- polianthes_
- 509
- 0
- 0
- 0
レテ@備前国
@polianthes_
「サム、ちょっと手出せ」「何?」「いいから」ん、と顎をしゃくってディーンが催促する。仕方なく手を出すと手首を掴まれ、指を開かれた。特に何か持ってたわけでもない。酔っ払ってるのかと顔を覗き込むと、彼が時折見かける子供に向ける何かを懐かしむ様な優しい顔をしていた。「…ディーン?」
2015-02-06 20:50:14
レテ@備前国
@polianthes_
「お前は覚えちゃいねぇだろうけど、昔俺達の家に住んでいた頃お前の手をこうやって開いてみた事があったんだ」「僕が赤ちゃんだった頃の時の事?」「そ。いつも握ってたから宝物を握ってるのかと思ってさ」そこまで小さい頃の思い出話は初めてだった。「宝物…あった?」「いいや、当然何もなかった」
2015-02-06 20:52:52
レテ@備前国
@polianthes_
僕の手を片手にディーンが酒を飲む。調べ物の途中で掴まれたままだと困るんだけど話の続きも気になった。「それで?」「そんだけ。宝物は無かったからがっかりした。でもその後お前が俺の手を強く握ったんだ」ディーンが僕の手を離し、ぽんぽんと僕の頭を撫でた。「その時からお前は俺の宝物だよ」
2015-02-06 20:53:33
レテ@備前国
@polianthes_
宝物だと言われて、胸の辺りが暖かくなった。きつく握り締めて掌に傷がついた拳も開く事が出来た。緩く伸ばした指先、窪ませた掌。この上をディーンの指がゆっくり撫でていったのだ。「大丈夫。諦めない…」もう一度握って拳を作る。今度は耐える為じゃない。大事なものを掴む為にに強く、握るのだ。
2015-02-07 01:45:57