名探偵と弟子さん

すわぞ @suwazo

弟子「まあ。その少年探偵団がきっかけでおじさまは探偵になりましたの？」 名探偵「ある意味ではそうかもしれない」 弟子「少年探偵団で何か事件を解決したりしました？」 名探偵「いいや。私はその少年探偵団に入れてもらえなかったんだ。遠くから見てただけ」

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#twnovel （1）屋敷に不思議なお爺さんと綺麗なお姉さんがやってきた。お爺さんは『めいたんてい』なのだそうだ。お姉さんは暫く私と一緒にいて『ごえい』をしてくれるらしい。嬉しかった。こんな素敵なお姉さんが。大きくなったらお姉さんみたいになりたい。私が言うとお姉さんは微笑む。

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#twnovel （2）痴呆の始まった大奥様の命を狙う者がいる。長年仕えてきた執事である私は名探偵を雇った。「聞いて！ お姉さまはめいたんていさんのでしなのですって」大奥様が楽しそうに語る。「私もでしになりたい！」「それはようございますね」名探偵の弟子の少女は優しく車椅子を押す。

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名探偵「待たせたね、済まない。手術は？」 弟子「まだまだかかりそうです。助かるかどうかは五分五分と。……犯人は？」 名探偵「警察に引き渡してきた」 弟子「おじさま。手術室の中の……この人が死んだら、あの人は殺人犯になりますのね？」 名探偵「助かれば少なくとも殺人未遂犯で済む」

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弟子「でもあの人は殺すつもりで刺したのですわ」 名探偵「そうだな」 弟子「どんな罰を受けてでも殺したかったのですわ。私にも、奴は殺されても仕方ないような人物としか思えない」 名探偵「そうだな」 弟子「おじさま。私よくわかりませんの。手術が成功して奴が助かった方がいのか、それとも」

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「逆ですわ」名探偵の弟子が呟く。「彼女は養父から虐待されており、その憎しみで養父を殺し、その罪の意識で自殺した。……この順番を逆に考えてみてください」 「自殺してから殺すのは無理が」 「刑事さん、そうではないのです。彼女は犯人ではありません。殺人の切欠にはなったかもしれませんが」

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「彼女が自殺したからこそ、養父である社長が殺されたともいえます。今なら彼女を犯人に仕立てあげられると。そしてそのわかりやすい理由として、社長が義娘を虐待していたという物語が急遽作られた。『虐待』についてはっきり証言したのは一人。彼女の義兄、社長の息子だけです」

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「彼は義妹の自殺した遺体を発見したその足で、父を殺しに行ったのです」名探偵の弟子は言う。「彼女は養父の死には何の関係もありません。虐待などもなかった。彼女はただ自殺しただけです。一人で」

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弟子「おじさま。犯人を捕らえるのを一晩だけ待って頂けないかしら」 名探偵「先生と呼びなさい。君も犯人に気づいたんだね。一晩とは？」 弟子「それだけあればあの子は一番殺したい人を殺せますもの」 名探偵「君はいつも犯人に感情移入しすぎるよ」 弟子「復讐者にだけですわ」 #名探偵と弟子

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刑事「お弟子さんにお土産のケーキ買ってきたんですけど……微妙な顔されました」 名探偵「あの子、ケーキに仕込まれた毒で死にかけたことあるから」 刑事「はぁ？ あ、でも、先月の誕生日に食べたケーキが美味しかったって話を嬉しそうに」 名探偵「それ僕が手作りしたんだよね」 #名探偵と弟子