《Mirage》— 創作雑記
- RandomWalkKSHR
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来る2月3日(火)、日本現代音楽協会主催〈現代の音楽展2015〉第1夜「世界に開く窓 百留敬雄ヴァイオリンリサイタル」にて、五弦ヴァイオリンとエレクトロニクスのための《Mirage—江戸川乱歩に拠る叙情的風景》(2014)を初演。youtube.com/watch?v=S7AifR…
2015-01-30 10:50:12【Mirage雑記】以下、今回の新作について、創作上の背景その他諸々の事共をつらつらと並べてみようと思う。
2015-01-30 10:57:50【Mirage雑記】本作品は、表題にも示される通り、江戸川乱歩の短編小説が構想の核となっている。『押絵と旅する男』—独特な空気感が読者の幻惑を誘う名作のひとつである。
2015-01-30 11:01:35【Mirage雑記】ところで、これに先立つ2012年には無伴奏ヴィオラのための《Torse》を書いているが、この作品は特別な表題性を持たない、むしろそうした傾向を極力排除しようという創作方針のもと作曲された。
2015-01-30 11:05:35【Mirage雑記】それまで(言葉としての)テクストを持つ作品が創作の中心であった事もあるが、「何か下敷きになるテクストがないと曲が書けないんじゃないか」という周囲のある批評の指摘に対する自分なりの返答、でもあったのかもしれない。
2015-01-30 11:11:34【Mirage雑記】そんな具合のある意味チャレンジだった《Torse》だったのだが、音になった作品それ自体には、何かしらの潜在する「物語性」を感じ取った聴衆が少なくなかった。
2015-01-30 11:21:28【Mirage雑記】この事は自分自身の裡に内在する音楽形式感とナラティヴの分ち難い一面を自覚させれた。そうした訳で、翌2013年より始まる『百人一首』の歌曲シリーズは、テクストを「一旦突き放し、改めて引き寄せる」というスタンスを採用するようになった。
2015-01-30 11:31:45【Mirage雑記】そして、その立場から改めて2012年の《Torse》を振り返ってみた時、その背後に蜃気楼のように浮かんでいたナラティヴが、日頃愛読する江戸川乱歩や夢野久作の諸作品の持つ空気感、特に乱歩の『押絵…』であった事に気付かされたのだった。
2015-01-30 11:38:07【Mirage雑記】そうした経緯から、『押絵…』のナラティヴに今一度踏み込んでみようという意欲が起こり、ヴィオラと相通ずる機能を持つ五弦ヴァイオリンを用いてその試みに取り組む事とした。謂わば1012年《Torse》と今回の《Mirage》は相互補完関係にあるとも言えるだろうか。
2015-01-30 11:43:02@RandomWalkKSHR (誤)1012年>(正)2012年。そんな大昔ぢゃない。 (^^;
2015-01-30 13:02:48【Mirage雑記】現音のWeb版「New Composer」に、これらの経緯を踏まえての覚書を掲載している。 jscm.net/?p=2934
2015-01-30 11:47:24【Mirage雑記】謂うまでもなく、音楽のナラティヴと素材(小説)のそれはそれぞれ個別の外容と性格を持つわけで、今回の作品が素材の時系列等々に逐一沿っているものではもちろんない。
2015-01-30 11:54:18【Mirage雑記】ただ、ほぼシンメトリックな楽曲構造の中にで、「若さから老いへ」直線的に向かう“枯渇”の諦念という物語性は、おそらくは乱歩の原作のナラティヴに沿う形になっているかもしれない。どのように聴かれようか—それはまた「聴き手」の内在するナラティヴに依拠する点でもあろう。
2015-01-30 12:01:21【Mirage雑記】今回作品では、独奏者の百留さんに予めソロパートを録音していただき、その部分を加工して音響素材とした。これら音響が、4chシステムで縦横無尽に動き回る。 pic.twitter.com/1rLNav2nmq
2015-01-30 12:05:51【Mirage雑記】また、押絵の中の永遠の少女(八百屋お七)を示唆するものとして、Vocaloidによって歌われる「お七辞世の歌」も登場する。 pic.twitter.com/zECOW4OydH
2015-01-30 12:09:43«Mirage»中盤に再生されるサウンドトラック: #初音ミク による「八百屋お七辞世の歌」(メロディは完全な創作 (^^;)。 Soundtrack from «Mirage» featuring #HatsuneMiku . soundcloud.com/stelverd/from-…
2015-02-05 14:04:34【Mirage雑記】2007年のモノオペラ作品以来、Vocaloid(「初音ミク」その他)は電子音楽関連で積極的に用いている。今回の使用も構想当初から自明であった。今日のヴァーチャル・リアリティの幻惑にも繋がるような原作の素材としても非常に符合するものと思われるのである。
2015-01-30 12:22:20【Mirage雑記】この度の公演では、エレクトロニクス関連作品はほかにアペルギスの曲が演奏される。描かれる音響世界観は全く別種のものとなるだろう。拙作の方は、どちらかと言えばアナクロな日本的湿度で響くに違いない。ともあれ、ステージでの実演を楽しみにしている。(了)
2015-01-30 12:58:04