。散らかった部屋の真ん中では、なにやらよくわからない蒸気機関が、ブンズーブンズーと音を立て、蒸気を吹き出しながら動いています。 9

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機械の上では５人の人形が、足並みをそろえたテクノダンスを踊っています。「また変な機械作ったの？」「変な機械…ちがうよ…これは…その…まだ未完成なだけだよ」薄手の作業着を着たボサボサ髪のすずさんが答えます。「ねーねー、今日は海に行く約束だったでしょ！早くいこうよ！」 10

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「そうだっ…け？」すずさんはぼんやりとした顔で答えます。「そうだよ！この前、約束したでしょ？早く行こうよ！」あかねちゃんは、居ても立ってもいられないといった様子です。「それじゃあ、行こうか。先に行って、準備しておいてね」すずさんは、カバンに色々なものを詰め込み始めます。 11

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すずさんは、色々なものをカバンに詰め込みます。六分儀や方位磁石、本やノート、他にも色々です。準備ができた時には、とっくにあかねちゃんはいませんでした。急がないと、またあかねちゃんに怒られてしまいそうです。汚れた作業着のまま、ボサボサの髪を簡単にまとめて、出かけます。 12

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「お父さん、行ってきます」「いってらっしゃい」蒸気屋のおじさんは、出かけていくすずさんを見送ります。すずさんは、蒸気自転車に乗ります。すずさんは１５歳、もう蒸気自転車を運転できる年齢です。スイッチを入れてハンドルをひねると、スイスイと進んでいきます。 13

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港には、とても穏やかな波が、静かな音を立てていました。空からは、海鳥の鳴き声が聞こえてきます。３隻ほどの船が泊まれる、小さいけれども穏やかで、優しい港です。すずさんは、この港が好きでした。 15

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小さな音を立てて、すずさんの乗った蒸気自転車が、港に到着しました。「すずおねーちゃん遅いよ！早く早く！」１隻の舟の上で、白いスカーフをリボンにしたあかねちゃんが手を振っています。すずさんは、あかねちゃんの乗っている船に乗り込みます。日除けの屋根がついた、長い船です。 16

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この船も、蒸気で動きます。船の後ろには、蒸気船なのです。すずさんは、出港の準備を始めます。海の水を汲んでタンクに注ぎ、カバンの中から小さな箱を取り出して、蒸気機関に火を入れます。他にも色々と準備をしています。あかねちゃんは、その様子を、とても真剣に見つめています。 17

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「いいなあ。私もすずおねーちゃんみたいに、早く一人で船に乗れるようになりたいなあ」青いスカーフを「じゃあ、勉強もしっかりがんばらないと、だね」３級免許を持っているすずさんは、ちょっと意地悪な顔で答えます。「むー」５級免許のあかねちゃんは嫌そうな顔をします。 18

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イリオモテの免許は、１級から５級までの５種類があります。１級免許は一人前の蒸気船乗りの証でもある最高位の免許で、獲得するためにはいろいろな条件があります。５級は子どもでも取れる簡単な免許で、港の近くで普通のボートを運転できます。 19

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すずさんの持っている３級の免許があれば、一人で蒸気船に乗ることができます。ですが、３級の免許を取るための試験には、蒸気機関の知識以外にも、海の天候の知識など、いろいろなことを勉強しないと合格できません。あかねちゃんは、勉強が嫌いでした。 20

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「さあ、準備ができたよ。出発しよう」すずさんがそう言うと、蒸気機関が元気よく動き出します。ボコボコと船の後ろの水中に水蒸気の泡が吹き出します。その泡に押されて、船が、ゆっくりと進みだしました。どんどん加速して、歩くよりも速い速度で、船は沖に向かって進んでいきます。 21

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船が沖に出て、しばらく時間がたちました。港は遠く小さく見えます。「ここらへんでいいね」そう言うと、すずさんは、蒸気機関を止めます。船がゆらゆらと浮かびます。「よーし！釣るぞー！」あかねちゃんはいそいそと釣り竿に餌を付け、海へと糸を垂らします。 22

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