舞台「シアワセでなくちゃいけないリユウ」感想 2015年1月24日

iwashiryo @iwashiryo1

[シアワセ1/24]新国立劇場で村井良大・吉川友・村川絵梨・植原卓也出演「シアワセでなくちゃいけないリユウ」を観覧した。面白かった。刺激的で心地よかった。期待通りのものがみられた。

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[シアワセ1/24]取り急ぎ。アフタートークでラストシーンについて「原作は違う、日本での受けを考えて変えた」と言っており納得した。というのも観ていてあのラストは明らかに『？』となったので。この二作の世界観の中で浮いていて【違和感があった】もの。変えていたのね。原作のラストが自然。

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[シアワセ1/24]相変わらず誰一人成長しないという心地よさ。全員自分のことしか考えてないコミュニケーション不全（相互理解して自分を変える気がない）という距離感が気持ちよい。距離感というより断絶か。ここには冷え冷えした諦念がある。それがいい。

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[シアワセ1/24]グレッグくんの心のなさが非常に分かりやすかったです。ものすごく自分に正直でその場その場を荒立てずに切り抜けたいだけという。言葉が借り物どころか考えや気持ちも借り物。「もう一人の自分」からの借り物。借り物の感情なのにそれを本心と思い込んでいる。自己欺瞞ですね。

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[シアワセ1/24]グレッグくんの造形は「斜め上から見下ろすもう一人の自分」だけの人です。決断もなんとかして避けようとする。なぜなら何かを選ぶことは他全てへの可能性を閉じてしまうから。政治的ロマン主義の一形態か。で、決断するときは自分の名においてではなく他人を理由付けにする。

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[シアワセ1/24]アフタートークでは「グレッグ最低」と総員一致でしたが、少なくとも「あーいるいる、わかるわかる」と私には説得力が感じられました。いるでしょうそういう人。読書という教養はあるけどその言葉が身にならない、自己欺瞞に長けたロマン主義者。私もごく身近にいたもの。

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[シアワセ1/24]吉川友さんの警備員姿をこの「シアワセでなくちゃいけないリユウ」で初めて観ました。昨年の赤坂ハロウィーンでの女軍人コスプレについて「ちょっとカーリーっぽい」という声を見かけていてどういうことかと思っていたのですが、なるほどと納得しました。かっこいい。

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[シアワセ1/24]なにせ三段警棒を使ってましたしね。ハロウィーンのコスプレでも警棒を振ってましたっけ。あの警棒はぐにゃりとしたオモチャでしたが、今回は床に立てるのも『ゴトッ』と思い音をさせていたので、あー、本物ですかね。アメリカの警備員は警棒使っていい（傷害加えていい）のね。

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[シアワセ1/24]そのカーリーさんですが、全身警備員の制服…のようで履き物だけ吉川友ライブの衣装まんまの底の厚いブーツで面白かったです。警備員がそれは履かんだろうと強烈に違和感を憶えたのですが、あれは「カーリーはそういう人」なんですかね。演出意図ですか。それとも吉川友の意向か。

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[シアワセ1/24]村井良大氏は今回もアフタートークでとても落ち着いたたたずまいだった。以前の朗読劇「カワイクなくちゃいけないリユウ」アフタートークでは、挨拶して客が拍手するタイミングを作るのを村井氏ただ一人ができていていたのに感心したが、今回も同様の落ち着きと配慮を見せていた。

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[シアワセ1/24]終盤の一人ずつ挨拶で、他の人が挨拶する時に率先して舞台セットに座ってお客さんにとって自分が死角を作らないようにしていたものな（そう本人が言っていた）。あれは立派だ。開始時に「芝居終わって眠い」と言っていたので最初客席は『疲れちゃった？』と笑いが起こったが。

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[シアワセ1/24]ああ「芝居終わって眠い」はちょっと違うな。終わってアフタートークになっても緊張しなくてぼーっとしてる的な話だった。要は疲れているということですか。「眠い」とは吉川友さんが言っていた。こちらも正直なかただ。※ここで客席は笑いになったが話の流れはすごく自然だった。

