造血器腫瘍の診断ツール、概説

血液の診断ってなんかいろいろ検査あってよくわかんないんだけど、ぶっちゃけどれが大事なの? というお話。
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枇杷 @loquat_priest

造血器腫瘍の診断は形態(Giemsa/HE)、組織化学(POX/PAS/Es)、免疫表現型(FCM/免疫染色)、遺伝子のすべてを組み合わせてなされるので、現状、どれかひとつだけでFAとするのは無理。ただ、どの検査をどのように位置づけるのかはほとんど概説されないのでわかりにくい。

2015-02-02 23:42:27
枇杷 @loquat_priest

初学者のための激ざっくりCD番号のくくりかた(乱暴につきあくまでも入り口だけ!)。ひと桁はT(2,3,4,7,8)、13と33がM、20付近と10がB(10,19,20,22)。NKは56。

2015-02-03 01:33:02
枇杷 @loquat_priest

形態学1:塗抹標本。骨髄や末梢血で腫瘍細胞が浮遊し、組織構築が問題になりにくい骨髄系腫瘍や前駆リンパ系腫瘍(ALL/LBL)で重要。即日結果が判明する迅速性が強みで、骨髄系では訓練すれば細胞形態だけでかなりの鑑別ができる。リンパ系では鑑別能は低い。

2015-02-02 23:50:50
枇杷 @loquat_priest

形態学2:固定組織標本(HE)。成熟リンパ系腫瘍の多くでは組織構築が鑑別点となるし、非腫瘍性の正常リンパ球が多く混じりやすいので診断に必須。いくらマーカーや染色体が揃っても、例えば濾胞構造が確認できないと濾胞性リンパ腫の確定診断はできない。ただし組織像だけで診断の確定は無理。

2015-02-02 23:57:05
枇杷 @loquat_priest

組織化学(特殊染色):あまり重視されなくなったが、やはり即日判明する迅速性が利点で、骨髄系腫瘍の鑑別にはいまも有用。POXがあればほぼリンパ系腫瘍を除外できるし、単球系はEs、赤芽球系はPASが、MDSのRARSでは鉄染色が診断に必要。繊維化の評価に鍍銀染色も使う。

2015-02-03 00:04:07
枇杷 @loquat_priest

表面マーカー(FCM):細胞の形態(FSC/SSC)や特定のマーカーの発現レベル(CD45)などで細胞を集団ごとに分け、ある集団だけを選り分け(ゲート)して知りたいマーカーの発現レベルをみることができる検査。これも院内検査なら即日判明する迅速性が強み。組織の免疫染色より早い。

2015-02-03 00:15:29
枇杷 @loquat_priest

FCMでは、蛍光色素と抗体の組み合わせによって、ある集団のマーカー発現が一部なのか全部なのか、複数のマーカーを同時に発現しているかなどが一回の検査で詳細に解析できる。臨床検査レベルでは2色が標準だが、例えばB細胞でCD5/23が共発現すればCLL、という診断が可能。

2015-02-03 00:22:50
枇杷 @loquat_priest

FCMの弱点として、検体に含まれる腫瘍細胞の数が少なくなるほど、2次元展開しても集団として認識しづらくなり、腫瘍細胞かどうかの判断が困難になることがある。この性質上、Hodgkinリンパ腫の診断などには向かない。細胞表面でなく細胞内のマーカーの解析もやや苦手。

2015-02-03 00:29:16
枇杷 @loquat_priest

固定標本の免疫染色:成熟リンパ系腫瘍の診断には必須。詳細は書ききれない。Cyclin D1が出ればマントルとか、ゴールデンマーカーもいくつかある。厳密には免染じゃないけどEBERのISHも大事。前駆リンパ系腫瘍でも、TdTが診断にとても重要。

2015-02-03 00:37:17
枇杷 @loquat_priest

固定標本は後追いでも検討できる代わりに、FCMより時間がかかる。FCMのゲートに比べて、染まっているのが腫瘍細胞かどうかの判断に悩むこともある。また、抗原の賦活や抗体のエピトープの違いなどで、FCMと結果が乖離する場合があり、どちらがどうというよりは互いに補完しあう関係。

2015-02-03 00:40:54
枇杷 @loquat_priest

最後に遺伝子・染色体。一部の腫瘍はこの結果が出ると文句なく診断確定する。形態がどうでもPML/RARα出ればAPLだし、BCR/ABL出ればCMLかPh+ALL。病理が中間型とかごちゃごちゃ言ってもMYC転座あればBurkittとして治療しちゃう(ごめんなさい)。

2015-02-03 00:46:40
枇杷 @loquat_priest

検査はGバンド、FISH、PCRといくつかあるが割愛。こいつらの弱点は時間で、院内PCRなら即日のこともあるが、外注だと早くても3日はかかる。なので、これ以外の結果で暫定の診断とし、後から結果を確認して必要があれば変更して確定の診断とすることが多い。

2015-02-03 00:51:50
枇杷 @loquat_priest

いろいろ説明したが、実臨床上は、後からどの結果が診断に決定的な影響をもたらすか分からないので、検体採取の時点で出せる検査を全部出すのがキモ。形態→特殊染色→FCM→PCR→FISH→Gバンドの順で結果が返ってくるので、治療の急ぎ具合で、その時に必要なところまでの診断を決める。

2015-02-03 00:55:03
枇杷 @loquat_priest

例えば形態をみてAMLだと思えば、POXの染まりとFCMまでをみて、APLかどうかを慎重に除外した上で、AMLとして治療を始める(一応、M4とかM2とかも形態診断するけど)。標準治療の寛解導入は共通なのでそれで足りるし、地固め以降であとの結果を間違えなければいい。

2015-02-03 00:57:23
枇杷 @loquat_priest

例えばリンパ腫ぽくてSVC症候群で大至急の場合、とにかく生検をして、出せるだけの検査を出して、病理にはリンパ腫かどうかだけ大至急!と頼む。ステロイドだけ先行しておき、CD20+でBリンパ腫ですよと言われれば、CHOPを始められる。後追いでおもむろにリツキサン入れればいい。

2015-02-03 01:00:56
枇杷 @loquat_priest

あーそうそう、白血病細胞の形態診断ね、90年代に血液病理の専門家が集まって検討したら、M3(APL)はさすがに90%以上一致したけど、M4,5とかは40-50%の一致率だったらしくて、専門家でもそんなもんかと思ってればいいレベルだそうです。

2015-02-03 01:07:55