ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム #5
0101エンブレイスはかつてこの場所を偶然見出し010取扱う事あたわず帰還したが10001「グワーッ!」シルバーキーは己の頭を拳で殴りつけた。「ハァーッ!ハァーッ!」息を荒げ、水晶に頭を打ち付けた。幸か不幸か。その瞬間の感覚の鋭敏化が、室内に潜むもう一人の存在を感知せしめた。21
2015-01-24 01:05:28「イヤーッ!」反射的に彼は振り向き、その方向にスリケンを投擲した。ピシリと音を立て、その者は人差し指と中指でスリケンを挟み取った。チリチリと装束がノイズを走らせ、その者がステルスを解いて姿を現した。「ミラー……ミラーシェード……サン」シルバーキーは呻いた。「尾けていた……?」22
2015-01-24 01:07:46「そういう事だ」ミラーシェードはスリケンを指の力で折り曲げ、捨てた。「これがお前の秘密か。エンブレイス=サン」ミラーシェードはかすかに横へずれ、シルバーキーの退路を塞いだ。「いや……お前はエンブレイス=サンではないのか?」油断なき目が光った。「……シルバーキーとは?」23
2015-01-24 01:11:55(【ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム】 #5 続き)
2015-01-25 20:22:29「イヤーッ!」反射的に彼は振り向き、その方向にスリケンを投擲した。ピシリと音を立て、その者は人差し指と中指でスリケンを挟み取った。チリチリと装束がノイズを走らせ、その者がステルスを解いて姿を現した。「ミラー……ミラーシェード……サン」シルバーキーは呻いた。「尾けていた……?」22
2015-01-25 20:22:52「そういう事だ」ミラーシェードはスリケンを指の力で折り曲げ、捨てた。「これがお前の秘密か。エンブレイス=サン」ミラーシェードはかすかに横へずれ、シルバーキーの退路を塞いだ。「いや……お前はエンブレイス=サンではないのか?」油断なき目が光った。「……シルバーキーとは?」23
2015-01-25 20:23:32「そんな事を言い……言いましたか?」シルバーキーは息を荒げながら、笑みを作ろうとした。「お戯れを。それともお疲れか、ミラーシェード=サン。その名は?何者です?私は先程、意識朦朧となって滑落し……道に迷い、必死で帰路を探しておった次第」「成る程」ミラーシェードが一歩進み出た。24
2015-01-25 20:27:45シルバーキーの背が、冷たい水晶ショウジ戸に触れた。彼は後ろに手を回し、ショウジ戸を探る。開かない。(そうだろうと思ったぜ)彼は歯噛みした。どのみち、ショウジ戸の先にも台座の間があるきりだ。退路はミラーシェードの先にしかないのだ。彼はヤバレカバレの覚悟を決める。 25
2015-01-25 20:33:23「よしてくだされ。私はただ、」「イヤーッ!」「グワーッ!」ミラーシェードの拳が霞み、シルバーキーの腹部を打ち据えた。シルバーキーは会話を引き延ばしながら斜め前へ飛び出そうとしていたのだが、爪先の重心移動が既に悟られていたかたちだ。拳と水晶ショウジ戸に挟まれ、彼は嘔吐を堪える。26
2015-01-25 20:43:00「ゲボッ……また尋問……ですか……畜生……」「お前は今この時、己の名誉と命を賭けた重大な綱渡りをしていると知れ」ミラーシェードは注意深く半歩離れ、再びカラテを構えた。シルバーキーは心中で舌打ちした。(畜生、接触の機会があればまだしも……こいつ警戒してやがるか……?) 27
2015-01-25 20:45:53「この場所の何を知る?キャプスタン=サンと、いかなるはかりごとを巡らせておったか?そして、シルバーキーの名」ミラーシェードは言葉を切った。「かつて聞いた名だ」ドクン!その時である。シルバーキーの心臓が強く打った。そして瞬間的な極度の頭痛!「アバーッ!?」彼は叫び、痙攣した。28
2015-01-25 20:53:29ミラーシェードはシルバーキーを助けない。カラテ警戒を崩さず、地面に倒れ込んだシルバーキーを睨んでいた。ドクン!ドクン!「アバーッ!アバーッ!?」ドクン!「ヤメロ!ヤメテクレ!」シルバーキーは虚しく叫んだ。視界が白く吹き飛び、ミラーシェードすらも失せ、後ろに、脈打つジュエル! 29
