胡蝶巡りし希いの淵 二日目の夢

集いの時。移ろいの時。
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悪魔《シンセイ》 @shinsay_bridge

いつの間にカーペットで眠りこけていたのか、突如、例の赤黒い螺旋を通過し、白い空間に尻からドスンと落ちる。ベッドから転げるより痛いであろう、最悪の目覚め。 「ほがっ」 妙な声を上げ、とりあえず尻をさすりながら立ち上がる。本人の意思に関係なく呼ばれる、こともあるのだろうか。

2015-02-20 22:15:37
悪魔《トリトマ》 @DemonKniphofia

――夢の始まりは、今日も白い。 ただ立ち尽くす私は、昨夜とは違って、ぼんやりとただ、そこにあるだけ。鮮やかな朱赤も、華やかなキモノも、白の中へ確かな彩りを落としているというのに、存在感というものを欠いている。

2015-02-20 22:15:59
人間《セレナ》 @selenite_bride

「う……こ、ここは……」 昨晩のネグリジェ姿とは打って変わって、カッチリとした神聖なるドレスコートに身を包み、左手に契約書、右手にルーペを携えたセレナは、瞼を開き、周囲を見渡す。 「また、夢の中……でしょうか?」 私はいつの間に寝てしまったのか?

2015-02-20 22:48:20
悪魔《アルセム》 @fid_abs

-  ───しゅるり、  各々の姿の訪れを 濁りた黒の目に映しては、 無垢にして無の地を這いし銀蛇が 緩や 鎌首を擡げたり。

2015-02-20 23:12:46
人間《リリディアナ》 @LiliDiana_06

ぼんやりと、とろりと淵を揺らめかせて瞼を開ける。 「……寝て、しまったのね」 見た覚えのある場所に、夢なのだと認識し。 ちらりほらりと集まる姿に視線を向ける。――途中、銀の絲も視界に入れて。

2015-02-21 00:28:17
人間《ディアドラ》 @actSkbz

──嗚呼、また『この』感覚だ。 「……ここでの挨拶は、一体何が適切なのかしらね。  御機嫌ようとでも言っておけばいいかしら」 ふん、と鼻を鳴らして辺りを見回す。 ──手元、握り締めたハンカチは確かにそこに在る。 姿がまだ見えぬ事に、ちいさく、息を漏らした。

2015-02-21 03:41:51
悪魔《トリトマ》 @DemonKniphofia

「誰に挨拶をしたいの?」 さら、と袖を振って、ゆったりとした動作で振り返る。 「おはよう、ディアドラ」 黄金色にははしゃいだように。 「おはよう、リリディアナ」 珊瑚朱色へは穏やかに。 「おはよう、神の子」 白雪色には気のない声で。 「現での語らいで、あなたたちは何を得たかしら」

2015-02-21 14:49:28
悪魔《トリトマ》 @DemonKniphofia

目にも鮮やかな髪の朱赤と袖裾の花模様は、今日はそこに佇むばかり。靄の中に焚かれた篝火のように、ぼんやりとして。

2015-02-21 14:49:32
人間《セレナ》 @selenite_bride

「あっ……おはよう?ございます、トリトマさん」 声をかけられれば、そちらへ振り向き、返事を返す。寝入る直前の目眩や頭痛は嘘のように消えていた。なるほど、やっぱりこれは、夢なのだ。 ふと……赤く燃える髪の彼女が、自分の名だけ呼んでくれなかったことに、気がついて。

2015-02-21 14:59:49
人間《セレナ》 @selenite_bride

昨夜の彼女の言葉を思い出せば、ハッとして、一歩遠のいて。 「あっ……そうだ、私、あんまりトリトマさんに近づいちゃいけないんでした!ごめんなさい!」 慌てた様子で言ってから、 「あと、私、神の子ではないですよ。お嫁さん……いえ、正確に言えば、お食事です」 そう、付け加える。

2015-02-21 14:59:50
悪魔《トリトマ》 @DemonKniphofia

「……そんな決まりがあったかしら」 うんざりとしたような重い声色で言って、細めた目を向ける。 「私があなたを疎ましく思って遠ざけることは私の勝手、あなたがどう思ってどう振る舞うかはあなたの勝手。だから謝罪の言葉は意味を成さないし、私は受け取らないわ」 そうして、顔も背けて。

2015-02-21 16:33:31
悪魔《トリトマ》 @DemonKniphofia

「同じことよ。子でも妻でも餌でも、あなたがその末路を受け容れている限り、私はあなたを見ない」 こつり、靴音が鳴り始める。私はゆっくりと、誰に近付くでもなく、大きな輪を描くように歩き出す。 「私は、私にとって、叶える価値のある願いしか、叶えない。まして、これが最後だというのに――」

