幻影鎮守府奇譚

tir @tirlindana

ったく、私は艦娘で兵器よ？人間の女じゃあるまいし、痕なんかつかないっていうのに。アンタも覚えないわね… ―そうだな…人間じゃあない。お前のような良い兵器が女なぞであるものか― 悪かったよ、頑是無い子供みたいな真似を済まないね、叢雲。 フン、分かればいいのよ #幻影鎮守府奇譚

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先に出た叢雲を見送り、私も叢雲が用意していた制服に着替える。 きっちりと晒しで腹を押さえることを忘れない。別に漏れ出るわけではないが、もはや手放せない類のものだ。 全身を整え、姿見を覗くと、大分顔色が良くなっていた。どこにでも居そうな軍装に着られている提督だ。 #幻影鎮守府奇譚

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全身を確認し、最後に顔の傷を撫ぜる。15年物の大きな切り傷は、今も顔を縦断している。付き合いの長い傷であり、それなりに気に入っている傷だ。それに軍装をしてから気付かされたが、箔付けには丁度良い。全く腹の傷とは大違いだ。 さて、今日も提督業に励もうかね。 #幻影鎮守府奇譚

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本日の献立 通常業務 #幻影鎮守府奇譚

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提督、今日の旗艦は誰にする？ 朝一で顔を出した叢雲が告げる。 あー、そうだね、じゃ大鳳かゴーヤちゃんで、サーモン海域お願い。 分かったわ。 応えを返した叢雲が食堂に向かって行くのを見送った。 所詮私は味噌っかすで戦術や指揮などはすべて艦娘たちに任せきりである。 #幻影鎮守府

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生え抜きの士官学校出の提督というのは横須賀にまとめられているらしい。らしいというのは何故か帝大出で横須賀鎮守府に所属していた先輩が言っていたからであるのだが。 朝一で処理しなければならない遠征関係の認可書類をぽいぽいと片づけ叢雲の淹れた茶を飲む。 提督は暇である #幻影鎮守府奇譚

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最近は状況が刻一刻と変わっているようだ。 新しい海域にも勢力が及んだらしく、どこの鎮守府もおおわらわである。 こんな味噌っかす提督である私の所にも随分と上からの命令書が届き、サーモン海域なる海域攻略に精を出しているのである。 #幻影鎮守府奇譚

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第一艦隊は旗艦の指示で海域の攻略へ 遠征部隊は逐次こちらの指示の元で と、それなりに稼働すると忙しいのが鎮守府というものである。まあ少々私自身の体調が悪く、最近は叢雲に全権を預けて寝込んでいたのであるが。 それでも回るのが、現場の実情というわけだ。 #幻影鎮守府奇譚

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叢雲の建てた案に沿って遠征部隊に指示を出し、適度に歩き回って、兵器である艦娘たちと交流したりもする。 鎮守府と一口に言っても各々の提督に割り当てられた土地は広大で、それなりに抱えている艦娘は多い。 私は着任してから未だ同じ提督に合っていないのだから程が知れよう。 #幻影鎮守府奇譚

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提督、おはようございます。 食堂に行こうと思いたち、執務室を出た所で歩いていた不知火に声を掛けられた。 おはよう、不知火。今日はこれから出撃かな。 不知火が私の右手を掴み、真直ぐにこちらを見つめてくる。 はい、不知火はヒトマルマルマルにリランカへ参ります。 #幻影鎮守府奇譚

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提督は食堂に向かわれるのですね、不知火をお連れください。 そう言って不知火は傷の為に見えにくい右側に立って先導する。 不知火は建造されてから、自然と私の体に気を使ってくれるので重用しているのだ。そして女と違って詮索しない。最大の美徳を備えている。 #幻影鎮守府奇譚

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不知火に連れられて、食堂に着く。 艦娘たちの朝食とはずらしている。 不知火がすべて用意してくれるので私は席で待つだけだ。 ありがとう不知火。時間はまだ平気？ 大丈夫です。まだ刻限に余裕はありますので。 そう言って不知火は向かいに座りこちらをじっと見つめてくる。 #幻影鎮守府奇譚