2015-01-25 20:55:27「ヤメテ」シルバーキーの意識は途絶……否、それすらも許されない。頭蓋を穿孔され、直にLANケーブルを突き刺されたかのような苦痛!彼は己の身に起こっている出来事を訝しんだが、痛みがすぐにそれすらも流し去る。ドクン!シルバーキーのニューロンにキョート城の全構造が浮かび、消えた。30
2015-01-25 21:01:34(((茶番を止めろ)))ミラーシェードの声が遠い。(((いかにしてこの場所を見出した!メイルシュトロムらに何を01011101101101シルバーキーは堪えた。何に堪えているのかもわからぬ。ただ、堪えた。立方体0101101ジュエルが元凶だ。あれがシルバーキーに! 31
2015-01-25 21:08:16シルバーキーは滂沱として血と涙を流しながら、立方体を知ろうとした。立方体を。ジュエルを……それはあまりにも密度が高く……シルバーキーは極度にブーストされた認識能力でジュエルを知ろうとする……0と1の集積物……あまりにも密度が高いゆえ、質量を101110「グワーッ!」32
2015-01-25 21:13:13瞬きひとつにも満たない時間のうちに、キョート城が、オヒガンが、世界が!シルバーキーのニューロンに展開され、全てが流れ去った!彼がそれらを記憶のうちに留めることは許されなかった。だが、死んだエンブレイスの記憶が……今なお消えずに残っていた残滓が……再構築され、目の前に現れた。33
2015-01-25 21:19:34「ハァーッ……ハァーッ……」エンブレイスは敵ニンジャのピットクロウラーを仕留め損ね、追い続ける中でやがてその姿を見失い、最終的に深淵に迷い込んだ。彼は巨大な壁を見出した。疲れ果て、時間の感覚も消失したなか、彼は壁に手をつき、帰路を求めた。亀裂に触れた手が偶然に仕掛けを見出す。34
2015-01-25 21:32:04開いた入り口の奥には階段があり、その先に踊り場01001011を見たと?」「そうだ。だが、持ち帰ることはかなわなかった。ショウジ戸を壊すことも」「成る程……それはしかし……重大事だぞ」エンブレイスの言葉を、キャプスタンは真摯に聞いていた。「隠匿されていたレリックが城内に」35
2015-01-25 21:35:23「然り……奇妙な……まるで夢の中のようでもあったが、うつつの出来事だ」エンブレイスは言った。「信じてくれるか」「勿論だとも……うつつ、か」キャプスタンは苦笑した。「そも、今この地に留め置かれた我々は、果たして、うつつの存在と言えようか。まことの存在と?」彼の目は憔悴していた。36
2015-01-25 21:40:06キャプスタンは携帯食糧をボソボソと噛み、呟く。「こんな風に。生活の真似事を保たなければ。潰れてしまう」……味など無いのだ。この地において。エンブレイスは返す言葉を思いつかぬ。キャプスタンは溜息をつき、話題を戻した。「あの区域は、どちらの軍の目も届かぬ中立地帯。一刻を争う」37
2015-01-25 21:47:19「その通り。あの立方体は、ただそこにあるだけで……おお……ただ事では無かった!」エンブレイスは勢い込んだ。「お前の言葉で自信がついた。やはり無視はできぬ。すぐにでも報告……」「否」キャプスタンは低く言った。「否……中立地帯……隠し通路……隠されて……嫌な予感がする」「何だと」38
2015-01-25 21:53:26「もしそのレリックを、もしもだ、ダークニンジャ=サンや、グランドマスター達が密かに……我らの目すら届かぬ場所に保持しておったのだとすれば」「何を言っている?」「見てはならぬものだとすれば。消されかねぬ」「バカな!そのような独断は……」「俺に任せておくがいい!」「だが……」39
2015-01-25 21:56:2301001……(((そういうことか)))ミラーシェードの声が再びニューロンに響いた。(((嘘を混ぜてはおらぬようだ)))シルバーキーは自覚した……恐らく記憶の浮かぶがまま、ミラーシェードに問われるがまま、言葉を垂れ流したのだ。今の彼の摩耗した意識は、自白剤の影響下に等しい。40
2015-01-25 22:09:29