クリスマス

かおり @orange_shake_

【クリスマス・1】 クリスマスの日。 この前の、あのイルミネーションの前で待ち合わせをした。 『え…どしたん、そのかっこ。』 「変？」 『いや…めっちゃ可愛い。』 事情が全て筒抜けだったという横山に推されるがままに、数年ぶりのワンピース。

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【クリスマス・2】 スカート自体が久しぶりで、タイツを履いているのにそわそわする。 これは…予定変更やな。』 しばらく下を向いて黙っていた安田が、パッと私の顔を見るとそのまま肩を引き寄せて…キスされた。 『俺以外に可愛いとこ見せんなって言ったやん。』

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【クリスマス・3】 そう言って口を尖らせると、ぎゅっと私の手を握った。 『行こ。』 「え、どこに」 『俺ん家』 …え。 「えぇぇぇぇぇ︎！！」 『いや、何もせぇへんて！落ちつけ！』 出会い頭にキスする男の『何もせぇへん』なんて、信用できるか！

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【クリスマス・4】 『○○が悪いねんで。そんな可愛いかっこで、他の男がおるとこ歩かせられへん。』 「………」 ねぇ横山、もしかしてわざとこうなるように仕向けた？ タイミング良く鳴った携帯のメール画面には、"ガンバレよ♡"の文字。 絶交や。あいつもう絶交や。

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【クリスマス・5】 ちょっと不機嫌な安田に手を引かれて、近くに停めてた車の助手席に乗せられる。 運転席に座ると、またチュッとキスして無言で車を走らせた。 なんか、調子狂っちゃう。 この前まで可愛い弟みたいな存在だったのに、ふっきれたみたいに急に男っぽさ出してくるんだもん。

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【クリスマス・6】 カラフルだった私服も、今日は黒っぽい色でまとまってて、悔しいけど…かっこいい。 ゲイって疑ったの、根に持ってるのかな。 マンションに着くと助手席のドアを開けてくれて、また手を繋いで一緒にエレベーターに乗る。 その間、言葉を交わすことはなくて。 気まずい…

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【クリスマス・7】 『どうぞ』 部屋のドアを開けて、そっと背中を押されるがままに中に入る。 あったかくて明るい部屋には、 「え…」 『えへっ♡ぜーんぶ、作戦通り！』 いつもみたいにキラキラ笑う安田と、クリスマスツリーと、カラフルに飾られた部屋。

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【クリスマス・8】 『最初っからお家パーティーにする予定やってん。急やったから、ごはん食べれるとこもなかなか予約できへんくってな？』 どうぞどうぞ♡と椅子を引いてくれて、座らされる。 『クリスマスやけど、鍋パーティー！』 具材も鍋も、ちゃんと準備してある。

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【クリスマス・9】 『あ、好きなやつもちゃんと用意してるで♡』 私の好きな銘柄の日本酒。 「うわ、すごい…！」 『やーっと笑った♡』 ニコニコしてる安田。 『こんだけ攻めといて言うのもおかしいけど、気にせんくてええから。普通に、いつもの安田やと思って楽しんで♡』

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【クリスマス・10】 いつの間にかグラスに注がれたシャンパン。 「鍋にシャンパン？」 『ええやん何でも♡ほら、メリークリスマース！』 軽い音と共に、グラスがぶつかった。

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【クリスマス・11】 『まだ食べる？』 「んー、安田は？」 『俺まだいけるけど、ケーキあるしなぁ。』 「ケーキまであるの？」 『当たり前やん！クリスマスやでぇ？♡』 鍋はほとんど安田が作ってくれて、 何かさせてって言うと『じゃあ、あーん♡』って甘えられて。

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【クリスマス・12】 いつの間にか変な緊張も解けて、楽しくなってた。 『ふぅ、お腹いっぱいになりすぎてもーたな。』 結局、2人とは思えないほどの量を食べて、飲んで。 「後片付け、やるよ。」 『ええって。結構酔うてるやろ？俺やっとくから、ベランダで風にでも当たっとって。』

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【クリスマス・13】 『あ、冷えすぎんようにな』 そう言われて、お言葉に甘えてベランダに出る。 そういえば、ここで流れ星見たって言ってたっけ。 空を見上げると、確かに星がよく見える。ホワイトクリスマスなんかより、こっちの方がずっといいなぁ…