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[シアワセ1/24]吉川友さんのカーリーが警備員制服から私服に着替えたていのあの姿は胸部がたいへんなことになっていましたが、カーリーさんはそういう設定だったのでしたっけ。

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[シアワセ1/24]今回の舞台で一番のお目当てだったのが村川絵梨さんだった。私は女優村川絵梨を初めて観たのが朗読劇「カワイクなくちゃいけないリユウ」だったのだが、その頃村川さんはすでに女優として高い評価を確立していており、そりゃそうだわなと納得させられた凄まじい台詞回しであった。

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[シアワセ1/24]今回も冒頭から高速大量そして遠慮ない内容の台詞、それを繰り出しながら暴れる暴れる。しかも一語一語が明瞭に聞き取れるのだから凄い。この村川絵梨さんを観られてもう冒頭で私は満足してしまった。椅子も壊れるわけである。椅子のネジも取れる。

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[シアワセ1/24]この劇は決断せず動かない理屈づけとしての「教養」を意地悪くネタにしているが、同時に「無教養」もしくは「非教養」に対しても遠慮無用の目線でネタにしており、徹底していた。ヘレン・ケラーネタとかトルコとか。教養論が一つの柱として見える。

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[シアワセ1/24]※「教養小説」というと紆余曲折を経験して内面的成長があって、ということになるが、その点この劇の世界では誰一人、何一つ成長しない。それに「教養」が一役買っている。

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[シアワセ1/24]グレッグくんについて特に「心のなさがよい」と書きましたが、基本は全員そうですね。状況への刺激-反応系で貫徹していて内面を持たない。彼らの言葉の投げ合い・行動を見ていると「合理的個人の効用最大化が行われているなあ」と思います。そういう意味で自分に正直といえる。

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[シアワセ1/24]全員がいわゆる内面とか内心より選好で動いていると見えます。人格とは別の（人格未満の）「中の人」がごちゃごちゃぶつかって結論を出す、『心の社会』でいうエージェントが作動している感が。カーリーなど突出して動物同然ですがケントもステフもエージェントが少ないようです。

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[シアワセ1/24]再三になるが村井良大氏のトークでの落ち着きは素晴らしく、役と世界観を丁寧に把握して臨んだのだろうと思われた。話す内容も話し方も振る舞いもとても理知的な印象だった。自分の芝居だけでなく全体を見ている感じ。村川絵梨さんがしきりに「大御所みたい」と言っていたっけ。

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[シアワセ1/24]そんな村井氏なので吉川友さんも「ちゃんとエスコートして」とおねだりするわけです。暗転した中を出入りするのに最前列客席の人に思いきりぶつかったそうで。『こう』と村井氏にエスコートさせるのが仲よさげで微笑ましかったです。そして「このお芝居はぶつかるの前提で」と。

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[シアワセ1/24]吉川友さんがトークで「そんな感じ」を言ってましたが、あれが出たということはまとめに困ってたんでしょうね。

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[シアワセ1/24]植原卓也氏は最初に「カワイクなくちゃいけないリユウ」をやったときに「ケントは本当はいいやつなんだよ」と村井氏に楽屋でしつこく言っていたそうで、でも続編「シアワセでなくちゃいけないリユウ」を読んで「ましになった→やっぱり前はひどかったな」と考えを変えたそうです。

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[シアワセ1/24]村川絵梨さんが吉川友さんについて「実年齢より大人っぽい」と言っていたのが意外でした。へえ、そうなんですか。なお吉川友さんが「前の「カワイクなくちゃ」をやった時はお互いあんまりしゃべらなかった」と言うのに村川さんが『えっ』と笑っていたのになごみました。

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[シアワセ1/24]今回は一緒にご飯食べに行ってプライベートの話をしたり無事仲良しだったそうです。吉川友からは以上です。