2015-02-21 16:33:36
悪魔《トリトマ》 @DemonKniphofia

こつり、こつり、一定のリズムで、靴音が鳴る。 「――御免だわ。無に帰す刹那の幸せなんて。愚かしいばかりの希みなんて」

2015-02-21 16:33:40
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「誰に、って」 やや困惑した様子ながら、そちらを見れば柔く首を傾けて。 「あんたや、そこの白いのやら、リリディアナによ」 腕を組む。つんとした表情のまま、言葉を吐く。 「人と──ああいや、トリトマは悪魔だけど。  知ってる誰かしらと逢ったら、挨拶はするもんでしょ」

2015-02-21 16:55:10
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「幾ら外に出ないからって、それくらいはわかるわよ。ジョーシキでしょ」 ふん、と鼻を鳴らして、揺れる朱赤を見る。 ──そうして、落ち着かない様子でまた辺りを一瞥すれば、息を吐く。 前の夜と違いがあるとすれば、手元のハンカチ一枚。 「食事? 死にに行くってコト? わざわざ?」

2015-02-21 17:00:39
人間《ディアドラ》 @actSkbz

白雪の言葉にはそう、明け透けに、顰め面を隠そうともせず言い放つ。 「うちの村は大概おかしいと思ってたけど、あんたんとこのがよっぽどね」 知らないからこそ、の物言いか。 腕を組んだまま、海色をそちらに向けてそう言った。

2015-02-21 17:00:41
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

闇が泡のように沸き立ち、褐色の青年は姿を現す。ぼやけた輪郭は収束し、こつり、と靴が鳴った。デイアドラの背後に立ち、 「おはよう、ディアドラ。私の黄金」 ふっと息を吹きかける。

2015-02-21 17:21:27
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

……彼女たちには彼女たちなりの選択がある。それは意思の発露であり、魂の輝きである。しかし彼女ら心情にはいちぶ頷けるものがあった。彼らは悪魔である……代償のみならず、願いによっても愉悦を得たいもの。

2015-02-21 17:22:34
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

……刹那的、といえば。人の生涯そのものが、褐色の青年にとってそうであるのだが。 「見たところ契約寸前といった様子。彼の手腕に期待しようではありませんか」

2015-02-21 17:23:18
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

すっかり生彩を欠いたトリトマに向け、 「そろそろか」 心なしか、心配の響きを含ませる。 切なる願いのもうひとりが気になったのか。褐色の男は、銀色の悪魔に視線を送る。

2015-02-21 17:24:45
悪魔《トリトマ》 @DemonKniphofia

「ああ、そうね。人間は、そうね」 悪魔は再会を祝わない。そして多くの者は、別れも惜しまない。故に挨拶の言葉ひとつすら、無意味ではありえない。だから、私は彼女の答えに落胆しながらも喜び、笑みを浮かべる。 「――おはよう、ディアドラ」 繰り返す声は寂しげに。こつりこつりと靴を鳴らす。

2015-02-21 18:28:20
悪魔《トリトマ》 @DemonKniphofia

時計の針のようにゆっくりと、同じ速さで進み続ける。 時計の針のようにゆっくりと、止まらずに円をなぞる。

2015-02-21 18:28:24
悪魔《トリトマ》 @DemonKniphofia

黒い姿が金色の背後に現れる気配を察すれば、目を伏して顔を背ける。私の、などと嘯く様子に、ため息をひとつだけ。 「そう言うあなたたちも」 心の形を確かめずとも、見えるものは見えてしまう。探すように巡らされていた視線も、ハンカチを握り締める手も。 「これで何度目かしらね、ファルドル」

2015-02-21 18:30:41
人間《オド》 @fallin_odo

「ここは白いしかないのか?」 昨日と同じく、顰めっ面の老人は仕事の最中のような格好でそこに立っていた。 「おはよう諸君」 愛想もなく告げる。 「……夢の中での挨拶なのにおはよう、は違和感があるな」 眉間に皺を寄せる。

2015-02-21 18:44:22
人間《リリディアナ》 @LiliDiana_06

「あら、おはよう」 朱炎の悪魔に穏やかに微笑み返し。 「何を……そうね、願いが叶う可能性。奪われない未来の道かしら」 言葉通りの明るいものでは決して無いと知っていながら、浮かべた微笑みは変わらず。

2015-02-21 19:49:16
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