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【クリスマス・14】 吐く息は白いけど、酔った頭に冷たい空気が気持ちいい。 …よし。 ここに来る前から決めていたこと。 気合いを入れて、部屋に戻ろうとすると振り返る前に後ろから抱きしめられた。 『寒ない？』 「び…っくりしたぁ。いつの間に出てきてたの。」

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【クリスマス・15】 『今やで？ほら、あったかくしとかんと。』 もこもこのパーカーと、大きめのマフラーを私に着せてもう一度後ろから抱きしめる。 「安田、寒くないの？」 『寒いでー？やからあっためてもらってんの♡』 「中入る？」 『んー、もうちょっとこのまま。』

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【クリスマス・16】 2人で空を見上げる。 『見えへんかなー』 「流れ星？」 『んや、サンタクロース。』 「安田それ本気で言ってる？」 『冗談やんかぁ、(笑)』 くふふ、って笑う。息が髪に触れてくすぐったい。 「ここで、流れ星見たんだよね？」 『せやで。』

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【クリスマス・17】 「何、お願いしたの？」 この前は、お願い事なんて出来なかったって言ってた。 『…○○の側におりたい。ずっと、恋人として。』 今日は、はぐらかすことなく彼の真っ直ぐな気持ちを。 「…私も見たいな、流れ星」 『今日見えるかなぁ…何、お願いしたいん？』

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【クリスマス・18】 「内緒。」 『え〜！俺には言わしておいて⁉︎』 「へへへっ」 冷たい風が少し吹いて、背中の温もりに体を預けた。 流れ星になんて、頼っちゃダメだよね。 「ねぇ章大」 『ん〜？ …ん？あれっ、ええええっ‼︎?』 「びっくりしすぎ。(笑)」

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【クリスマス・19】 『え、だって今、しょーたって…ええ？』 「好きだよ。」 本当は、気付いてた。 ずっと前から、貴方の真っ直ぐな気持ちに。 でも、あまりにその思いが綺麗で、私には眩しすぎて。 だから、気づかないふりしてた。

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【クリスマス・20】 ずっと感じてた貴方の想いと、あの日から止まらない、自分の気持ちに。 すると、くるっと体の向きを変えられて彼と目が合う。 『それ、ほんま…？』 「うん、ほんま。」 今度は前から抱きしめられて、さっきより大きく聞こえる章大の心臓の音。

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【クリスマス・21】 『○○、好きやで。』 「うん」 『めっちゃ好き。めーっちゃ、大好き。』 「うん」 『愛しとるよ。世界で一番、大事やねん。』 「うん。私も。」 見つめあって、初めて私からしたキス。 『うわぁ…幸せすぎてどうにかなってまいそう。』

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【クリスマス・22】 「…あ。」 『ん？』 「流れ星。」 『えっ嘘！どこ！』 「もう見えるわけないじゃん。すぐ消えちゃうんだから」 『嘘ぉ〜…見たかったなぁ。でもまぁ、ええか。』 おでこ同士をくっつけて。 『1番欲しいもん、もらったから♡』

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【クリスマス・23】 『今年はサンタクロースも、もうえぇわ。』 2人で、笑い合った。 ＊ 『…あ、せや。』 部屋に入って、冷えた体をあっためていると。 『じゃーん♡そろそろ、入るんちゃう？』 冷蔵庫から出してきたケーキの箱。 「わ、すごい。おいしそ…」

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【クリスマス・24】 中には、いちごがたくさん乗ったケーキ。 メリークリスマスと書かれたチョコプレート、よく見ると。 「章大、これ…」 『あ、気付いてもーた？♡』 メリークリスマスじゃなくて、 「メーリクリススス…？」 やけに乱れた文字。 見覚えのある文字。

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【クリスマス・25】 「あいつ…！」 『よこちょからのクリスマスプレゼントやで♡』 「ちょっと、あいつ呼んで。今ここに。今回の件にどれだけ絡んでんの。」 『割とぜーんぶ、よこちょプロデュースやで？』 「最悪…！」 夢みたいなクリスマスが、全部あいつに操られてたなんて…！