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そんなに気になるかい？私の傷。 ふとお握りを咀嚼する手を休めて、不知火に聞いてみる。 不知火に何か落ち度でも？ 模範解答めいた応えに、私は苦笑した。 不知火はいつも私の右目を見ているからね。可愛い君に見られていると思うと恥ずかしくて。 そう言うと不知火は赤面した #幻影鎮守府奇譚

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それに不知火はいつも堅苦しいから、もう少し気安く接して欲しいんだ。 そう言ってこちらから不知火の顔を覗き込む。 しかし、提督に対してそのようなっん… 私は不知火の口を人差し指で押さえた。 ほらもうそろそろ不知火も刻限だ、行きなさい。考えておいてくれ。 #幻影鎮守府奇譚

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ッ、失礼致します、提督。 いってらっしゃい。無事に帰ってきなさい。 慌てて艤装管理室へ向かう不知火を見送って、残りの朝食を処理することにした。味気ない、砂のような味で辟易する。 少々、困らせてしまったかなと思いつつ、純情な兵器へのちょっかいは止められないものだ。 #幻影鎮守府奇譚

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そのうちに、不知火を執務室に呼んで、色々と話す算段を付けることを考えながら、執務室に戻ることにする。 帰り際、少し工廠の様子を見て、ゆっくりと鎮守府内を歩き回って、仕事の無い艦娘たちと交流して、自分の部屋に帰った。 #幻影鎮守府奇譚

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執務室に戻ると、叢雲が書類を整理していた。私が居るより余程堂に入っている。以前そう伝えたら、酸素魚雷を喰らわせるわよ！と酷い目にあったが。 あアンタね、少しは整理整頓しなさいよ。ったくいつまでたっても散らかしっぱなしなんだから。 #幻影鎮守府奇譚

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これが噂に聞く母という存在なのだろうか 手際良く書類を整理していく叢雲をぼんやりと見つめ、私はその日の残りを過ごした。 所詮、大した仕事の無い提督の業務などこんなものだ。 ほら、アンタが署名しなきゃいけないのだけこっち分けといたから。 ありがとう、叢雲。 #幻影鎮守府奇譚

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うちの幻影提督さんは設定が物語の根幹に絡んでくるから適当にぺはーって出せない。 が人間への不信。女への恐怖。自分への不信。その他もろもろの構成要素で生まれた人である。唯一の拠り所である先輩は既に死んでいる。割と目的の無くなってしまった提督。

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#幻影鎮守府奇譚 メモ書き 先輩は享年25 提督は現在24（先輩死亡時は23） 年の差は二歳だけど、学年的には一つ差 先輩は完全無欠超絶イケメン、どこに出しても恥ずかしくない超人（ただし外道、女の敵 提督はざんばらの髪の毛、右目にを縦断する傷と腹の傷

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#幻影鎮守府奇譚 こぼれ話 艦娘の材料→女性の死体（脳ミソ 死亡した女性の死体を利用し遺伝子パターンにより適合率の高い艦娘の生体ＣＰＵとして利用 またこの時代、死刑は無く公共への奉仕ということで艦娘化もあるよ

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本日の献立 先輩の話 #幻影鎮守府奇譚

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寝物語という奴をしてみようと思ったのだ。 ふと微妙な時間に目を覚ましてしまった。夜明けには早く、寝直すには遅い。 叢雲はこちらの身動ぎに気付いたのか、人間臭い表情でこちらを見つめていた。 微妙な時間ね… という表情。 先輩の話をしていなかったことを私は思い出した #幻影鎮守府奇譚

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先輩の話でもしようか。 そういうと叢雲はつまらなそうな顔をして寝台に潜りこんだ。 確か島風の元飼い主だったわよね、そんなに印象の強い男じゃあ無かったけど。 ひどいね、私の唯一の男で先輩なのに。 ふぅん、あの優男が。 そういうと叢雲は私に身体を寄せて来た。 #幻影鎮守府奇譚

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ほら、私はこんな顔をしているだろう。だからもともと人から敬遠されがちでね、頭だけは良かったものだから帝大なんかに入れたんだが、そこのニ回生に彼は居た。 優男と言うけれど、どこか退廃的な雰囲気がしてそこらの女どもに人気だったんだよ。そして酷い噂も絶えなかった。 #幻影鎮守府奇譚